最近、1年ほどでもっとも成果が大きく上げやすく、かつ成功確率が高いのは電気代です。これは低圧も2016年4月より販売元を自由に選べるようになったことが大きく影響しています。ただし、この方法で下げられるのは、大きい場合でも10%程度であり、決して万能ではありません。
電気については話題が多いので、3回に分けてご紹介します。まず今回は、電気の分類と高圧分野での電気の販売会社の選び方についてご案内します。
【おたくの電気はどのタイプですか?】
まず、御社の電気代は電力会社から明細が届いていますか?それとも不動産会社やビルオーナーから届いていますか?もし、後者ならば、今回の記載はほとんど使えません。さらに言えば、次回の記載事項の照明、エアコンの制御についても改変余地があまり大きくないため、電気代の定型的節減は正直なかなか難しい、というのが実情です。
次に電力会社から明細が届いている場合、そこに種別というのが書いてあると思います。あるいは建物内にキュービクルという四角いタンスのような通常薄青色の鉄製の箱があるかどうか確認してください。明細に「低圧」「従量」などの文字があるか、先述のキュービクルがなければ、あなたの会社の電気は「低圧」です。これは2016年4月から販売が自由化されました。
明細に「高圧」や「業務用」などの文字があるか、敷地内にキュービクルがあれば、あなたの会社の電気は「高圧」です。これらは2005年までに自由化されました。この二つは現時点では少し性質が相違しますので、次にそれぞれについてご説明します。
なお、どちらかわからない、全国多数の拠点がある、混在しているなどのケースは最適化をここで説明するのは大変なので、今回は比較的シンプルなケースだけご説明しますので、個別にご相談ください。
【高圧の場合】
高圧の場合、まず明細に力率という項目があり、ここがほとんどの事業所では100%(同じ力率でも低圧の力率は90%が多い)のはずですが、これが100%でない場合は、これを100%にする対策が適当です。こうすると基本料が100%に近付いた分の%分程度下がります。このパターンは前述のキュービクルが古いケースが多いのですが、これを改修、または置換することで改善の可能性があります。買いかえる場合も中古機を使うなど費用を下げる方法もあります。
大半の方は力率は100%のはずです。その場合、費用を下げる方法は、単価を下げるか、使用量を減らすかです。後者は次回ご説明しますので、今回は単価を下げる方法をご説明します。
高圧の電気代は、ほとんどが基本料と従量料金からなり、基本料は、契約電力×基本料単価×0.85(力率100%だとここが0.85倍に割引され、力率85%だとここが1.0になり、割り引かれないのです。)で計算されます。
そのため、さらに分解すると、高圧電気の電気代を下げる方法は
① 契約電力を下げる
② 基本料単価を下げる
③ 従量単価を下げる
の3つです。
このうち、契約電力は、実は一年間のうち、最も多く電気を使った30分間の使用量で決まります。日本の多くの事業所(製造設備を除く)では夏の開店時間に一斉にエアコンのスイッチを入れ、照明をつけ、パソコンの電源を入れ、調理器具を動かすなどするとその時間がピークになります。そのため、数年前まではこの「ピークを下げる」ことが基本料を下げることに有効な方法とされ、そのための使用量の可視化や警報装置がかなりの高額で販売されていました。
今でもこの方法は有効ではありますが、4年ほど前からでしょうか?対策の主力は、②の基本料単価を下げる方法に移っています。この方法は、新電力を活用するに限ります。どれくらい下がるかは、今の契約プラン(製造業とその他の業種では同じ高圧でも実はプランが全然違うし、地域によってはだいぶ違うのです。)と使用パターンに依存するので一概には言えないのですが、私たちが手掛けた中でも、東京電力での単価1684.80円(業務用電力)が700円台になったケースや、高圧Aというタイプで1269円が500円台になったケースがあります。基本料が最大ではざっと半分になるイメージです。
