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名刺から小さな会社の顧客DB構築③実践編

このシリーズでは、①で名刺データを用いて、ある営業意図を持った顧客候補のデータベースを構築するのにどういう要領を知っておけばよいかをご説明しました。

②では、①の補足をしたうえで、そもそも何のためにDBを構築するのか?ということ、そして、その情報提供は何をどのような手段ですればよいのか?ということをご説明しました。そこでは、多くのケースでは第一案としては電子メールがSNS、郵便よりもよいであろう、ということをお話ししました。

三回目の今日は、ではメールでどのように実施すればよいのか?ということを、「月額1万円以下の出費(人件費以外)で実現する」ことを中小企業向けにご紹介します。

メールソフトでBCCで送ってはいけない

まず最初にこれだけは覚えてください。OutlookやThunderBirdなどのメールソフトを使い、あて先をBCCに入れて送信する、ということは絶対に行わないでください。そして、これは、「ルール」だけではいつか事故が起きます。仕組みとトレーニングとスケジュールの3つを経営側で管理しないと事故ります。

これは「個人情報の漏洩」かつ、「自社の営業秘密(取引先情報)の漏洩」にあたり、発生すると送信先にお詫びのメールか電話で連絡し、削除をお願いする(そんなことをしても実は削除してくれている人は一部だけ)、ということが起きます。この「情報セキュリティ事故」ですが、20年前に、メールで一斉連絡という方法が行われるようになった時代から存在しているにもかかわらず、今でも、大企業であってもたびたび発生し続けています。私は、この事故で処分された担当者を2社で3名知っています。いずれもまじめな女性社員でした。もちろん2社ともルールでは禁止されていましたが、それでも発生してしまったのです。
 それ以外にお取引先様で日本を代表する10兆円規模企業のエース級社員が発生させているのも見ました。

これらの事故は、使い方が十分わかっている、使いやすい同報メールサービスがないままに、急ぎで期日を守ろうとして、あるいは夜中の2時、3時という集中力が低下して早く終えようと焦るときに、担当者が交代して間もない時期にルール違反を犯しています。送信サービスが直観的であること、使いやすくて、しかもそれに十分習熟していること、というのが会社と社員を守るためにはとても大事なことなのです。経営者が、「スケジュールよりも習熟優先」と宣言し、「習熟カリキュラム整備」を指示しない限り現場はスケジュールを優先し事故が起きます。その社員を罰しても、次の担当がまた夜中の3時に薄らぐ意識の中で同じミスを犯します。

ツールは何を使うか?

こうした「ツール」の使いやすさ、親しみやすさはとても大事ということは上で述べた通りですが、もう一人中小企業にとっては「費用が安いこと」もとても重要です。電話で営業してくるITツール屋さんの中にもこうしたシステムを提供している会社は少なくありません。しかし、それらのツールは、大抵月2万円以上、オプションをつけると5万円以上します。たしかに優れた分析ツールがついていて便利なのですが、これを出す気になれる中小企業はそれほど多くはないでしょう。

また、最近では、「マーケティングオートメーション」(MA)という言葉が流行しています。これ、多分言葉の定義に誤解があって、やっていることは、「セールスプロモーションのプロセスのベストプラクティスの提供と自動化」です。マーケティングの上流のターゲティングですとか商流設計や価格戦略等は自分で決める必要があります。昔は、この手のツールは最低でも月額50万円ぐらいしていたのですが、今では月10万円ぐらいから使いやすい製品が使えるようになってきました。ただし、これらのツールは、「システム」のほかに、「プロセスの設計」と「コンテンツの制作」がバランスよく社内にないと効果を発揮できません。それに、これらのツールは、対象とする相手が1万を超えるか、電話や訪販の担当者の数が20を超えるような規模でないと効果を発揮しにくいのです。BtoBの中小企業では、そこまでの規模ではない、1プロジェクト1000以下のことが多いはずです。それくらいですと、「個別対応」がある程度できてしまいます。(1000のうち、アクションがあるのは、毎回3~30程度ですので)

というわけで、そういうたいそうなツールは(無駄とは思っていません。一部商品は大変優れています。)一旦おいておいて、①事故なく配信できる。②廉価、③使いやすいの3点で、管理するメールアドレスが2000以下程度、というところでツールを選定することにします。なお、これからツールを選ばれる場合は、すべて「クラウド型」のツールを選んでください。個人のPCに設置するようなものはもう中小企業では選ぶのはやめておきましょう。

候補その1はBenchMarkMailというサービスです。月250通までは無料。メールアドレス1000までは月額2800円で使用できます。詳しくは公式webサイトを見てください。廉価であること、海外製なのですが日本語のメニューがきちんとあり、使い方のガイダンスのメールも日本語で時々配信されてきます。webサイトに様々な日本語の資料もあります。現在、主流になっている、PC,スマホの自動対応(レスポンシブ)もできますし、写真入りのきれいなメールを比較的簡単に作成することができます。分析機能も通常の中小企業が初期に使うようなものは十分実装されています。有料ですので、メールでの使い方の問い合わせも日本語で可能です。私の周りの中小企業では採用率が比較的高いツールです。

