また、アクセス数を狙ったようなタイトルですが、先週月曜日に電車の中で出会った光景です。話しているのは、素材メーカーの役付き取締役のようです。なぜ分かったかというと、お付きの若者(30代1、20代1)が「専務」と呼ぶのと、持っている紙バックのメーカー名が有名な会社だったからです。普段は社用車があるようなのですが、修理か何かで今日は電車で訪問らしいのです。
「専務」は巨人ファンらしく、日本シリーズ2連敗に対して、巨人ナインに「必死さがない」というような気概の部分を嘆いているのですが、お付き1,2は見ていなかったようで、それを専務に咎められていました。若い方がつい言っちゃっていました。「ラグビーみてました。」
年長の方が、目配せで、「バカ、余計なこと言うな」という合図を送ったのですが、時すでに遅し。「専務」はこのように言い出しました。
「君らはサッカーとかラグビーとかの方がいいんか?」「でもな、日本で仕事するんだったら野球について知るべきだよ。チームプレーとか、トレーニングとか、トレードとかのチーム作りとか、作戦、心理戦とか…勉強になることが沢山ある」
お付きの二人は、「はい、今後そういう視点で見てみたいとオモイマス!」
実に興味深い会話でした。まあ、「専務」は野球以外を知らないだけでサッカーやラグビー観戦者を国賊扱いしているわけではないんですが。
どんな点が興味深いかというと、
- 電車の中で、社用の紙袋もって(社章をしている人は多くいますが)、役職で呼ばれるような人は、差しさわりのない天気や食べ物の話をしていた方がよいですね。セキュリティ上も風評上も。
- そこから離れて一年余りが立ち、改めて見てみると「会社の偉い人」と「ペーペー」の関係は、決して唾棄するようなつもりはないのだが、とても不自然なものだということを客観的に見ることができる。盲従的にならざるを得ず、リスク回避ができるものではなく、リスキーシフトなグループシンクにすぐ陥る。
- 現代は様々な価値が社会に散在し、情報も「権威」から一方向的に流れるものではなくなっている、ということをまだ受け止められていない層が、「日本を代表する企業」だからこそ経営層にいるという事実。これが消費財メーカーならばマーケティング的にかなり致命的なことだと思うのですが、素材メーカーだと通用してしまうらしい。
- 「日本で仕事をする」という前提も崩れている(このメーカーも実は海外進出をかなりしている)し、日本で仕事をするときも外国人や女性など多様な人と仕事をしなければならない時代になっている中で、90年代までの戦後モデルにまだ相当染まってしまっている人がまだ「専務」
- たぶん、専務は60代半ば。(後で調べたら、そのようでした)そんなに齢とは思えないのだが、新しいことを吸収する柔軟性が明らかに失われている。サッカーもラグビーもチームビルド、チームマネジメント、技術とメンタルの準備、トップクラスのプレイヤーの基礎的動作パターンの精度の高さとその組み合わせのクリエイティブさ、という点では野球と同様に興味深い。そして、野球以上に国際的な競争がプレーでも人材でも繰り広げられていて、世界の市場が大きい。あなたの会社はどこへ向かっているのですか?専務。
- 野球って60代、70代向けコンテンツになってしまったんだなあ。そういえば、テレビで野球って何年も見ていない。ビジネスとしてどこで差がついてしまったんだろう?と思った時に、頭に思い浮かんだのは、変な恰好の「私設応援団」。私にそう思われている、ということは、相当陳腐な認知を市場にもたれてしまっている。
ちなみにこの会社、足元の業績も堅調です。次の日は祝日でして、隣駅まで出かけて大きな工事現場を通ったら、偶然このメーカーの製品が真新しいビルに据え付けらえていました。そこには、「〇〇〇〇(ここを書くと会社名がわかってしまうので)10年保証」と赤字で書いた紙が貼ってありました。10年先の日本で、世界で、この会社が引き続き堅調な業績を維持し、ユーザーサポートをできているだろうか?とふと疑問に思ったのでした。