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経費削減講座14 工事費

 前回は賃料についてどのような交渉の作戦が立てうるのか?についてご説明しました。今回はそれに関連して内装工事や現状復旧費用についてご説明します。これら二つには共通点があります。そして、それはこの連載の目的の一つでもあります。

 私たちは発注側でありながら、こうした経費項目の一つ一つについて受注側に比べてあまりにも業界知識や原価についての情報を持っていなさ過ぎます。経済学的にいえば、情報の非対称性があるがために、市場は完全性を失っていて、売り手優位になっている、ということができます。私たちの活動は、その非対称性を発注主側に立って補う意味があります。工事費についても工事業者に比べて、依頼主は、多数の店舗の開店や改装をやるような立場でもない限り相場や知識について到底かなわないのが実情です。携帯電話や複合機は場所が違っても価格の比較が可能ですが、工事は二つとしておなじものがないだけに比較も簡単ではありません。

 しかも、実際の現場で作業をしてくれる職人さんの待遇は決してよいものではない、というニュースも聞きます。(これは事実です。)  一体どうしたらよいのでしょうか? 

【内装工事費のチェックポイント】  

まず、見積書をもらう際、面積と単価、人数と単価など単価がわかるような記載になっているか?に着目してください。それができない工事業者は価格比較以前の問題であり、元来使うべきではありません。

 多くの場合、そのような記載になっていないはずです。また、多くの場合、見積書の一番最後に出精値引きという記載がありますが、これもできる限り単価に反映させるよう要請するべきです。そのうえで、例えば労賃は、管理コストを入れても高くなりすぎていないでしょうか?彼らに本来払われるべき給料はあなたの会社の社員の給与とそう大きくは変わらないはずです。あるいは壁紙や塗料の価格相場は実はネットで調べれば簡単にわかります。それに比べて大幅に高くなっていないでしょうか?

   一般に専門施工会社が入手しているこれら資材の価格は、ネットで普通に公開されている価格よりも安いことが通例です。BtoB商材ではそういうことが多くあります。それがネットよりも大幅に高い、というのは明らかに高いといえるはずです。  なぜ、大幅に高くなっているのか?あるいは高いと想定できるのか?というのは建設、建築分野特有の問題として重層下請けという構造があるからです。実際工事にきて作業をしてくれる若者が見積書を出している会社の社員かというとそうではないケースがかなり多くあります。見積書を出している会社は実は何もしていないか、あるいは完成の立ち合い検査しかしないようなケースも多くあります。もちろん彼らはそこでかなりの利益を抜いています。さらにもう一社間に入って、作業してくれているのは、孫請け会社というケースも多くあります。  ならば、きちんと職人さんを抱えて仕事をしている地域の会社に直接依頼すれば、職人さんを買いたたいたり、資材のランクを落としたりしなくても価格を下げられるはずなのです。実際作業している人は変わらないし、直接意匠を説明すれば伝言ゲームのミスもなくなるので品質も特殊な技術を要するようなものでない限り変わらないはずなのです。

  「不必要な重層下請けを省き、作業を直接してくれる会社にきちんと払う」ということは、建築業界を健全化するためにも大事なことではないかと考えています。 

 

B工事?C工事?】  

ところが、そうもいかない工事もあります。特に商業施設内の店舗などで多いのですが、「工事は借主が負担して行うが、施工は貸主の指定業者」通称B工事です。これに対して、借主が施工業者も選べるものをC工事といいます。  このB工事は、建物の躯体や配管などを理解しないで実施した場合に問題が起きるような個所で指定される、というのが本来の目的なのですが、この発注先が大手ゼネコンやその系列会社だったりすることも多く、前述の理由で非常に高い価格になることが多いものです。

 しかし、この場合でも、全部を指定業者に依頼するのではなく、最小限にとどめることや、価格適正性を交渉することなどやれることはまだあります。実はこうした専門的で嫌な交渉を支援してくれるような専門家も世の中にはいます。私たちも建築の専門家はいないので必要な時は、そうした専門家に依頼しています。 

 

【原状回復時のチェックポイント】  

同じ工事でも、作るときと壊すときでは多少事情が異なる点があります。  まず、一番よいのはオフィスでも店舗でも次に入る人がそのまま留置物を活用してお互い安く済む、というパターンです。そのほうが費用も少なくて済みますし、非営業期間も短くて済みます。また、オフィスではミーティングスペースの造作はそのまま使えるケースも多くあります。こうした居抜き活用の情報ネットワークは徐々に増えてきていますが、他にも自分で後継を探してくるなどできればお得です。 

そうはうまくいかず、撤去作業が発生する場合でも、工事費の節減方法以外に、有価物をできるだけたくさん、高く売る、というような方法もあります。家具や什器、機械類は販売できますし、造作物でもたとえばダクトやエアコンの配管の金属は意外に高く売れます。放っておいたら工事業者が撤去して勝手に売っているケースもあるようです。

 

工事費は専門性が高いので相見積もりだけであきらめている会社も多いように見受けますが、1回の金額が大きいだけにいろいろな策を打つべきだと思います。ただ、それには時間がかかります。早めに始動しないと、結局は業者の言いなりにならなくてはならない結果になりがちなことにはご注意ください。

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