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価格、あれやこれや…

 経営に関わる仕事をしていて、一番迷いが多いのは、「価格の決め方」でしょう。その値段が正解かどうかは、長い時間が経たないとわかりません。
 最近、見かけた「価格」をめぐるあれこれを少しご紹介します。

①輸入品の仕入れ価格は上がるから…やっておくべきこと

 中国では脱コロナの景気回復を受けて鋼材価格が昨秋以降急騰しており、半年でざっと倍になっています。また、コンテナ運賃も、航路によりますが、1年前の1.5倍程度に上昇しており、しかも日程が不安定で、各社の輸入担当は対応に追われています。そのため、今、日本で売られている日常の製品の多くは中国製ですが、その価格改定があちこちで相次いでいます。

 そもそも、日本以外の国では、年率で3~5%ぐらい、収入もアップするが物価もアップする、というのが通常であり、何も変わらないという日本のこの30年が例外です。
 つまり、来年も、再来年も少しずつ原価は上がります。3年たてば海外からの購買価格は10%上がります。ざっと計算すると輸入品で原価率が50%だったとしたら、3年で利益は1割減ります。原価率が70%ならば、約25%減ります。時々、「量を増やせば交渉力が増す」と勘違いしている門外漢がいますが、量が2,30倍になれば多少そういう要素はあると思いますが、1.5倍になっても、相手の工場内でのシェアは微増にしかなりませんので何も変わりません。そもそも少量しか頼まないのでやたらと要求事項の多い日本企業の注文は世界中で嫌がられていますし、アメリカの某大手スーパーからの2桁多い注文が入ると、日本企業の注文なんてペナルティ払ってでもキャンセルされてそっちが優先されています。それが今の日本の置かれた状況です。

 ならば、国内での販売価格を上げるしかありませんよね?でも「元請けが受け入れてくれない」とか、「売れなくなるのが心配」と現場は言います。そしてそれを受け入れると、給与を減らし、借入を増やし、経営者の報酬は未払いになって…と数年後にはじり貧になります。そういう会社も時々見かけます。結局、その路線は継続できないですし、その窮地を救ってくれる白馬の騎士はあらわれないのです。

 「安いから売れる」輸入商品はこうしていつかは売れなくなります。売れているうちに、あと100円、500円高くても売れるように、見せ方や梱包、商品自体を変えておくか、顧客を変える必要があるということであり、そうして「モデルチェンジ」の度に1割値上げし、同時に「安くなければ買わない」顧客は徐々に減らしていくしかありません。

 

②価格で顧客を選別する

 これは、私が見た、とある士業さんのお話し。
 新規の顧問候補先さんに、結構厳しそうと思いつつも、中小企業にとってはそこそこの金額の見積もりを出していました。この内容については後述します。私は、その行為自体は正しいと思いましたが、きっと候補先の経営者の方はもっと安いところを探すんだろうなあ…と期待していませんでしたが、無事契約されていました。不明を恥じました。

 こうしたサービス業では、5万円で受けても、3万円で受けても実際のサービスの提供にかかる費用は、サービス内容が同じならば同じです。そこで、彼は、定価を高めに設定しつつ、その費用内で他社では別料金になっているものや、普通の同業者がやらないような経営助言も行っています。その意味ではきちんとリーゾナブルな価格なのですが、それが伝わるケースは決して多くありません。そして、「それを必要で理解してくれる方だけが契約してくれればよい」という基準を価格と提案書を用いて作り上げています。
 「中身がいいから、値段もきちんと高い」を説得できるような準備と説明をしている、ということです。手間もかかることを覚悟なので良心的だとは思うのですが(早速顧問先事業所に往訪して助言に当たられていました。)、私が危惧したようにそれが通用する人ばかりではありません。というか、大部分は通用しません。

 それを、「また、失注した」と落ち込んでいては、心が持ちませんし、そのままでいては事業が縮小傾向に向かってしまいます。かっこをつけてもしょうがないのであり、この方法を支えているのは、「次の案件に進めばいい」という気持ちにさせてくれる「集客力」にほかなりません。

③一番安くはないポジション

 マーケティングの基本は、相手の記憶、印象に残ることで、その方法の基本は、「一番であること」だとされています。このことを例える例で「日本人の多くは日本で一番高い山は富士山だと答えられるが、2番の山は多くの人が答えられない」という例が使われます。

 そして、このことを一番単純に理解(これは経営者が理解、という事のほか、顧客候補に分かりやすく理解させるという意味でもある)し、「一番安い」ポジションを競うのです。この傾向は、価格比較サイトが広く使われるようになったころからさらにネット上では顕著になり、小規模な事業者がとにかく1円でも安くするということにしのぎを削るようになりました。たしかに、家電品など、大手メーカーの「型番商品」はどこで買っても商品は一緒で、修理対応もメーカーが行いますので値段以外のポイントが重視される余地があまりなかったのは事実です。

 しかし、皆さんは最近価格比較サイトを使いましたか?あるいは、ネットでものを購入する時に、安いところを探して一番安いところで買いましたか?
 実際には多く人が、「信頼できると思っている会社の中で、割高ではないところ」で買っています。つまり、2軸で表現し、その2軸のどちらもそこそこよいところ、というところです。

 マーケティング理論的にこのポジショニングマップ論は一般的ではあり、リアル店舗ではそれが内装、宣伝などを用いて印象付けられてきましたが、いよいよECでもその段階が本格化してきているようです。

 そして、そのためには、ある程度の利益を確保しつつ、きちんとしたサイトの構成や、サポート体制の健全性などを買う人にわかってもらえるように投資を行っています。競争がこのフェーズに入ると、ある程度の資本力があることが有利になり、零細店は淘汰されていきます。これは、リアル店でも郊外ロードサイドに大型のキレイな「東京の流行りのお店がたくさん出店しているモール」ができると、零細商店街や、駅前の多層階の古いスーパーが廃れていったのと同じです。

 小売業では「安くなければ売れない」は売る工夫をしていない言い訳であることが往々にしてあります。イオンは日本一の総合スーパーですが、日本一安いわけではありません。ただ、日本一信頼と便利さと値段のバランスが取れている、と消費者に思われているから、日本一なのです。

 

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