ブログ

「改革」嫌い

 10月はお客様対応で大変忙しくしているうちに、選挙が始まり、そしてろくろく情報も見ないうちに終わった。20時にニュースを見ると、私の予想は大きく外れたかと思ったが、外れたのはマスコミの出口調査の方だった。ここ数回の状況を見ると、国民世論と、マスコミの「こうあってほしい論」の乖離が徐々に大きくなっていることを感じる。
 もう30年近く前の話になる。日本新党ブームの少し前、「新自由クラブ」が勢いを失った頃の話なのだが、とある席で自民党幹事長経験者がこういった。「国民が求めているのは、非自民ではない。自民よりよく見える自民である」その時はそういうものかと思っていた。

 それから月日は流れて、私自身、「チェンジマネージャー」を標ぼうし経営を支援する立場となって、選挙を見ていると感じることがある。それは、「誰も大改革など望んでいない」ということである。これは、既得権益者、と言われる高齢者だけではない。女性も、若者もみんなその傾向が強いのである。それを踏まえずに、ある一部の事象の一時的感想をさも事実であるかのように映像で流し強調するから、自分たちで事実を見誤るのである。

 これは会社でも全く同じである。多くの社員は、大きくなり、業績が良くなり賞与が増え、長期的に安定してくれればいいと思っている。当たり前である。しかし、そのために評価制度や人事制度が変わり、自分の中長期的展望が不透明になり、日々成果に追われて暮らさなければならないような変革には明確に反対である。最近の若者は優しくてそして、他人に配慮が昔よりもずっと行き届いているので、他人がそういう目に合うことも自分のことのように心を痛めるので、自分が優位であっても反対である。みな、ハイリスクハイリターンよりは、身の丈に合った作業で給与もそこそこを望んでいる。成長しない時代が一世代続き、昔の競争的な環境には否定的になっている。
 その中では、マネジメントスタイルも変革を迫られる。昔の管理者がよくつかった人身御供的な恐怖政治、対立軸を明確化する組織強化はむしろ逆効果になっているし、生産性管理にも否定的である。
 それを前提とすると、「変革」はゆっくりとしたものにならざるを得ない。そして、外部から新しいものを持ってくる、というスタイルのチェンジではなく、今いる人が学んでできるようになれる範囲の小幅な「改善」を積み重ねる、ということを志向することになる。

 この経営方針が正となるかどうかは、また別の問題である。昔はそのような会社が大部分だったので、これでも他より少しだけ早く改善できれば、事業ドメインの選択さえ間違えなければ十分生き残ることができた。しかし、今はそこそこの割合の経営者が、成果主義的人事制度やM&Aや外部人材の注入などを熱心に行い、「あくせく型」を強要している。このあくせく型が前述の「堅実型」に比べて有為な差でハイパフォーマンスか?と言うと、急成長する企業はこのタイプが多いが、ダメになる会社もおそらく堅実型よりも多く、平均値をとると、優位な差があるかどうかは正直わからない。ただし、市場で目立ったパフォーマンスを見せる会社はだいたい、この「あくせく型」であり、そこが資本と人材を集めやすい状況が実現する傾向にある。
 ただ、そのような競合の状況をすぐそばに見ていても、社内の状況はのんびりとしていて、「日々の仕事を頑張っていれば経営陣が何とかしてくれる」とおもっているかのようである。

 いや、それでも何とかするのが経営陣であるのは間違っていない。経営で最も大事なことは、「戦う場所を選ぶこと」であり、「戦い方」ではないことが多いからである。ただし、その場合の「戦う場所を変えること」はかなりの軋轢があることが多く、明るい未来を社員に見せる力が必要となる。しかし、社員の方もバカではないので、絵空事が何度も続くともう誰も聞く耳を持たなくなる。そしてそういう口だけ組織の中で不満を持つ人は、内情は意外に大変だったりするのだが、着実に成果が上がっているように外部からは見える組織の方を選好するようになる。

 同じことが政治でも起きるだろう、と思っていたが、結果はその通りだった。

 もっとも、経営は仕組み上は株をベースとした独裁であるので、それを使うと、とりあえずは強い変革はできなくはない。私はそれでも力強く組織を改革へ牽引することをこれからも仕事としていくつもりなのだが、この方法は、どの会社でも決して長続きしない(つまり、同じ会社から何年も仕事をいただき続けることはなかなか難しい)。短期集中型にならざるを得ない。政治は、一人一票の平等性であるのでなおさら難しい。

 「改革路線」など社員の誰も望んでいないのである。ましてや一度失敗したら誰も信用してくれない。できれば継続的なゆっくりとした改善で何とかしてくれ、と思っている。そのことを経営者は、そして為政者も、マスコミも忘れてしまうと大衆から乖離して孤立してしまう。

 いっそ「着実な改善を時間をかけて積み重ねます」と言った方が好感は持たれる。ただ、それで生き残れるかどうかはまた別の問題である。


関連記事

  1. 「過去」の呪縛 その正体
  2. 2018スポーツ不祥事と日本企業
  3. ジョブ型雇用を準備する⑤給与と資格
  4. 世界視点で戦う
  5. きぼうの春
  6. 令和のビジネス青春群像①
  7. どこへ向かうのか~チェンジマネジメント③
  8. 部長のマインドセット -部長を創る②-
PAGE TOP