ブログ

SDGsは中小企業のチャンスとなるのか?

先週、SDGsのセミナーに出席してきました。

SDGsとは、「持続可能な開発のためのゴール」の略で、国連において2015年に採択された各国、および企業が参加して実現する「未来の社会のあるべき姿」を定めたものです。日本では、2016年に内閣総理大臣を本部長とするSDGs本部が設置され、昨年12月には、SDGsアクションプラン2019が公表されました。公的なものですので、リンクを掲載します。http://www.kantei.go.jp/jp/singi/sdgs/pdf/actionplan2019.pdf

実は、この中には冒頭部に、「大企業や業界団体だけでなく中小企業に対してもSDGsの取り組みを強化」、あるいは「 『中小企業ビジネス支援事業』を通じた途上国におけるSDGsビジネスの支援」など、中小企業がこれに積極的に関わることを要求する文言が入っています。時代のキーワード「SDGs」とはいったい何なのでしょうか?

 

SDGsは大きく分けて17の「ターゲット」があります。代表的なものは、貧困、飢餓、福祉、教育、ジェンダー平等などの社会的問題、環境やエネルギー、雇用、強靭なインフラ、都市環境などであり、従来の「環境問題への取り組み」というような特定のジャンルではなく、この先、日本と世界はどのような社会を実現していくのか?を考えたときの「社会問題」を整理する枠組みでもあります。逆にいうと、あらゆる社会問題、そしてそれに取り組む「政策」の多くは何等かの形でそのSDGsの17のゴール、169のターゲットに紐づくものです。そのため、「予算化」を大変説明しやすい「大義名分」でもあるというメリットが官僚側にはあります。

このSDGsは2017年には、大企業の加盟する経団連の「企業行動憲章」にも、第10章において「SDGsに積極的に取り組んでいく」ことが明記されており、これに伴い日本を代表する大企業では何等かの取り組みを開始しなければならない状況となっています。そのせいもあり、先日のセミナーも大企業のCSR関連部門の方と思しき方々がたくさん集まり熱心にスライドを撮影したりメモを取ったりされていました。

 

ちなみに類似のものとしてSociety5.0というものがあります。これも内閣府が中心となってまとめ、経団連の憲章にも記載されているものなのですが、内閣府の説明によると、こう書いてあります。

サイバー空間(仮想空間)とフィジカル空間(現実空間)を高度に融合させたシステムにより、経済発展と社会的課題の解決を両立する、人間中心の社会(Society)

狩猟社会(Society 1.0)、農耕社会(Society 2.0)、工業社会(Society 3.0)、情報社会(Society 4.0)に続く、新たな社会を指すもので、第5期科学技術基本計画において我が国が目指すべき未来社会の姿として初めて提唱されました。

これだけだとよくわからないのですが、説明文を読んでいくと、大事なことはいつも最後の方に書いてあり、「技術の革新により経済発展と社会的課題の解決を両立する」というキーワードが現れます。

 

私がこのセミナーに出席した動機は、SDGsがビジネスになるのか?ということの考えを整理するためです。これは、私の経営アドバイザーとしての仕事になるか、ということではなく、私がお話しさせていただくことのある中小企業にとって、これは実感として役に立つものとなるのであろうか?ということです。はっきりいうと、私はあまりCSRとか、社会貢献とかには興味がありません。社員の働き甲斐や満足感につながっているケースはあまりないし、私が今中心的に取り組んでいる「中小企業の持続可能性の向上」には、足かせであるからです。大企業の方には申し訳ないが、中小企業には、CSRどころか、広報もIRもないところがほとんどであり、収益の安定化と人材の確保に必死であり、私はその同志でありたいと思っています。

そのうえで、SDGsに取り組むことがこれを改善することにつながるならば、考えていきたいしお話ししていきたいと思うのです。つまり、「営業部にとって必要な話」であるべきだ、と思うのです。

 

私の今の考えから申しますと、中小企業にとって、

・現在の国内、あるいは海外への販売や技術提供という部分がこのSDGsのどれかの動きに該当している、とみなすこと、そしてそれをきちんとみえるようにしてアピールするようにすることができる企業は中小企業でもあると思います。SDGsの内容はそれほど広範であり、「自分たちも何等かの関係があること」なのです。しかし、それをやったところで売上にプラスになるのか?というと、現時点ではそれは時期尚早でしょう。SDGsに取り組んでいる会社だから売り上げが伸びるとか、評判が上がるとかいう状況にはまだ、日本は程遠い。

しかし、より重要なのは次の点です。

・今後のビジネスモデルの移行を示唆するものである可能性が高いと思います。すべてのビジネスモデルは陳腐化が急速に早まっており、数年後にも今のビジネスモデルが通用している可能性は低い、ということは中小企業の経営者の方は日頃から実感していると思います。では、どのようなビジネスモデルが次に来るのか?という時、社会全体の流れる方向性は、このような「社会問題解決」にあることはおおむねコンセンサスがあることです。今のビジネスモデルでは、後発、下請として苦汁をなめている会社であっても、その「風向きが変わるとき」にはレースの先頭に出るチャンスが来ます。そして、そうした変化は、目に見える形で徐々に進むのではなく、ある時急速に加速するように見える形で進みます。その変化をとらえること、そして、少しづつでも備えること、できれば先んじることは、このSDGs「ブーム」をフォローすることでできる可能性があります。

もう一つ、これはあちこちで最近よく聞くようになったキーワードなのですが、

・「社会問題解決型のビジネス」が今後の5年程度の収益拡大の柱となる、ということです。そのような大上段に構えた取り組みは中小企業単体では正直難しいことではありますが、自らの技術や商品をどこに提供することが収益の拡大の可能性が高まるのか?ということを常に考える時、この動きをとらえることは多分プラスになると思います。

 

以上の3点ぐらいが、中小企業の営業面で現時点で理解し、今後のニュースや業界情報においてチェックすべき点であると思っています。過去にも「環境」「海外進出」など様々なキーワードが経営者には突きつけられ、一部の企業にとっては飛躍の機会となりましたが、日常に追われる中小企業の多くにとっては、(それは致し方なかった、ということも思いますが)手を付けられなかったし、自分事ではなかっただろうと思います。しかし、今になってみると、そうした「ブーム」は実際には、「社会・市場の変化」だったわけで、後れを取ったことが決してプラスではなかったはずです。その時点では、中小企業にえんとおい「きれいごと」だったように見えて、実は、「時代の変化の方向性」だったのです。

今回のSDGsは非常に広範な内容を含むものであり、何が起きるか、というと「人にやさしい世界になる」というような言葉になってしまうのですが、「企業も社会問題の解決に参加する」ということ自体は、多少の試行錯誤を繰り返しながらもやがて大きな流れになっていくと思います。特に人口、税収が縮小する日本ではその動きは強まると思います。私自身もそのような、中小企業にとっての「実需」の観点から引き続きフォローし、発信していきたいと思っています。

 

 

関連記事

  1. 売れる人 売れない人
  2. 結局人が動くのは自分の損得のためだから―オペレーショナルエクセレ…
  3. ジョブ型雇用を準備する⑥結局私たちはどこへ向かっているのか?
  4. 本当にありがとうございました(の歳末大放出)
  5. 中小企業の「リモートワーク」
  6. ジョブ型雇用を準備する③部門と職務を定義する
  7. 「作業を改善する」対象や方法はどうやって見つけるのか?-オペレー…
  8. 「根性だけが取り柄」を解く
PAGE TOP