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経営者が営業会社に引っかからないための基礎知識①

強くて巧みな営業マンに思わず妥協してしまって後悔したことはありませんか?そういう営業マンを多く抱える営業会社にとって、情報力が不足している中小零細企業は実はカモです。そんな会社にやられてしまわないための対策を前後編で今週はお送ります。

今日はまず、事例を2つご紹介します。

①私にマンションを売り込むとな!

いわゆる営業会社というのがあります。私のところにも、おそらくは10年以上前に手に入れた上場連結子会社の取締役という想定(その時は関西にいたのですが、関西の会社が関西の物件ばかりかけてくる)で、投資用不動産の営業電話が今年に入って毎週数件かかってきます。それらの出元が上場している投資用マンション販売大手であることもわかっています。小金持っていると思われているんでしょうが、実際にはアパート住まいです…

今年に入って急に増えている、というのはもちろん彼らがカモにしていた層が買わなくなったからでしょう。中国人投資家であったり、日本人の事業主で節税狙いの人などです。これも「コロナショック」の一つなのです。まずそれに気づくことが大事です。値段を聞くと場所はいいものの、広さに対してずいぶん高額な気がします。しかし、かれらは、その場所は、新幹線駅から徒歩3分で、大学エリアからも近く企業用としても学生用としても賃貸に出せば十分利回りは得られるといいます。

もちろんその手には乗りません。環境は今変化しつつありますし、割高でも入居が見込めるという根拠などありません。この手のインチキは3年前までの「シェアハウス投資」でさんざんメディアにさらされた手法です。そして、「提携先金融機関から有利な条件で融資が受けられるので、自己資本は少なくてよい」という話までその時の方法と同じです。これらの物件はシェアハウス問題の時と同じく業界のキックバック率設定が異常に高く設定されているため、一獲千金を狙って電話営業が盛んになり、そして、物件が必要以上に高く設定されることにつながっています。先日も預託商法が大規模摘発されていましたら、詐欺まがいの商法の方法論というのは、一か所で破綻しても、その人たちが業界に散らばってがん細胞のように、またそこで増殖していくのです。

ここでいつかこの話を書こうと思って、話を何回か聞いてあげていたのですが、だいたい様子がわかってきたので電話に出るのをやめて着信拒否するようになり、今、着信拒否が20番号ぐらい溜まっています。

今、「投資用マンション」で検索すると、「頭金0」「利回り20%」などいかにも危なそうな広告が表示されます。そんなに確実に儲かるならば、そんなしがない中年男性に売らないでも、銀行や大企業がバンバン買っているはずです。彼らが買わないから、「お金はあるけど知識はない」使われるだけのサラリーマン層をターゲットとし、電話を切らせず、感覚をマヒさせるような営業の仕方をするのです。というか、営業するあなたがまず買え!親兄弟に勧めろ!

この構造さえ知っていれば、だまされないはずなのですが…実際には被害者は出続けます。自分が被害者だとも知らずに。

②とある中堅企業で以前本当にあった話(少し加工しています)

ある事業部門(事業子会社)の人員を拡充する必要に迫られていて、私の方は提携や個人への業務委託、あるいは買収などの短期的直接的解決方法を探していたのですが、一方で経営者の方は、「採用に強いweb構築業者」(そこそこの規模)の営業を受けました。

営業に来たのは、20代だとは思うが、立て板に水で話が上手で言葉巧みな男性。経営者が「採用に強い」というのでお会いして、目下の課題を説明したところ、その営業マンの提案は、「まずはコーポレートサイトを作りましょう」でした。確かにその事業会社単体のwebサイトはなかったのですが、ホールディングスの業務の一部を担う会社だったので、あまり必要なかったのです。

経営者の方は「そんなことをやりたいんじゃない」と言って、しつこく食い下がる営業マンの意見を却下して、結局「採用サイト」だけを作ったそうです。それで経営者は正しい判断をしたと思ったのだと思いますが、採用は実現しませんでした。私はしばらくたってからその話を聞き、相談してくれればよかったのに…と経営者に文句を言いました。

経営者の話を聞く限り、その営業マンは明らかにたくさんのページ数の作成業務を受注して営業成績を上げたかっただけで、応募者数や採用者数を増やすことには本心では責任感がありませんで、快活で明朗に無意味なことを言っていただけです。ただ、おそらくは、採用力という企業の実力の中で、webサイトの果たす役割などごくごく限られていることを本当に知らなかったのです。中小企業のwebサイト、それも採用サイトなど、田舎の県道沿いの個人商店のように誰も立ち寄らない、という事実も知らないし、上から教えられてもいない。上からこうすれば効果があると教わったことをそのまましゃべっていて、ただ、webサイトの可能性は素晴らしい、と信じ込んで営業し、売上額を成果として会社に貢献したと胸を張り、年齢の割には高額な成果給や賞与を得ているのでしょう。

