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「専門家なら…」の罠

最近、いくつかのお客様のお仕事で、今まで自分がそれほど多くの経験を持っていない分野を必要とする経営課題が出てきました。経営全般を俯瞰整理し方向を出すのは弊社のバリューの中心ですが、実行に責任を持たないというわけではありませんで、当初お約束した成果を必ず出すまでやりぬきます。(逆に「当初のお約束」で「ここまでしかお約束できません」ということも何度かありました)例えば、日常の業務オペレーションの改善という点では弊社は日本最強であるとの自負を持っているのですが、その業務がネット広告の効果の最大化であったりすると、所要時間や費用の方は何とかなっても、効果の方は自信が持てなかったりするわけです。

もちろん、知識を持つ各分野の専門企業のつてがないわけではなく、そこへパスする手はずを経営者にご提案することも可能ではあるのですが、最近では結果として、ほぼすべてのケースで現段階でのそれを見送り、いったん自分で全てを勉強し直して対応しました。どうしてそうしたのか?ということは、中小企業の経営者の方が外部に委託するかどうか、あるいはどんな業者に委託するかを考える際に参考になりそうです。そこで今日はこの「専門家に任せれば成功確率が高いか?」という点について、直近の例に基づいてご説明します。

①いずれの課題も0→1のフェーズであった。

今、85点ぐらいまで完成しているものであれば、社内にそれなりの知識が蓄積しているはずですし、そこから先をサポートできる専門知識も高度なものであったはずで、手が出せないと判断したかもしれません。しかし、いずれのケースも、「今まで社内でやったことがない」ことばかりでした。そこから一歩を踏み出すのに、「専門家でないとできない」ということはないと思うのです。0→1のフェーズはぶつかってみれば、何等かの結果が得られますし、その問題点も事業の構造や顧客に対する洞察があれば比較的容易にわかりますので、その方法が適切なのか?どの要素が足りないのか?がわかりやすい状況です。

そして、中小企業には、「試したことのない」「知らなかった」チャレンジがいっぱいあります。それを「わからないから」やらない、と思う必要はないし、「わからないから」専門家に頼む、ならば、同じ費用を失敗するかもしれないことに投じて自社内でのPDCAに回したっていいと思うのです。

②中小企業のマーケットや課題はいつだってニッチ

これが世の中のよくあるサービス、類似例があるものであるならば、他社で成功事例をもっている人に他社の事例と同じことをしてもらう、ということが成功へ近道になると思います。しかし、私がお手伝いするケースが通常そうであるように、中小企業がよくよく戦略を吟味して細かなセグメントに尖ったメッセージを届けてそのマーケットをこじ開けようとするときには、その限られたマーケットへの「解法」は前例があまりない、ほぼ誰にとっても、「専門家」にとっても未知のことです。

もちろん、過去の経験から「手法」と「操作の勘所」は外部の専門家の方が良くわかっていることは分かります。しかし、実はその「手法」と「操作の勘所」ですが…大まかなことは実はネット上にいろいろ説明書きがあります。また、サービス提供者、たとえば「キーワード広告」であればGoogleのような提供事業者が実は無料で親切に質問に答えてくれるということもあります。たとえば今回、Googleの担当者にある課題について質問したら、「キーワード広告よりもディスプレイ広告の方が向いている可能性が高いです」と教えてくれ、その操作方法や設定のポイントまで30分のwebミーティングで教えてくれました。それを「専門知識のある代理店の方が安心」と言っていてはその解にはたどり着けなかったかもしれません。なぜなら代理店は、自分たちの利益が上がることを提案するからです。

課題をキチンと把握して、基礎知識をネットで勉強して、自分の疑問を適切な質問文に切り出す(実はこの部分は知的体力的にはかなり難しいことです)ことさえできれば、それを文章にしてメールやチャットで質問したり、あるいはwebミーティングで聞いたり、ということを数多くこなすことで、比較的速やかに正解に近づけるのです。多くの社員がやるケースでは、そのサイクルタイムが遅すぎるだけです。「自分は初心者なので教えてください」と正規の質問コーナーに質問をどんどんすればよいのです。私は一日10個ぐらいは平気で質問します。受けてる側がうんざりしているとか、「すごい奴来たな」と中で茶化されているとかを気にすることはありません。恥も外聞もなく突き進んだ方が成果に近づけます。

