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うまい話に騙されないには…

私は時々「なんでも否定的だ」という批判を受けることがあります。

たしかに、自分のことであっても、他社のことであっても外部から持ち込まれた話は一見してダメ、検討の価値なしというのが9割、キチンと検討するのが1割というところです。

さらに検討したうえで、本当に実施しよう、あるいは実施をお薦めするのはさらにそのホンの一部であり、検討対象になったものの多くは、「条件が満たされたときに再度検討」という結論になるものが多くあります。実際、「うまい話は十個に一個」と私自身自分に言い聞かせながら検討しているのも事実であり、非常に多くの案件、商材のご紹介をいただくのですが、あまりお役に立てていないのはそういう私の行動パターンに理由があるのだと思います。

そのかわり、大きな財務的、あるいは経営的な失敗、騙されるというようなことはほぼありません。また、自分で決めたことが全く収穫がない、ということもありません。(一定期間後に十分な成果が得られず撤退することはそれでもそれなりにあるのですが)

 

先週、お世話になっていた先輩の中小企業経営者にランチに誘っていただき、ある大きな会社の新設の子会社への出資の提案を受けているということでその案内を見せていただきました。その提案は、「出資をすると代理店の権利をもらえる」というものと、「将来はIPOによる上場益が手に入るよう目指している(もちろん約束しているものではない)」、というものでした。該当のビジネスは資本が相当規模で必要なビジネスであり、代理店としては、うまくいけば(という前提ですが)継続的にそこそこの収益が得られる、というものでした。出資額もかなりの規模でしたが、私は2分程度で、「私はお勧めしません」と言明しました。私が先輩にお話しした内容の骨子は次のようなものです。

 

一つ目の疑問点は、「なぜあなたのところに出資依頼が来るのか?あなたのところに第一番目にその提案が来たと思いますか?」「その大きな会社はとっておきの案件を最優先で比較的小規模な代理店候補であるあなたに提案してくれたのか?」ということです。

おそらくはそうではなく、より大きな業務上の提携の相手か資本力のあるところー大きな業界関連企業や金融関係ーに最初に相談したはずであり、そことは利回りや上場可能性、ガバナンスや議決権の観点で折り合えなくて、次善の策として代理店候補に提案してきた、と考えるとどうでしょうか?自分たちよりもはるかに分析力の高い組織が手を引いた案件は、財務的、あるいは関係会社投資という観点で魅力的と言えるでしょうか?財務的な要求水準は会社によって確かに相違します。昨今は株主価値の追求という観点から利回り要求が高くなる傾向にあり、そうした「投資慣れ」している会社は強敵です。そこで、そうではない会社が提案対象になっているのではないだろうか、と思ったのです。確かに代理店が出資すれば、その代理店が積極的に稼働し獲得する動機付けにはなるでしょうが、出資という観点で見ると、多数の会社が出資する形態では自社の議決権や発言力も限られます。資金集めにうまく利用されている、と一回疑ってみてはどうですか?ということです。

 

もう一つは、そのビジネスが今後発展性があるかどうか、という観点で見たときにその市場はすでに新規参入者にとっての競争環境が失われており、未収リスクや原料調達価格の高騰、あるいはボラリティ(価格変動の幅)の増加などに比べて収益が逓減し、これらへの対応含めて顧客管理コストが大きくなりがちである、という認識が私にはあったのですが、その方は、(「私の見方は偏見があり正しくない」と自分自身で状況分析して反論しているならば、それでよいのですが)「そこまでよく知らないので、提案書に書いてある内容を信じていた」ということでした。出資の提案書とはそういうものです。テレビのCMと同じで出資者がお金を出さなくなるような理由は書いてありません。そこから先の市場性や技術等は記載内容含めて、自分で正誤も含めて調査と検討が必要なことです。そして、上の仮説が正しいとしたとき、その提案を受けた大企業はこれから述べるような市場性や収益性の分析をして、そして断ったはずです。

 

考えてもみてください。なぜ、その分野のトップランナーでもないし、相手にとって大恩人でもないあなたに、そんなおいしい話が提供される理由がないのではありませんか?むしろ情報にあまり詳しくなく、お金があり、無思考従属的なところがあると思われているからその話を持ってこられているのではありませんか?また、提案してくる相手は、もちろん「あなたのために」というわけですが、本当にそうでしょうか?たしかに出資者にとってもメリットがないと提案はできませんが、実際には、自分たちが、あまり分析的ではない発言力の小さい(うるさくない)、お金だけ出してくれる出資者が欲しかったり、リターンの要求が大資本ほど厳しくないことが必要(つまり収益性に自信がない)だったり、たとえば実は直接の出資検討先の親会社等にもなんらかの(たとえば規模の拡大による費用逓減など)メリットがあるが、それは言っていなかったり、という「相手の都合」もあるのではないでしょうか?

