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「ヨソモノ」を応援する

最近、士業法人をお手伝いする形で中国人(だけに限らず外国人)で日本で起業、事業展開する人の経営管理を支援する仕組みを検討しています。回りくどい言い方をしてしまいましたが、

  • VISA取得
  • 事務所賃貸
  • 定款作成や法人登記
  • 口座開設
  • 事業計画立案
  • 融資支援、助成金や補助金
  • 月次会計
  • 決算と納税

といった一連の流れをワンストップで支援、それもできればハンズオンでできると助かるのかな?ということです。それぞれ必要な資格や情報源が異なるので事業者もバラバラですが、マーケットはほぼ同一であるだけに、関連事業者がバラバラにやるのは、利用する側も、サービス提供者側も効率が悪いと思うのです。そういうわけで、企画と調査のため、ひっさびさに錆び付いた中国語での入力・検索を先週はたくさんやりました。宣伝はこのくらいにしておきます。ご関心ございましたら直接「お問合せ」からお声がけください。

私自身も小さいながらも起業した口ではあり、またベンチャーの業務のお手伝いもいくつかさせていただいたり、起業された方とお話しする機会も結構たくさんあるのですが、お話ししていても、正直言って「こりゃ長くは続かないな」と思う(そして私は遠慮なくそう言います)ことが大半です。実は、先ほどの士業法人さんにも、月次課金という意味では、「創業支援はほとんど短命なのでライフタイムが短い=LTVが小さい」、ということを最初に伝えていて、事業承継など他の事業ドメインへ力点を置くこととの比較検討もご提案しています。世にいう「起業支援」のうち、継続してきちんと支援できているサービスは本当に少なくて、初期の様々な需要に対して商品やサービスの提供者とマッチングしてコミッションを手に入れているタイプの事業者がとても多いのが実情です。というのも、今はやりの「サブスク型」にしてしまうと、短命に終わって収益が得られないという問題があるのです。

こうした起業家と話していて「これは短命だ」とすぐわかるパターンはいくつかありまして…

  • 「業務」には詳しいが「起業」「事業計画」などの経営管理には詳しくない。あるいは、それに詳しい命運を共にできるパートナーを見つけずに起業している。
  • 本心から事業内容に、「社会的意義」を打ち出している。けれども今、実際に顧客はいない(ニーズは実際には顕在化していない)。そんな感じでお金に執着していない。
  • そんなことをしたら品がない、嫌われる、ルール違反などの一般社会の「自己規制」に縛られている。
  • 自分の過去の少ない経験が正しいと思い込んでいて、それを他社でも有効であると思っている。
  • 自分がいままで経験のない、銀行対応、web技術、広告、採用などについて「人任せ」で、深く入り込んで理解してうまくやろうという姿勢がない。淡白。
  • 「マーケット」ではなく、「案件」を取りに行こうとして、変な相互紹介ネットワークに固執する。(でも自分も提供しないといけないので…)

こんな感じの経営者は長くはもたないです。こうして書き並べると「そりゃそうだろ」、と思われるかもしれませんが、これらはみな、この2年程度で私がそれぞれ複数例であった「日本の起業の実情」です。「起業なんかしてもすぐダメになってリスクばっかりだよ」という親世代の警鐘はある意味当たっているとも思います。この程度の「準備のなさ」+「執念のなさ」で起業している人が実は大半です。その割には、お話をするとなんだか喜んでいただけて…「どうですか?一緒に飲みませんか?」と平気で言うので、「そのお金と時間を自分の事業に使ってください」と言ったことも数回あるのですが、1回を除いて意味が通じませんでした。

もちろん、知識と経験を持つ人が起業したとしても、それでもなお、10年を生き延びるのは大変なことです。努力と実力だけではなく、運も人間関係も恵まれていないとなかなか成功しないものです。しかし、こうした素養すらないともっと確率は低くなります。これらはそこそこ安定した会社で与えられた役割をきちんとこなすだけの「使われるプロ」では、こうしたことは身に付かないどころかむしろどんどん失っていくものです。そういう意味では、若い人の方が突っ走れる人は多いように思います。

2年以上前にこんなことを書いたのですが、

やはり、日本の衰退を食い止めるのは、この3つ、「ヨソモノ」「ワカモノ」「バカモノ」です。その中で中国出身の若い起業家と話していると、お金、成功への執着心が日本の若い起業家にはないほどに強く、そして新しいものを取り入れるスピードが非常に早く、うまくいかないと見るや事業ドメインの変更にも躊躇がありません。「成功するためなら何でもやる」という強さを感じます。よく勉強もしていて会うたびにレベルアップしています。実は弊社は、今はビジネスコンサルティングを主業としていますが、将来像としては、資金供給面も含めて展開していくということを目指しています。(久しぶりにこの話をしましたが)その時に誰にどのように供給することが良いのか?を考えながら今の業務を進めているのですが、ちゃんとした人はたいてい私よりも先にVCが見つけてくれているというのもまた事実でして、そういう意味では外国人起業家というのは残されたマーケットの可能性があるとも思っています。

日本を変えるのは、日本人とは限りません。彼らが現状を打破し、新しいサービスと雇用を生んでいく確率は、日本人のそれよりも高いような気がします。

起業する本当の理由

そこそこ成功しつつある起業家が登場する記事というのはたくさんあり、そのインタビュー記事で「あなたはなぜ起業したのですか?」と聞かれたときに、多くの起業家は「このサービスが世の中に必要とされていることを痛感した瞬間があった」という事例を話します。営業上はそう言っておいた方がよいし、実際そういう機会があったのだと思いますが、それを企業内で実現することもできたわけです。

「なぜ起業したのですか?」の質問に対する多くの起業者の本当の答えは実は、「自分の居心地のいい場所が、既存の組織ではなかったので、そんな場所を自分で作りたかった」というものです。その居心地の良さとは決して「楽」というものではないのですが、「自分で自分の行き先を決める」ことは「生きている実感」にあふれています。そして、人の協力、買っていただいた方への感謝などをとても深く感謝することができます。多くの起業家の何も保証がないなか24時間365日働くというリスク・苦労の対価は、「生きている実感」です。

起業する人の中には、組織の中で従順に成果を上げていくのが苦手な人が比較的多いように思います。それも一つの才能です。一言多かったり、ついつい自分が前に出たがったり、何かに執着してしてしまう人は日本の組織ではうまく生き残っていけません。そういう「バカモノ」が「自分を受け入れてくれる場所」を探すとそのうち一つが起業だということは実は多いように思います。

もちろん、その行先までの道すがらには多くの障害が待ち受けているわけですし、外国人となればその困難はさらに多くなります。ただ、少し道を均して道案内をしてあげれば、もともとの素養がある人が多いだけに成功する確率は日本の普通の起業家よりもむしろ高いのではないか?という仮説をもっているところです。

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