欠点はこの手のツールは売るだけ売ってサポートが貧弱という会社が多いので、自力で試行錯誤しなければならないという羽目に陥ることが多いのですが、webでの説明書きがあまり多くない、ということです。もっとも他製品もそれぞれそれほど多くありません。

もう一つ候補をあげておきましょう。MailChimpというサービスがあります。こちらはメールアドレス2000個までは無料で使えます。このシリーズで取り上げる中小企業の初期業務用では十分でしょう。なお、9.99ドルで5万アドレスまで使え、14.99ドルで10万アドレスまでと様々な高機能な広告機能や絞り込みや分析機能を使うことができます。コストパフォーマンスという意味では最強です。ただ、大きな問題点としては、「日本語メニューがない」「日本語問いあわせができない」という点があります。上のBenchMarkMailよりは、web上の日本語での使い方案内をしてくれている第三者サイトが多いのですが、あまり詳細な手順が書いてあるわけではありませんでして、行き詰ります…そして…今行き詰っています。

お客様にこうした製品比較(あと2製品ぐらいあります)を提出しまして、第一候補をBenchMark(私がつかったことがあるということも明記)としたのですが、お客様は英語に不自由しないし、世界展開する予定で配信自体もグローバルを予定されているお客様だったので、むしろMailChimpで無料で始めて必要に応じて有償プランにアップグレードすることが合理的でした。そのため、MailChimpを選択されたのです。提案書を出した時からそんな気はしていたのですが…今、MailChimpを試行錯誤しながら設定してテスト作成しています。幸いと言うべきか…弊社の別のお客様がMailChimpを長年使っておられまして、その運用をインターンの大学生が熟知しているということがわかり、何がわからないかがわかるぐらいに熟練すれば時間をもらって教わろうと思っています。こういう先達に教われる環境があればなんとかできるかもしれませんが、そうでなければおすすめしません。お勧めしない理由はもう一つありまして、この「無料プラン」は一つ欠点があります。会社ごとにユーザー登録が1名しかできないのです。そのため、複数名でログインして作業を分担するとか、見ながら相談するということがとてもやりづらいのです。9.99ドルにアップグレードすれば3人ログインできるようになりますので、これは改善できますが、「無料」だけに飛びついて選ぶと、当初は苦労しますし、それ以上に、担当者が交代したときに、新しい担当者が習熟しないまま実務にあたって事故を起こす、ということが起きがちです。

今回、英語と格闘しながら作業をしていて、時々起こって話題になる「メール誤配信事故―先日は採用応募者に誤って内定通知を送ってしまうという惨事が有名企業で発生しましたが―は、こうした「メニューの言葉がよくわからない(英語でも日本語でも)」ことが大きな原因になっているのではないか?と思いながら作業をしています。

なお、操作方法はここでは解説しません。私が下手に説明するより、詳しいwebサイトがあるので、そちらを検索して見てみてください。

どんな内容をいつ送るのか?

一番大事なのは、この話です。そして、一番難しい。

多くのメールでの情報配信、あるいは類似するものとしてはブログ配信などがなぜ三日坊主になってしまうのか?それは担当者が怠惰だからなのか?というと…1年で200以上も中小企業の経営をテーマに記事を投稿している私のような人が偏執的なのであって、普通の人は本業をしながらそんなことはできません。文章化する能力というのは、結構希少です。そんな人をメール配信専用に採用することも中小企業ではできませんし、そういう人は稼げませんのでお荷物になります。そこは責任を個人に帰結するのではなく、全社での「仕組み」が必要なのです。

具体的には、①同じコンテンツを何度も使う。②コンテンツを作ること自体は各現場に割り振る。③文章量を減らす。の3つです。

同じコンテンツを何度も使う

これは一番効果があります。そして、メール配信の内容が常に最新情報である必要はない、ということに注目する必要があります。具体的には、よく使われる方法は購読開始したあと1か月程度で5回程度の導入案内(使い方に困っていませんか?こんなポイントがあります。こんなことを注意するとよいです。等)の案内を個別に送る、というものです。こうした一人一人の申込日に応じた配信の自動化、ということができるのはこうしたツールを使う大きなメリットです。

また、同じ内容をしばらくログインしていない人に向けてや、年に1回程度社内の新担当者にご紹介いただく用、等と切り口を変えて一斉配信にも使っていけばよいのです。つまり、ブロック(パーツ)ごとに、再利用を前提にコンテンツを設計し、10~20個を事前に計画的に整備してから始め、組み合わせを変えながら再利用する部品と、改良する部品、新規作成する部品に分ければよいのです。多くの人が関心があることや行き詰まることはそれだけ再利用してよいはずの内容です。

