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おっと危ない!それインチキじゃん。

人事制度改革という重い話題を3週間も続けていたので、アクセス数も減ってしまいました。そのため、ちょっと軽いネタを投下したいと思います。

この仕事をしていると、明らかに怪しいという案件が持ち込まれることがあります。元来慎重な方なので、幸い引っかかったことはないのですが、大企業の仕組みの中で守られて営業している方は目にすることがないようなものが多数あります。実はこの企画2回目で、2年前にこんな記事を上げていますので、こちらもご笑覧ください。

今日は第2弾として、その後の2年ほどの中で実際であった(そして、今ここで書けるほどには収束した)「インチキ案件」をリストアップしてご紹介してみたいと思います。

もちろん、現在進行中のものは書きません。なお、こういうバカにしたような取り上げ方をすると私にそういう面白い案件を持ってきてくれる人がいなくなってしまいそうなので、第3回は作れないかもしれません。いや、迷惑している人がいることなので、別に作れなくていいんですが。

①中国トイレ革命

某仮想通貨業界の有名人(東大の「会場を借りた」お手盛り学会で講演したという宣伝文句で資本家回りをしていた)が、中国のトイレ革命に投資を募っている(総額20億円)という話をもってきました。この「トイレ革命」ということ自体は、習近平政権の重点政策の一つであり、一部日本企業も参画して、街中に清潔で安全なトイレを設置するという政策が非常に大きな規模で中国全土で進められているというのは事実です。

しかし、そのために何でお金を日本で集めるの?(工場を建築し、部材を仕入れるためと言っていましたが)というのがそもそもおかしい。すでに受注できているといって南京市政府が発行した公文書も見せられたのですが、そこに記載の法人と投資先が同一とも限りませんし、割り印も2ページ目以降に押されていない。(これは結構決定的事実)そして、そのお金がそのために使われるとも限らない(仮想通貨相場が下がっている時期でしたので、追証金じゃないの?とうたがった)わけです。私中国法人代表経験もあり、公文書の正誤や法人の実態確認するぐらいの知恵はありますので、「これは面白くなってきたぞ」と思っていろいろ調べて回りました。

どんどん追及したら、「投資する気がないならお互い時間の無駄ですから、これ以上はやめましょう」と言われました。その後、webで検索すると実際これにひっかかっちゃった人がいるみたいですね。私の関係先はもちろん無事でしたが。

②マグネシウム電池を乗せたトレーラー

これは旧帝大で研究室を持たれていたある名誉教授の研究成果である、「マグネシウム電池」に投資してほしい、という案件です。①とは近い時期ですが、これはとあるweb作成事業者が顧問先に持ち込んだものです。マグネシウム電池自体は怪しいものではなく、比較的長期間、安定して保管のできる乾燥した電極材に水を灌ぐと発電を開始するという仕組みで、電流量もかなり大きく、日本でも防災用などの用途に限定して古河グループなどから実用化、商品化されているものです。あくまでも「限定的な用途」では使い道があるというところが今の市場のコンセンサスです。

というのも、マグネシウム電池は大きな電流を得られる反面、一度使ってしまうともう2度と使えない「一次電池」なので、スマホのバッテリーのように繰り返し使えないのです。(乾電池も基本はそうですのでこれ自体は欠点でもないですが、用途が限定されるということです)

個の提案書では、中東等の海水の淡水化プラントから得られたマグネシウム(確かに海水中には大量にマグネシウムがあります)を生成して電池を「大規模プラント」で製作し、中国にてトレーラーに乗せて災害時等に非常用に移動させて設置するために投資するのでその工場建設資金を集めている、というものです。また、中国…中国が実態以上に悪く言われる原因をこうして日本の詐欺師が作らないでほしいものです。

さらには、「マグネシウムを還元して再利用する」(非常に大きなエネルギーを消費するので、経済的にはマイナスだがSDG’sの観点で?実現する)とか、将来的には2次電池を開発する研究をその先生が進めている(実際にはもう70代半ばで10年以上論文等は発表されていないことは確認した)と構想が披露され、その人が持つアメリカ法人が投資を順調に集めているので、締め切りが近いが特別にご紹介するというのです。

