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経営者をリーダーにする係

 経営者のいうことを、社員の多くは、「なんでそんなことを言い出すのだろう」「どうしてそんなにどうでもいいようなことにイライラしているんだろう」と思っている。要は「理解できない(する必要もない)他人」なのである。

規模の大小を問わず、経営者は孤独だ。自分でも前職までに「経営者」を経験してみて、それを痛感した。

 なぜ、そんなことになるかと言うと、経営者と社員では立っている場所が違い、見ている風景が違い、目指している場所が違うからである。よく、「ビジョンと戦略が浸透していると社員は経営者に協力的でありそして、自主的に考え動く」という事が「経営の本」には書いてある。ビジョンと戦略を説明することを無駄と言っているのではないが、これが通用するのは、そういうことに関心のあるごく一部の社員だけで、大多数の、もう何年も、十何年も、そういうことに触れてこなかった社員には、そんなこともほとんど無駄である。

 チェンジマネジメントを掲げる我々が直面する、経営者から負託される「変えなければならない」組織とは、大抵、そういう錆び付いて動かない組織である。

 どうやって変えるのか?には、もちろん、「ビジョンと戦略を具体的に立てて説明する」という事もはじめの方でやるのだが、それだけでは何も変わらない。それではどうやるのか?これは、弊社と一緒に仕事をしたことのない人には今まであまり言ってこなかったのだが、一つの方法論がある。

それは、こんなことである。

  • 目立つキーワードを含む、現在からはかなり遠くて誰も現実的とは思っていない目標を立てて、それをことあるごと経営者だけでなく、我々も社内外に喧伝する。たとえば、今、4億円の事業を「3年後に10億にする」とか、今、年1,2回開催で集客に汲々としているイベントを、「そこに拠点を作って、年間100回常時開催する」と言った具合である。そういう「目立ったこと」自体、さび付いた組織では、打たれる出る杭であるし、わきまえないことであるのだが、それを大ぴらに破って見せるのである。
  • そのうえで、それに向けた実際の作業を自分でやる。営業も、制作も、作業も全部社員を置いてけぼりにしてでも(協力してくれればそれに越したことはないが)全速力でやる。
  • やって、上手くいったことも、そして、うまくいかなかったことすらも大騒ぎする。時には、いらんジョークを交えたりしながら、一人で騒ぎ続け、経営者にも同じように盛り上がってもらう。その騒ぐ様子を幹部が見える状況にする。

一体、なにをやっているかお分かりだろうか?経営者が笛を吹いても踊り子であるはずの社員が踊らない状況に、弊社が踊って見せているのである。そして、経営者にも踊ってくれと言っている。

その過程では多くの失敗もある。コンサルタントも失敗することをあらかじめ認めている。ただ、「大きな失敗」はしない。そして、その失敗もネタに踊る。そう、「同じアホなら、おどらにゃ損損」である。そのうえで、社員の中でちらちらとこっちを見て関心がありそうな人、あるいは社外で関心がありそうな人に、「一緒に踊ろう」というのである。

社長一人が一生懸命言っていても、誰も参加しない状態から、二人目が現れると、「やってもいいんだ」ということがわかり、同時に、「経営者にくみしない」という同調圧力、静かなネグレクトを打ち破ることができるのである。なぜならば、自分たちがしなくても、それを私たちがやって、「成果が出た」とはやし立て、そして社外からでも人を連れて来てやるのだから、その共同抵抗戦線はもう意味をなくしているからである。

そして、経営者1人の時より、2人になったとき、あるいは私たちがさらに仲間を見つけてきて3人、4人になって空元気で盛り上がると、そこへ飛び込む心理的コストは格段に下がっていく。そうなって初めて、若い人たちがその輪に自分たちも参加してくれるようになるのである。「人を巻き込む力」が、リーダーに欠かせないと言われるが、お題目だけでは人は巻き込めない。実際に動かしてみて、失敗しても別にペナルティはないし、やれば何かしら成果は出そうだ、という空気にならないと巻き込めない。

 まれに、こうした部分まで含めてやれてしまう「起業家」というのもいるが、多くのケースでは、特に事業と組織をを前社長から承継したようなケースでは、経営者自身にここまで求めることはできない。かといって、言って聞かせても何も変わらない。経営者をリーダーたらしめ、そして変革を起こすのは、実はそういう、「経営者が一人でやっていることに2番目に参加して、楽しそうに大騒ぎする人」である。

 きぼうパートナーとは、そういう役割を果たすものである。

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