実はこのような大きな下げ幅を頻繁に目にするようになったのは2015年頃からで、それ以前に新電力に替えられた方は、基本料が10%とか、従量料金が3%というような小幅な下げ幅にとどまっているケースが多くみられます。しかも、それらの会社の経営者の多くが「うちは安い」と信じておられるのです。当時は確かに安かったのですが、時代に応じて方法も競争状況も変わる、というのがこの連載の一つのテーマであり、これについても同様のことが言えます。
鍛造などの熱処理工程のない工場は実は大きく下がりやすい傾向にあります。逆に病院、ホテルなどは下がり幅が少ない傾向にあります。なぜそうなるかは「負荷率」という指標によるのですが、これはまた別の機会に譲りましょう。
最後に対策の③従量単価を下げる、ですが、ごくまれにプランが最適化されていない、というケースがあり、料金プランを変える(基本料と従量料金の構成割合を変える)と下がるケースが昔はあったのですが、最近ではほとんど見なくなりました。電力会社が既存顧客への情報提供を徹底したことが一つの背景です。新電力の多くは、基本料単価をさげ、従量料金単価は地域電力会社と同じ、というパターンが多いのですが、一部の新電力会社は基本料と従量料金の両方を下げます。
また、最近では東京電力など従来の地域電力会社も巻き返しの力を強めています。もっとも地域電力会社も大手だけ優遇して、中小には何も言ってこず、スズメの涙のような割引で3年契約を強いているようなケースも見かけています。
先述の1269円が500円台になったというケースですが、実は、この会社地域電力会社で54円の割引を受けて、1215円でした。それで3年契約で解約違約金が大きいという契約でしたが、電力会社に「特別な割引です。」と言われていたそうです。
【新電力は安全か】
2014年にある中堅新電力会社が破綻しました。その前後からその会社には悪いうわさが流れていました。その破綻を受けて、新電力は信用ならない、という雰囲気が一部にあったのも事実です。
ファクトベースでお話すると、まず品質面、具体的には供給安定性と電圧などの安定、故障の復旧という問題はどの電力販売会社でも同じです。正確にいうと電気を販売(発電)する会社と、電気を送電する会社は現在制度上分割されています。たとえば、東京電力管内では、前者は東京電力エナジーパートナー、後者は東京電力パワーグリッドです。現在は同一グループ会社ですが、2020年4月には完全に分離されます。
地域電力会社をご利用の方は電気の請求明細書に小さく「託送料相当額は〇〇円です。」と書いてあると思いますが、これは発電会社が「送電会社に払う送電料金」を意味していて、新電力含めすべての電力会社が同じ額を支払います。
電力の品質保持や復旧を担っているのは、発電会社ではなく、送電会社なのです。従いまして、よく言う例なのですが、新電力に切り替えても大きな発電所や変電所の故障があると電気は止まります。最近では練馬の大規模変電所で火災があり、東京の豊島区などでどの電力会社を使っているかは関係なく大規模な停電がありました。
逆に新電力会社が何か問題を起こしても、電気は届き続けます。経営破綻した場合は、予告期間中に別の会社に切り替えすることになります。が、そこそこの規模の会社を選んでおけば破綻する前にユーザーは事業買収などの形で継承されることが多いでしょう。あまり小さいところはどうかと思いますが、上位30社前後に入っているような会社ならば、どこを選んでもリスクは同じだと私たちは考えています。
以上、高圧についていろいろご説明してきましたが、一つご注意いただきたい事項があります。
低圧については、一般消費者が多くいることから手厚い保護策があるのですが、高圧については基本的には法人間の相対契約であり、契約期間が終わると値上げが通知される、ということが起こりえます。これは相手が東京電力であっても同じです。実際に2011年の東日本大震災のあと、法人向け高圧電力は原発停止に伴い、大規模な値上げが行われています。これが新電力普及の流れを強めたとも言えます。逆に最近では原発再稼働~値下げ~の流れがあることから、私は高圧領域では、2年以上の契約は基本的にお勧めしていません。
私たちは代理店でも取次店でもありませんので、こうしたことをお客様の側にたって情報を提供していきたいと思っています。