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会社で本当はいらなかった物たち

「物」の話ですよ、「者」ではありませんから。

コロナ禍の中での制限のある操業が始まったのは2月下旬からでしたので、はや「新常態」も半年ほどとなりました。弊社のお付き合い先でこれまでリモートワークなんて考えてもいなかった古き良き会社でも、今では2,3割が交代でリモートワークをする状況になっており、そのうえ売り上げが減っているというわけでもない(これから顧客サイドの方針変更の影響が表面化するという可能性には依然注視が必要ですが)中で、「あの自分たちはできないという思い込みは何だったんだろう」と当事者たちが思っている様子に、実は時間の流れがこの半年は歪んでいて10年ぐらいたってしまったのではないだろうか?と思ったりもします。

もちろん、そんな中でもEC事業の梱包発送業務は社内で実施する限りにおいては短期的には倉庫に出社せざるを得ませんし、世の中全体を見れば、医療や介護、製造など「その場で人が対応する」ことが必要になる業務もたくさんあります。「リモート」に変えられているのは、実は「一部の楽な事務作業」だけであり、「そもそもそれは人がやる必要があることなのか?自動化できるんじゃないのか?(営業はまだ人の要素は大きいですが)」ということの裏返しでもあるわけです。そんな視点でみていると、今までは当たり前に「必要」と思っていたものが「本当はいらなかったじゃないか!」というものがたくさん明らかになったと思うのです。そして、その事実は、結構利益率にインパクトするようなことが多くあります。

今日はそんな振り返りをまとめてみます。

①複合機・プリンタ

いります?弊社は小型複合機を廃止しました。(故障後、更新するのをやめた、というのが実情です。)リモート(ZOOM)の時には、事前に送っておいてみておいていただくか、その場で画面共有でよいですし、面会時も事前に送っておけば必要なら自分で印刷しておいてくれます。ただ、その影響で、「ページ区切りに配慮しておく」という古き良き慣習を失ってしまっているかもしれません。

この半年でプリンタを使用したのは、国立大学への請求書類(お役所なので)だけで、USBメモリにPDFファイルを入れて、コンビニに印刷に行きました。

②ハンコ

元からいらないと思っていた人が大半でしょうが、この半年、激しく世の中の矢面に立たされる場面がありました。これも結局使ったのは、上の「国立大学」と、大企業のグループ会社との契約書締結(その会社もクラウドサインが前提なのだそうですが、クラウドサインのためにすごく面倒な事前手続きがあるので、担当者が紙でやることを選んだんだそうで…大企業ホントダメですね。)、それにお客様での信用金庫の融資業務関連だけでした。

③通勤電車!と通勤手当

会社を辞めて起業する際、「このまま、60歳、65歳まで毎日往復2時間を混んだ電車の中で何をするでもなく無駄に過ごすんだろうか?」みたいなことを思ったものですが…これはただの思い込みでしたね。別に必須ではないし、朝全員一斉に乗る必要もない。それに伴って、実費を支給するという「通勤手当」もいらないですね。

ただ、お客様の役員、それに私も多少その傾向があるのですが、自宅の回線が貧弱でZOOMで土日の夜にご相談していると、音声が乱れることがあります。同じ「LINE]であっても、今必要なのは、電車のLINEから、インターネットの「LINE」になっているようです。

④郵便、書面で振込

上に関連して、郵便の扱いがリモートワークで不便でしょうがないので、紙で受け取っていた料金明細等をできる限りすべて、ネット明細に変えました。経理上の都合で、毎月手数料を払ってわざわざ紙にしていたものもあったのですが、覚悟を決めました。

社保等の支払いもペイジーやその他の方法でできるものはすべて変更しました。だいぶ紙の扱いは減っています。

上で出てきた捺印の必要な請求書(お役所)は結局郵送せざるを得ないのですが、それ以外の請求書類はすべてネットで提出でお願いして通させていただきました。入金されるまで処理が漏れていないか紙の時よりなぜかドキドキするのは、私が古いのかもしれません。今のところは大丈夫です。

⑤接待費

私は、「接待したって別に何も変わらない、そのお金分値引いた方が受注確率上がるだろう」、と15年ぐらい言い続けてきましたが、誰も聞く耳をもってくれませんでした。それは、「接待は仕事」といいつつ、「人のお金で自分もいい目にあえるので実は自分がやりたい」という人が上の方にいたからだと思っています。(経営者は別です。)

