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経営者も(コンサルタントも)練習が必要

何か制度や戦略を変えようと思うと、経営者は社員へ理解してもらうべく説明しなければならない、という場面に多く行き当たります。そういう時、皆さんはどういう準備をしていますか?

大した準備をしていなくても、立て板に水のごとく流暢にしゃべることができる人もいて、そういう人をちょっとしゃべりが苦手な私はとてもうらやましく思います。もちろん普段から具体的に、何度も何度も繰り返し自分の事業について考えているからこそ、上手にしゃべることができるわけです。

ただ残念なことに、こういう頭のいい人は概して早口で抽象的な単語を多用するため、一般の社員には意味が通じていなくて、持ち場に戻った社員が「ありがたいお経を聞いてきた」という顔をしていることがままあります。

それでも、「説明した」という事実はあり、そのあとは部門のリーダーを中心により具体的な検討が行われることが期待できる(そういうしっかりした部門のリーダーがいてくれればこれは期待できる)のであれば目的のかなりの部分は達成できているので、良しとすればよいのでしょう。

しかし、私を含む多くの経営者はそんなに上手にしゃべることができません。自分では一生懸命しゃべっているつもりでも、録音して聞いてみるとなんとわかりにくいことか…自己嫌悪に陥る有様です。今、私も経営方針に関する企画を立てても、最初にやるべきことは社長が社員にどう説明するかを社長と相談することです。そんな時、私は原稿を作って自分でしゃべる練習をします。そして、お付き合い先の経営者の方にも自分が社員に話すことを想定して聞いてもらい直していきます。そして経営者の方に本番に臨んでいただきます。こういう時、私はパワーポイントでは論理がつながらなかったりするので、基本はWordで文章で作ります。

最初は誰しも初心者だ

会社員になると私たちは大事なことを忘れがちです。勉強でもスポーツでも、なんでも、同じだったはず。うまくいった人もそうではない人も学生時代にそれを学んできたはずです。

「工夫しながら同じことを何度もやる。そうすると1度目はダメでも2度目は1度目よりもだいぶ上手にできる。そうすると直す箇所が少しはっきり見える。それを工夫しながら3度目をやれば、2度目よりももっとうまくできる。これを毎日繰り返す。」

そして

「何事も基礎が大事。基本動作を正確に素早くできるようになるまで練習する」

管理職方には半信半疑でなかなか採用していただけないのですが業務を分解して可視化した先に、ドリルによるトレーニング、テストによる能力認定を入れるというのはとても効果的です。スポーツ選手だって基礎動作の確認を念入りにしますよね。がむしゃらに力いっぱいの練習よりも、効率的なフォームの確認と維持・修正にむしろキチンと時間をかけているのが、トップアスリートです。

私はよく、「公文式」に例えるのですが、基礎的な操作や知識をハンドリングすることを反射的にできるようになるまで、ドリル形式で知識を定着させると、仕事の精度や速度は格段に上がります。そして、そのドリルは新人教育に継続して使えます。そのベースの部分が安定していることが学力と同様、仕事においても非常に重要なのです。そして、もう一つ、この公文式的アプローチが重要なのは、「知っていると自分でやれるはだいぶ違う」ということです。つまり、「聞いて理解した」、や「他人がやっているのを見ているから自分も知っている」と「自分が精度よく効率よくやれる」はかなり距離があることなのです。

さて、話は戻って、経営者の「話す技術」です。これも同じで練習と他人のチェックが必要というのは申した通りですが、それは話すスピードや話し方、あるい単語の吟味といった原稿ができたあとの努力の話でした。また、そうした「経営方針発表会」的なものではなく、急なミーティングや商談の場で臨機応変に話さなくてはならないこともたくさんあります。そういうことへのトレーニングはできないのでしょうか?

実は、私がブログを書き続けている理由の半分はそこにあります。

私がこのブログを書いているのは、お知合いになることができた経営陣の方に、「私はこんな経験があってこんなことができて、こんな方向性を持っている人間です。」というのを言葉で長々と話すよりもここを見てもらった方がわかりやすいし、ここを見て面白いやつと思ってもらえた人でないと多分長くお付き合いできないと思うから、というのが理由の半分です。(この話はお会いした方にはよくしています)

しかし、もう半分は、昨今の中小企業の経営をめぐる様々な問題やその対処策に関する、抽象的な概念やわかるようでわからないカタカナ言葉を自分でなるべく人にわかるように話して伝えられるようになるためには、一度二度とこうしたブログという形ででも自分で用いておいて、前後の単語の使い方などを体得しておきたいからです。また、その際には背景となるデータや他社の動向なども時間がある休日や平日夜だからこそ調べて読んで頭の中にストックしておくことができます。さっきも申しましたように、「読んでわかる気になる」と「自分で書ける、話せる」の間には大きな差があるのです。(そして、もちろん、「話せる」と「組織を動かせる」の間にも大きな差があります。)

私はある問題について調べておく、そして自分の考えや対策を文章や図にまとめておくという練習をしておくことで、経営者との真剣勝負の商談の場で刀を抜けるようにしているのです。

実はこのブログまもなく400回を迎えるのですが、5月以降アクセスがどんどん増えておりまして毎月前月の1.4倍ペースとなっています。まことにありがたいことですが、そういうごくごく私的でつまらない目的が一部にありますことを8月の最初の投稿で白状しておこうと思った次第です。

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