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「上場が目標」という経営者へ

前回の記事を書きながら思っていたのですが・・・「上場を目指す」という経営者の皆さん、それは本当にあなたの目標なのですか?

この20年、かなりの数の「上場を目指す」経営者に、面接で、営業で、あるいはコンサルタントとしてお会いしました。100は下りません。そのうち、本当に上場を実現した会社は数社です。上場までいかなくても、事業が成長していればそれで成功ということもできますが、実際には、成長した数よりもなくなったり、なくなりそうな会社の方がはるかに数は多いです。

そして、「どうしても銀行だけでは必要な成長資金が手に入らず成長が頭打ちになってしまう」という「上場」の本来の目的を口にした経営者は一人しかいません。ちなみにこの会社はその後上場しましたが、その後紆余曲折あり上場廃止しています。

あなたは上場によってどのくらいの資金を入手し、その後1年でそれを何に振り分けようとしていますか?という話を聞くと、多くの人はノープランです。では、なぜ上場したいのですか?と聞くと「採用に有利」というような「上場ステータス」が目標であるという話をします…上場すると新卒採用用パンフレットの必要部数が数倍になるという事例があるのも事実です。大したことないのは、経営者だけでなく、社員も新卒就活生も同じですので、「採用に有利」は別に間違っているとは思いませんが、そうではないですよね?

実際には創業者やストックオプションを持つ一部の創業メンバーの希望であり、そしてそれ以上にあなたにお金を出してくれている人(ベンチャーキャピタル等)からの「強制」(それを目指さないとお金を返せというような話どころか出資契約の内容にすらなっているようなケースもある)があるからで、数年前の判断に縛られ、そこに今の時点での経営者としての判断が入り込む余地がない状態になっていることが多いです。創業者は個人で会社に多額を貸し付けしているようなケースも多くあり、上場益がないとそれが回収できないようなケースも多くあります。ただ、プライドなのか、日本人的な建前論なのかそれを私に言えないだけで、とっさの言い逃れが「採用に有利」等なのが実情でしょう。

さらに意外に多いのが、「上場屋」(わざととげのある言い方をしますが)が実質的に経営権を握っているケースです。実は私もこうした会社に転職し経営幹部となったことがあるというのは、前回の話でも書いた通りです。私のケースでは、実質的経営者の前職が大手証券会社系投資顧問会社の元社長(60代)でして、役員室で一日中証券会社の元部下に銘柄の相談の電話をしているような人でした。まあ、私を採用し会社のピンチに抜擢してくれた人だったので、私としては人生の恩人なのですが、こうした人は、「上場が企業の目的」だと思い込んでいて、自分が会社にできることもその分野だけです。上場作業が長年の仕事の前提になっているし、そのために膨大な金額を証券会社の上場支援部門やその周辺の士業に支払いするのが当たり前になっているのでもう何を言っても駄目です。そうでなくても、金融出身の経営者は商品の改善や組織の体質改善について、「そんな確実性のないことを悠長に待っていられない」という考え方の方が多いように思います。VCや証券会社は「上場」が目的です。もっと言えば、VCは上場時の売却益、証券会社は顧客の損得に関係なく、売買の回数が目的です。本来の会社の「事業の目的」とは大きなギャップがあることを理解していないケースも見受けられます。

ここまでの話に「顧客」「市場」「社員」が一切関係していないことはお気づきでしょうか?

今いる社員は、給料が増えて欲しいとか、会社が(良いことで)有名になってほしいとは思っているでしょうが、会社が上場しても別にいいことは何もありません。むしろ、内部統制だ、監査だと今まで通りの楽に仕事をすることを阻害するような要素がたくさんあり、内心多くの人は反発しています。同様に、顧客も、提供会社が上場企業だから購入するということはほぼありません。便利で安ければよいだけのことであり、上場維持コストと呼ばれるものがプラスになる要素はそこにはありません。多くの人が「上場への信頼」というのは、三井三菱やメガベンチャーを指しているのであって、3800もある上場企業の大半を占める名も知らぬ会社のことを言っているのではありません。

ですから、上場により得た資金が早期にプロダクトを大きく飛躍させることに投下され社員の仕事を発展させ待遇を改善しない限り、上場は社員にも市場にも関係のない、「経営の都合」でしかないのです。

多分、これこそが上場を目指すといいながら上場に成功する会社がとても少なく、そして「上場を目指す」という言葉が私にも社員にもむなしく感じられる理由なのです。

お金持ちになりたい、という欲望は悪くはないと思います。しかし、ごく一部の成功事例を見てそれが「上場時の保有株でなされるもの」という理解が世間に流布しているのは危惧すべき状況です。お金持ちになれるのは、「会社のプロダクツが、多くの人に継続的に支持され、お金を支払ってくれる」からであり、株価はその結果です。

本当は「どうすれば会社のプロダクツが、多くの人に継続的に支持されるか?」だけに経営者も社員も集中するべきなのです。そして、たとえ出資を受ける場合でも、そのことを揺るがすような相手からは受け入れるべきではないのです。

しかし、実際にはそうではないケースがあまりにも多く、多くの経営者が知識も意識も不足したまま、資本主義の荒海に乗り出し、そして難破しているのです。

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