③その会社のことを一番よく知っているのは自分(経営者)である

通常、弊社はお客様に数か月単位で入り込み、経営者や幹部の考え方のパターン、それに社内の取引先情報や売上のデータまで詳細を把握して立案を行っています。商品であれば、売れ筋の単品、その利益率と在庫数量、入荷までのリードタイム、社内の担当者の能力や耐性まですべて把握しています。そのうえで、「どう売るか」に仮説を持ちそれを経営者に提案し、それを了承いただいてから、施策を組み立てます。上手に運用できるかという点では不安があっても、施策が目的と合致していることは確認済みです。

通常、売り込みに来る営業担当者は、「何が欲しいか」がわかっていることを前提に、「これがお得です」という説明をします。しかし、実際には中小企業の場合は特に、自分で「何が必要か?何が目的か」(何を宣伝すべきか?いくらにするべきか?…)がわかっていません。その状態で何かのサービスの契約をしても、「丸投げ」になってしまいますし、出てきた結果に対して、それが合格なのか不合格なのかを判断することができません。

また、中小企業とは言っても、一つの分野で施策を組み立てるときに用いるデータはそれなりに広汎で膨大です。それを時間をかけて説明し引き継いだとしても、相手がそれを全部消化して施策に組み入れることができるかは相手の能力によりますし、漏れている部分を見つけて修正する作業も必要です。そして、概して、受注側はそういう作業が適当ですし苦手です。

④その問題に一番時間と情熱を使うのは自分(担当者)である

一つの施策を打つ時、私はその進捗状況に対して気になって気になって仕方がなくて進捗状況のデータを一日に何度も確認します、土日もです。そうして文言一つ、価格1円を調整していくのです。あるいは、提案書も自分で作るし商談も自分でやります。それが社員の専従担当者だったら当たり前のことですし、中小企業をお手伝いするということはそういうことが足りなくて困っているところを補うことだと思っています。データを見てズレをすぐに修正する作業を一日に何度もすれば、専門家がたくさんの会社を掛け持ちしてみるよりもはるかに高い頻度で改良できます。

これは弊社を売り込んでいるだけでなく、情熱を持って取り組んでいる担当者も同じことです。「うまくできること」よりも「うまくなることに一生懸命」である方が、②③のような要因があるから、結果がいいことが多いです。

あるいは中小企業に営業に来た営業は、「自社にはスペシャリストがたくさんいる」と言っているかもしれませんし、彼自身経験豊富で優秀なひとだったかもしれませんが、単価が低い中小企業の案件の運用を担当するのは大企業では大抵若手の二線級です。トップクラスは日本を代表するような大手企業にはりついているのですから…そこを過信しないことです。

⑤売り込む会社は売るのが目的だが、弊社(担当者)の目的はお客様の売り上げをあげること

これも気を付けないといけない点です。本当に、その会社のために最善の世の中のあらゆる選択肢の中からの組み合わせを売り手が提案してくれると思ったら大間違い。売り手は一般に自分たちが取り扱いができ、利益が入る商品しか提案対象にしませんし、その中でも、自分たちがコストがかからない(慣れている)で利幅が大きい商品や、経営者から拡販しろと指示されている商品を「お宅に一番いい」と嘘をついて提案します。それは今の社会の仕組みからすると仕方のないことで、その取捨選択の判断の責任は買い手にあるのです。

その買い手の情報やスキルが足りないとき、買い手の力を補うことができるのはが弊社なわけです。ちなみに弊社はそうした「コミッション」のビジネスは原則していませんで、顧客からの業務委託料のみを収入源にしているので、こうした顧客との目的不一致は起きません。

「専門家」を過信してはいけない

とというわけで、半分は弊社の宣伝ではあるのですが、中小企業が「専門家に頼む」ことをしても、なかなか結果が出ないことが多いのも事実です。それは今回ご紹介のような要因が背景にあると思います。

一度立ち止まって考えてみてください。

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