そもそも、採用数も多ければwebへの自然流入もけた違いの大企業と、若干名のとてもニッチなセグメントでの即戦力を欲しがる中小企業とでは採用の考え方も異なります。私だったら、同じweb施策でも、ページはとてもシンプルに、「今より給料が上がるし残業も減る。●●業務があります。採用部門の事業責任者が初回から面談」のようなメッセージとその下に問い合わせフォームを書くだけのページをおそらく自社で簡単に作ります。そのうえで、そのページを求人というキーワードだけでなく、競合他社や顧客名でも一番上に表示するようにするよう広告単価や設定を調整することにお金を使うでしょう。ターゲットにできるだけ直接、できるだけわかりやすいメッセージを届けることをまず最初に考えるからです。

特攻兵たち

こういう「迷惑な特攻兵」はいわゆる営業会社にはたくさんいます。20代の会社に入って数年のうちは若くて視野が狭いのでしょうがないと同情もしますが、成長しそれに気づくとだいたい疑問を感じる人はやめていき、30代、40代になると数字のためならばそんなことをしても心が痛まないという確信犯だけが残っていきます。
そんな彼らの決まり文句があります。それは、
「今よりも少しだけ良くなるならば、それが他の方法より良くなくたって、顧客のためになっていることには変わりはない」
「成功する可能性があるということは0ではないのだから、嘘ではない。それに成功するかどうかはいろいろな施策や人材の能力の組み合わせなのだから、自分たちの責任ではない。」
です。裏を返せば、「良く調べずに信じる方が悪い」「完全に嘘ではない」ということです。

これ、大きな営業会社の社長が平気で言っていることです。

下手な鉄砲、数打ちゃ情弱にあたる

こうした営業手法にはいくつかの基本戦略があります。

一つ目は、基本的には、一日に数百の電話攻勢をかけて、ほとんど瞬殺されますが、100件に1件ぐらいは、アポが取れる「情弱」が世の中にはいるということで、その1件を探し当てるまで、特攻兵を使い倒すということです。先ほどのwebの営業マンのように対面でのしゃべりが上手な人は非常に少ないですので、その前にアポをとるのはとにかく確率論で攻めるのです。

 そして、その「情弱」は、決してかんぽ問題のように高齢者だけではありません。実は、一流企業のサラリーマンや中手企業の経営者でも専門外の世相や経済事件に疎い人には、こうしたことが過去から脈々と受け継がれてきた迷惑手法であることを知らない人がたくさんいます。偏見かもしれませんが、理系の専門性の高い仕事を突き詰めているような人、加工技術の高さに特化しているような会社の経営者にこうした人は多くみられます。
そういう「弱点」を彼らは実によく知っていてその兆候を見ると内心ガッツポーズをしています。一方お金のことにはきちんと情報網を持っているような人は引っかかりにくい傾向があります。

また、こうした中小企業経営者や大手サラリーマンにはもう一つ共通した弱点があります。それは、「それなりにちゃんとした信用を大事にする歴史ある企業に勤めていたり、日ごとの取引先もそういう会社、付き合う知人もちゃんとした人なので、相手の足元をすくうようなことをする人が自分の前に現れるということを全く想定していない」ということです。
 人柄がいいといいますか…お公家様の世間知らずと言いますか…そういう私も独立起業してからというもの、世の中にはこんなにも怪しい人物、怪しい案件が多いのか?とそれまで、会社がおおいに有害案件のフィルターになっていてくれたことを実感したものです。

 経営者の中には、「お金を動かす」ということにものすごく慎重な人がいて、そういう人に新しいことをやってもらうこと、変えてもらうことは私にとってもとても大変(たいてい早い段階であきらめる)なのですが、こういう人は新しいことが「常識」でないと、それを疑っているのです。そして、その裏返しとして、今自分が必要だと思っている人は自分で探して選べばよいという自信を持っていることが多いです。こういう人は、営業会社にも引っ掛かりにくいです。

こうした営業行為自体は、先ほどの某経営者の発言のように、何かの文書を偽造しているとか、何かを詐称しているということがないぎりぎりのところを突いていることが多く、決して犯罪行為ではありません。世相を嘆いても、こうした行為はなくなることはありません。むしろ、増えているでしょう。最近ではこうした押し込みに銀行が融資先確保のため、一枚噛んでいるという事例も見られます。先週も、いい加減な太陽光投資の利益計算の提案書が銀行の紹介できたという経営者の方の相談があり、私が、その提案書の不備を大量に暴くと、それでも「銀行の紹介なので無碍には断れない」とお悩みでした。

対策法は?

それでは、どうすればこうした被害は防げるのでしょうか?ちょっと長くなりましたので、そこらへんは次回にご紹介したいと思います。

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