 

実は、この話を書こうと思ったのは、昨年の秋口以降別の中小企業の社長2社にも、それぞれその人の専門外の投資案件が持ち込まれていて私に相談がありました。私は今回と同じような返答をしたにもかかわらず2社とも最初はそこに踏み込んでしまったのですが比較的早期に「やっぱりやめた」という結論を出してそのあと私に、「やっぱり入ってみたら君の言う通りだった」と連絡をくださっていた経緯があるからです。

 

私はその分野が「新規参入組が獲得できる市場があるか」、ということをまず第一に考えます。どの市場もないわけではありませんが、それがかなり難易度が増している(市場が成熟期に入っている)市場というのはあります。まずそれを考えます。さらに市場の一部のセグメントに特化して強みを発揮することができるかどうかも考えてみます。この時点で「実はもうこの商品、日本じゃダメなんじゃないの?」という結論がすでに市場の大勢になっているような案件が中小企業に持ってこられることが実に多い。

その会社をよく知っている方からのその会社の強みが収益化に必要な内容の提案であるならばまず可能性があります。しかし、そうではないようなものもかなり見受けられます。こういう仕事をしていると、世の中、ホント他人を利用して儲けよう、一方的に自分のリスクを避けよう、ということがとても目立つことに厭世感を覚えさえします。私はその持ち込む人が詐欺師なのではないか、と企業と個人を調査することすら提案したことがあります。

 

そして、その市場性があった場合でも、その市場を獲得するための成功要素が何で、その会社でそれを現在具備しているか、あるいは短期に具備することができるのか?ということを考えます。それが、全部満たされるようなことは滅多にないのですが、「大部分は何とかなり一部は不足している」、という状況であるならば、「その一部を私が方法を協力して補うことで何とかなるかもしれない」、とご説明するし、そうではないならば、「新しいことをやって混乱するばかりでおいしくない可能性が高い」、ということを言います。多くの場合、今の本業の技術か顧客のどちらかと親和性が高くない限り、今いる社員は今ある業務でほとんどめいっぱいで社長に既存業務をやめる勇気がない以上、難易度は高いと考えます。

そうやって、「勝ち筋が見えている」案件ですら、実際やってみるとうまくいかない(今度は自社のオペレーションの巧拙が原因になってくる)ものも多い、というのが新規事業の実情だと思うのですが、どうも非常に楽観的、というかいわれるがままの判断をする経営者が多くて気になります。

 

このような参入時の成功可能性を分析する考え方自体は、大企業で新規事業の検討と立ち上げをやってきた方にとっては実に自然な分析だと思いますし、自社が提案された理由の表と裏を考えて全体像を把握することは大企業で資本調達を自分でやったことのある人にとっては気がつく話です。しかし、中小企業の経営者の多くはそういう経験はありません。物を売り買いしたことはあっても事業を売り買いするのはその数倍難しいし、アドバイザーもいないケースがほとんどです。そして、大きな傷を負うケースが相次いでいます。あるいは、そのような話を耳にするあまり逆に、外部からの事業拡張の話を一切受け付けない、というような経営者の方もおられます。

 

こうした「セカンドオピニオン」的な簡単な検討ならば、2,3日で終えて報告できます。社内にこうしたことを得意とする方がおられないならば、一人で悩んでいないで外部の見解を聞く機会を設けた方が安全だと思います。

 

ただし、

私のように100個に数個しか踏み込まない、というような慎重派は人の数十倍、そのような案件を自分でも考えないといけませんし、情報も集めなければなりません。そうしないと、「何もしない」ことになってしまいます。それもまた、「座して死を待つ」だけの愚策です。そのためのより良い情報網を常時稼働させ、素早い検討と相手への率直だが丁寧な回答の習慣を持つことこそが、一番の失敗の防止策であり、同時に案件収集のポイントだと思っています。

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