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中国にて ~近くて遠い日本~

私は、2004年頃から中国現地法人の総経理を中国の深センで5年弱務めていました。写真は、その深センの新市街(BCD)の風景です。その間、SARS,反日デモ、労働契約法、人民元の変動相場移行や自社の土地使用権問題、工業団地の再開発、電力不足など日本では決して体験できない経験をさせてもらいました。住んでいたマンションでは、電球が突然爆発したり、壁の中で水道管が腐食破裂して家中泥水だらけになったりもしました。会社のエアコンの室外機が盗まれたり、脅迫状が届いたり・・・もう、このブログ欄にこの時の体験だけで100も200もかけてしまいそうです。

皆さんは昔のテレビで映っていたまだ貧しい時代、問題がたくさんあったころの中国の印象が強いかもしれません。あるいは一部のメディアが喧伝する中国の政治文化の問題点をうのみにして、日本は優位にあると思い込もうとして今の中国の経済の姿を真正面からとらえない人が多いように思います。そうしたことを少しでもなくして、本当の中国、中国人と向かい会うところから、グローバルビジネスは始まる、と私は思っています。

中国の多くの企業統治や経済的な原理は、比較的アメリカのそれに近いところがあります。2008年の労働契約法の施行によりヨーロッパ的な労働者保護の要素もかなり増えましたが、それでも大卒社員の上昇志向は非常に強く流動性が高い状況の中で、企業も個人もし烈な競争を繰り広げています。また、日本以上に契約社会であり訴訟社会である点もアメリカに近いところがあります。私も日本では一度もありませんが、中国では裁判所の被告席に立ちました。(でも、裁判官はポロシャツの若者でしたけど。)

そんな中国に、「人件費が安い」最近では、「市場が大きい」と進出しても、日本の制度、日本の仕事の仕方しか知らない経営者や幹部からすると、「中国人はわがままだ」「中国人は信用できない」となり、「中国は嫌いだ」につながっているケースも数多く見てきました。でも、実は、世界で特殊なのは日本のほうです。会社に個人が給与や待遇で交渉を挑む、いやなら辞める、契約を締結すれば厳しく交渉し、しなければ自分に有利になるように都度物事を運ぶ、というのはまず当たり前のことだと考えるべきです。

逆に中国企業も日本のことを「嫌な奴ら」と思っています。私が帰国後役員を務めていた会社はある秋、従来から依頼していたプラスチック成型の会社に再度依頼しようとしたら、普通に断られました。日本にいても全然様子がわからず、別の役員は怒っています。でも現地に話を聞いてみると、その工場は日本向けの実績が評価され、世界最大のスーパーマーケットチェーンM社から年末商戦向けの商品を大量受注していたのです。そして、そちらの方が、量は20倍、単価も利益が出て、しかも品質要求は日本みたいにうるさくないのですから、彼らが事前の打診に難色を示すのも当然のことです。多くの製品で、日本ではもう短期に大量に生産する、ということはたとえ単価を上げたとしてもできなくなっており海外生産一択(国を選ぶという余地はある)なわけですが、海外からすると、値切って、品質にやたらうるさくて、しかも、アメリカ向け、中国向け、インドネシア向けなどに比べれば数量がはるかに小さいのに、毎日納期確認して、契約した納期よりも前倒ししろとかわけわからん要求してくる会社にはうんざりしているわけです。しかも先方の社長や幹部は発注する担当者よりもずっとお金持ちでいい身なりで英語ペラペラで・・・

そんな相互理解のクレバスに落ちず、戦いつつもビジネスパートナーとしての関係を構築していくにはどうしたらよいのか?をこのカテゴリーでは少しづつご紹介したいと思っています。

 

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