そして、飲食店のかなりの需要や、価格水準の設定は、こうした「人のお金で飲み食いするので、金銭感覚がない」ことによって成り立っていたわけです。それが、なんということでしょうか!政府の指導で、「大勢で飲み食いしながら話してはならない」と言われると、接待ができなくなり受注に大きな支障が…出たという話はどこでも聞きません。

「経営者同士が1対1で話す場」のようなものは実は何かが生まれる場であるし、そうでなくても「経営者が成長する場」でもあると思います。しかし、自分に決済権がなくて接待のために稟議書を欠かされるような立場の部長や課長が相互にお金を使うような接待費は実はずっと前からいらなかったのです。それは会社が生活の一部になっていて「会社にたかっていた」だけであり、会社としてはその分の費用を成果を出した人に成果給として回した方がよほどいいというのが結論でしょう。

飲食業界は経営者が集うようなお店はさほど影響をうけないでしょうが、そうではない法人需要をあてにしていた低~中価格帯のところは、方針の転換が必要になるでしょう。自分の財布で飲食するのはさほどのお金や頻度では払えないし、そもそも「家で家族と食べることが標準」にようやく日本人は立ち返れたわけですので。

⑥出張費

海外は強制的にほぼ0になりましたが、生産管理やトップ同士の提携交渉などはそのうち多少は復活するのでしょう。ルールやロジックの相違する中でのすり合わせ作業はZOOMや文字ベースではやや不安で実物、現場を見たいという気持ちはわかります。

国内出張も激減しており、弊社のお客様でも1~6月期の収支が思いのほか良かった原因の一つがこの出張費の抑制だったという会社があります。

会って話すことが無意味と言いたいわけではありませんが、「ZOOMで要件を整理して、意見の相違や方針を整理したうえで最後の詰めに行けばよい」、という正論を言ってしまい、渋々やってみると、実はZOOMでだいたい用事が済んで、出張しないでも済んでしまうことも多いというのが大方の状況のように見えます。

ZOOMでやりにくいのは、工場や倉庫などの大きな空間で行われる工程改善の企画や反映指導、店舗での雰囲気や接客対応の評価で、こうしたことは今後も残ると思いますが、「商談の出張」はだいぶ減っていくんでしょうね。1日かけて往復交通費かけて、それでZOOMでやるよりも期待値が10万円以上高まるかというと普段の課長以下がやっているビジネスの範疇では、そんなに差がないようにできる、ということがこの半年で示されてしまったように思います。

その費用を動画を作成することにあてて説明をわかりやすくしたり、広告にあてたり、インサイドセールスのチーム構築にあてたり、配信セミナーで見込みをとつくったりと「次の体制を作る」ことに充てる事例が増えてきています。

⑦出勤用の服と靴

これも明らかに需要が減っていますね。私も台襟のポロシャツやジャージ生地のシャツとユニクロの「感動パンツ」を多用しています。サラリーマン時代(2年前まで)は夏でも長袖Yシャツに上着着用でお客様に伺っていましたよ。何なら、透ける夏用素材のスーツは格好悪いと避けて、いい生地のスーツを夏も着ていたぐらいです。こうしたスタイルの変化は実はかなり前からネット系企業では始まっていたのですが、「リモートワーク」や「面会しての商談抑制」に、「換気」で急激に変化の速度が古い産業でも早くなっているような気がします。今、日中の山手線に乗ると仕事と思しき人でもめったにスーツ姿の人はいません。去年の夏、霞が関(音頭をとってクールビズを推進している)に何度か伺ったときには、ほぼ全員が上着なしノーネクタイで、「この人たち言われたことは徹底する人たちだな」と揶揄していたのですが、今年はそれが全産業で当たり前になっているようです。紳士服チェーンも長期的な需要減少への対応が必要そうです。


書き出していくとどんどん増えていきそうなので、このくらいにしておきましょう。でも、こんな感じで、「コロナのおかげ」で世の中、そして会社をめぐる状況は数年分の変化がまとまって進んだものがたくさんあります。でも、これって困ったことですか?若手を中心にかなりの社員が、「便利になって(面倒ごとがなくなって)よかった」「チャンスが増えた」と思っていると思います。そして、その本質は、「無駄な時間や作業が減った」(以前は無駄とは言えなかったし、気づいてもいなかった)ということです。

売上の減少がどこまで続くかが見えていませんが、実はこれからの数か月は、「本当はいらなかったもの」を捨てて、時間とお金の効率を上げる(生産性を上げる)、大きなチャンスなのです。

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