コンテンツ作成を各現場にお願いする。

「目的」(②)で記載したように、この情報提供でやるべきことはいくつかに限定されています。そのうち、一つは上のような「使いこなしの障害の除去」でした。これは、こちらが想定している「マニュアルの説明」に近い部分は製品開発時やサポート体制の構築時に基本的内容を構築できます。その同じ内容を使えばよいのです。これらはメール配信することによりサポート部門の負荷を軽減する、あるいはこれは歓迎すべきことであるのですが、初歩的な躓きの質疑応答を減少させ、より実践的な箇所へ不明点を持ち上げるという効果が期待できるものであり、サポート部門で積極的に取り組むべきことです。同様に、多発する「躓き箇所」はサポート部門が一番よくわかっていますので、そこを事前に除去する内容を月に2個程度記事化してもらえばよいのです。そして、その記事をブログ的にwebサイトに掲載している会社はたくさんありますが、それは相手から検索して見に来てくれることを多く期待できるものではないため、こちらからメールでプッシュしてあげるのです。

同様に、「競合製品に比べて優れている、今後の機能開発が期待できる」という部分は、クラウドサービスの場合は、新規の機能追加のご紹介や開発中機能、あるいは開発室の風景などを紹介したり、開発者のインタビュー形式にしたり、という形でこれも月に1本程度お願いするとよいでしょう。開発部門に月に一度の開発状況の報告をさせていると思いますが、それをつまらないWord形式報告書ではなく、期待を持ってもらえるような記事として報告しなさい、それも開発者顔出し、画面写真付きで、と指示するわけです。これは開発部にとってはユーザーへの責任感を醸成し、ユーザーが求める機能を提供しているかという視点を持たせるにも役立ちます。

営業部には、実施使っていただいているユーザーを訪問し、インタビューさせていただくとよいでしょう。それはメールコミュニケーションよりもより本質的なCRMです。そこで課題を指摘されることも大変ありがたいことですし、そうしてインタビューに応じていただけるお客様はファンになっていただける可能性があるお客様であり、これはメルマガのためではなく、営業部の本質的な仕事です。

このように、「本来やるべきこと」を「お客様に定期的に届ける」という視点で再編成し、各部から募れば、多くの会社で発生している「編集担当の女子社員が一人で苦しむ」という状況を回避できます。そして、その内容自体を月一の経営会議の報告事項にすれば、義務付けは容易です。

言葉に頼らない

文章を書きなれない人に書け、といっても一生完成しません。子供の作文のような文章を、いい歳したおっさん、お姉さんが書いてきます。筆が進まないのは、仕方がありません。多くの人は小学校以降そういう訓練をしておらず、進歩していないどころか退化していて、それを自分で知っていて隠したがっているからです。それを無理強いすると、結果誰かが全部書き直す負担をすることになります。その「口ほどにもない文章力を隠したい」ことが続かない大きな理由です。

幸い、最近では写真をスマホで簡単に取れますし、それを今回ご紹介したツール類では簡単に埋め込むことができます。そして、一番大事なことは…「誰も長い文章を読まない」ということです。皆読書をしているかのようなふりをしますが、現代社会において、大多数の人は長い論理性を持つ文書を読んで理解して行動に反映するということができません。これも多くの人が中学高校時代をピークに衰えている能力です。このことを正しく認識することはマーケティング上とても重要なことです。皆、ワンフレーズ、感覚、印象で行動し判断しているのです。

そうなると答えは明らかです。文章をあきらめ、見出しと写真と写真の説明文で構成し、それで足りない部分だけ短い文章を補う、ということに割り切ればよいのです。実はネット上の多くの「メディア」と呼ばれるものはすでにだいぶ前からこの構成になっています。それが正解なのであって、小学校の作文の授業や高校の小論文の回答例をまねる必要はないのです。むしろ、まねずにできるだけ文字を減らしながら同じことが伝わるようにするのが正解です。実は先ほど紹介したツール群にはこうしたことを再現するための「ブロック」(パーツ)のひな型やサンプルがたくさん含まれています。(ただし、無償プランでは使えるパターンが限定されています。)

とはいっても意味を伝えながら文字を減らす、ということは実はとても難しくてこれを言い出すとまた完成しなくなってしまうのです。私はそういう会社さんに言いたい。「二流なんだから二流レベルでいいです。それでも何もやらないよりはるかによいでしょう」そして、「難しいことをたらたら書くより、かっこいい部長が生き生きと話している様子、若い女性がツールを使って活躍しているかのような様子の写真」を乗せたり、有名会社が使っている、使ったらすごく時間が節約になった、売り上げが上がった、というフレーズの方がはるかに役に立つ」のです。

と文章に頼るな、という長い内容の文章を書いてしまったところで今回はこのくらいにしたいと思います。

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