全般的に怪しさが宝石箱のようにちりばめられていますが、「トレーラーに積み込んで、走っていく」ならば、実績が多くあり値段も安く、使いまわしがきくディーゼル発電機と燃料をトレーラーに積んで走っていった方が良いと思いません?その場に保管しておいて、非常時に蓄電池的に早期に切り替えられるという提案だと私も違和感は感じなかったかもしれませんが。

それと、「大学名」を利用するというのがこの手の案件では常套手段なのですが、大学内の施設は誰かの紹介などあれば、誰でも利用申請できるというものが多くありますし、「寄付講座」の一部は名も知れぬ中小企業が自分たちの「似非科学」の宣伝のために利用しているようなものも現に有名大学であっても存在しています。そういう「大学ブランド」に群がる有象無象というのもたくさん見てきて、むしろ疑ってかかる習慣がつきました。

③東南アジア不動産投資

①②は基礎知識もないのに、中途半端に「最先端技術」や「海外の政策」を語るから私に突っ込まれるのですが、これは難易度が高かったものです。東南アジアの某国が「スマートシティ」を開発するのに資金を募っているというものです。私のようなせいぜいどう頑張っても出せるお金が1000万円のひとにはこんな話は来ませんが、その百倍の可能性がある人はこういう話が来るんだなあと妙なところに感心したものです。

確かに検索するとそのプロジェクト自体はあるんですが、相手先の人がそこのキーマンにつながっているか?というと確認が取れないですし、権利関係が本当か、あるいは過去の開発実績が本当かも資料調査では確認できません。そういうと「疑うんだったら、招待するから見に来るとよい」というのです。この「現地を見て、ダミーに現地人の民族衣装を着せて責任者に仕立てて握手させて信用させる」というのは、不動産だけでなく、ダイヤモンドやその他の国際投資詐欺で非常にベーシックな手法なので覚えておくとよいでしょう。人は自分の目で見たものは信じてしまう傾向があります。けれども相手もグルであれば、容易に騙せてしまうのです。

私は「自分の知らないものは手を出さない」というのもあるし、「事業」には興味はあるが、「投資」「投機」には興味がないので、見に行きませんでしたし、この相談主にもそう言いましたが、実際引っかかった方がいるようですね。

なぜ人は騙されるのか?

これらの3例はいずれも相談を受け、数日の調査ののち、「詐欺と思って断り、相手との付き合いも絶つべき」と結論を伝えたものです。その貢献はかなりの規模のはずなのに新橋の居酒屋でごちそうになったぐらいのリターンにしかなっていないのですが…ここでこうしてネタとして結実したからもういいです!

しかし、巧妙さにはいくつかのパターンがあることがわかります。それは、「ハイテク」(どうせわからないだろ)、「急成長する海外の経済」(相手の真偽を調べることが困難)、「東大の研究」の3つです。この3つのうち、一つでも出てきたら疑ってかかって、ご一報ください。

さらに、商談の過程でこうした詐欺師には切り札としている言葉があります。それは、「リスクを冒さなければ大きなリターンは得られない」というものです。この言葉に背を押されてぎりぎりのところに私が現れたというケースもありました。

私はこの言葉には非常に反発を覚えます。少なくとも事業とか事業投資というのはそういうものではなく、できる限りの情報を究明し、不明点が残る中でも、段階的に資金投下を進めていくものであるし、その中で許容できる「リスク」は「商品やサービスが市場に受け入れられるかどうか」と「人材がやり切れるかどうか」(この二つだけでももう事業のリスクは十分大きい)であって、それ以外の個所に不明点が残っているようではいけないと思うのです。それが私が経営者に対して、これらを退けるべきと助言した最大の理由です。

それでも、本業が落ち目になるとこうしたことにでも手を出して大きなお金を得られれば、と思う経営者がやっぱりいるものです。高齢者だけかと思いきや、最近若い人でもそういう人を見かけました(その人には手を差し伸べていません。)しかし、その労力とお金をもう一度事業を立て直すことに投下してほしいものです。

そもそも、あなたのような小金持ちにそんなおいしい話を持ってくる理由がないではないですか?本当にちゃんとした話ならば、銀行や機関投資家が大きな額を出資、融資しているはずなのです。結局それがすべてです。

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