これも本当に最近、お付き合い先にご案内したお話しから。私も半年ぐらい事業化をお手伝いしてきたテックベンチャーがめでたく、本日4月1日に法人登記に至りました(はずです)。世界を変える一歩を踏み出した関係者の勇気を少しでもお手伝いしていきたいのですが、先日登記手続き書類がようやく完成し、士業の方にお渡ししたというお話を聞き、「次は銀行ですね、最初はネット系にしといた方がよいですよ」とお話ししたら、もう先回りして同社の関係者ルートでメガバンクU社(赤組)が話を持ち込まれていました。そこで、今度は、「口座はお付き合いがあるなら銀行行く時間もったいないけど、しょうがないですが、BizStationというEBは固定費かかりますから、現段階では使わないで他行でネットバンキングやった方がよいし、その方が、窓口にハンコもっていって一日がかりで手続きとかなくていいですよ」というお話をしました。
最近、若い会社や新設法人では、法人でもネット銀行を用いられるケースが増えてきました。いくつかありますが、大手では、「楽天銀行」「ジャパンネット銀行」「住信SBIネット銀行」が代表的です。数年前は締結する契約書の「振込先」欄に「楽天銀行」と書いてあるとびっくりしたものですが、今や私の関係先(そんなに大きくないところばかりですが)でも、メインの入出金はネット系というところが大半です。
理由は先ほどお付き合い先に述べたのと同じく、①コストが安い。②往訪させられることがない。の2点です。特に②は大きいと思っています。一方、「融資」に不利なのか?という点を気にされる方も多いです。この辺を整理してみたいと思います。
最初の①コストの話ですが、今回私とお話しした新設法人さんにお渡しした表をそのまま載せておきます。ここで住信SBIネット銀行を記載していますが、先に挙げた他2行でも概ね同じ料金ですし、逆に既存銀行はメガバンクは緑組も青組もほぼ同じ料金ですので、そのつもりでご覧になってください。私がSBIを勧めているというわけではありませんで、この辺はどこも大差ありません。これを見るとわかるように、法人では給与支払いや仕入れや業務委託の代金支払いで毎月回数が多く必要になる「振込」手数料でかなり大きな差があります。実は、この振込手数料は、以前、「コスト削減講座」(こちら)でご紹介したことのある「振込代行サービス」を使用するよりもさらに安く、現時点ではネット銀行で振り込みを利用するのが一番安いです。
また、住信SBIネット銀行では、売上の入金(毎月10件程度)に使用するとさらに振込手数料が安くなるという優遇措置があります。気を付けなくてはならないのは、「総合振込」(多数の振込を一括で処理するサービス)を利用する場合は、固定費が発生するということです。ただし、1回の振込が5件を超えてこないとこれを使う意味はあまりありませんので、(振込用データを違えないよう確認するのが慣れないと大変なんです)ごく初期にはこれも気にする必要がありません。
一方のメガバンクの方ですが、EB(エレクトリックバンキング)の利用自体に今時…、固定的な手数料がかかります。逆、つまりネットは無料で窓口は手数料とる方がいいと思うんですが。
有料とはいっても、窓口に行って振込手続きするわけにもいきませんので、では振込件メガバンクだけでなく、一般の銀行でも、毎月の振込件数が少ない時から、少ない資本金からの現金がさらに毎月じりじり減っていってしまう、ということが起きるのです。これが結構腹が立つのです。総合振込を使用するにはさらに、初期費用27,000円が必要ですし、月額費用も増大します。振込手数料もかなり高く、他行向け3万円以上は756円と、ネット銀行の3倍近い水準です。これらの費用は、交渉で個別に安くできることがあります。たとえば、大手法人はこれよりもはるかに安い振込手数料で利用しています。しかし、それは「あなたの会社が銀行の営業担当にとって逃がすとまずい存在になったら」できることです。試しに交渉してみるのは構いませんが、「新設法人がなに言ってんの?」という態度を取られても怒らないでください。銀行だって、儲かる取引先を優遇せざるを得ないのですから。
2番目の「窓口にハンコをもっていく必要がない。長々と待たせられない」というのはより重要です。ネット銀行はそもそも行く窓口が存在しないので、すべて電話やオンラインで進みます。紙にハンコを押して郵送するという手続きは日本の制度上どうしても残ってしまうのですが、それは仕方がありません。実際楽天銀行を使われている先輩がおられるのですが、聞いてみると、「窓口で待たされるストレスから解放されるのは大きい」と言っていました。ちなみにこの方、旧長銀で業務管理などをされていた「旧式の権化」のようなご出身ですが、それゆえに「楽天銀行」を自分で選んでいるのです。
3番目の「融資に不利にならないか?」ですが、一般の銀行から融資を受ける時には、その銀行に口座を作る必要が生じます。ただ、初期に融資を申し込む順は、「政策金融公庫の創業支援関連資金」→「信金、信組」→「地銀」の順で、よほど好業績で上場見込みでもない限り、メガバンクで融資というのは難しいわけです。そして、銀行の利益水準からすると最も利益率が高いのは、「金融商品の売買」であり、その次が「融資」、「預金に関する手数料」はそれよりもはるかに利益率が低いものです。つまり、「手数料を払っているかどうか」はあまり関係がない。「融資」の方がはるかに銀行は儲かるのですから。もちろん、担当者レベルでは嫌な顔をしたり、牽制球を投げられたりしますが、だからと言って、「儲かる融資」を捨てるわけではありません。あなたは、会社で利益をあげ、成長軌道に乗せて、そして億の単位で借り入れできる存在になってその銀行にお願いすればよいのであって、手数料で銀行の営業担当の顔色をうかがう必要はない、というのが私の考えです。
過去に大企業から零細企業まで多くの経理担当者とお話ししてきましたが、経理担当者は、銀行の機嫌を損ねることを非常に畏れていて、社長に常に「そんな危ないことはやめてくれ」ということを言う傾向にあります。それがまた、銀行の営業担当の「常套手段」でもあるのです。私も苦しい時にやられました。でも、それに従っていたって、一定の社内の評価基準で与信が確保できなければ手数料を払っていたって、融資は受けられません。そして、その評価基準は、大部分が、「返済可能性」であり、その会社が、同行にとっての「どのくらいの利益水準の顧客か」はリストアップはされ、稟議に記載されているようですが、「参考情報」でしかありません。融資にあたっては、「貸倒れない」ことが最優先なのです。
ということで、私は新設法人は、当面ネット銀行で業務を進めつつ、融資に関しては、話をきちんと聞いてくれる地域金融機関と政策金融公庫を使いましょう、ということをお薦めしています。古い人は「取引銀行で会社の格が見られる」とこのような考えを諫める人もおられます。しかし、私は新設法人だからこそ、今一番新しい情報と手法を用いて低コスト体質、高速経営を実現するべきである、と思っています。
大きくさえなれば、銀行は融資をさせてくれ、と頼んでくるのですから。