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中国で労働契約を終了すると起きるトンデモナイことアレコレ

7月から続けてきたこのシリーズも数えたら20以上ありました。ネタの宝庫なんですが、そのネタも当時は当事者として大変でした。今日もそんな話題から、中国で社員を解雇したときに何が起きるか?というあれこれをご紹介します。汚いアイキャッチ写真ですいません。そのわけは最初に紹介するトピックでわかります。

 

2008年に労働契約法が施行されかなり厳しくなったのですが、それでも中国では労働契約を経済補償金を支払うことで解除可能です。これは期間の定めがある契約が終了したタイミングでも必要です。言い方は悪いですが、「お金で解決できる」部分が日本よりもかなり大きいのです。もちろん、そんなことしなくて済めばよいのですが、需要も変化しますし、人も年とともに勤勉さも能力も変わります。たとえばCADオペレーターの場合、30歳を過ぎると明らかに品質が落ちました。知識・経験を生かして検査工程で生かせないか?と思うのですが、残酷なもので検査工程でも20歳過ぎがピークで歳とともに劣化していくという統計が明らかでした。変動部分があると言っても、もちろん最低賃金以上の基本給は存在しますので、生産性を維持するためには下位者の入れ替えはせざるをえない中で、結構な数~数百~の契約終了措置をしてきました。

多くの工員の場合、なんの感慨もなく、月末になると荷物をまとめて寮から退去するだけなのですが、それでも年に何件かは事件が起きます。

 

■ある副総経理の場合

このシリーズによく出てくる副総経理は作業部門のリーダーで私の業務を赴任中終始支えてくれた方なのですが、実は副総経理は途中までもう一人、ソフト開発部門にもいました。もともと私はこのグループ会社でソフト開発業務の日本と中国のブリッジ業務を行っていたので、この副総経理とは大変懇意でした。しかし、日本側の「ソフト開発を親会社でも子会社でも廃止する」という意向で彼の契約を終了せざるを得なくなりました。もちろん、他の社員は誰も目上であり、会社創設時からの功労者であり、党の立場も高くて博士号を持つ彼に手を付けられませんので、私が彼と対峙せざるをえません。3か月がかりでトンデモナイ額の経済補償金を払って彼にやめてもらいました。私はドラマ仕立てでいうと「かつての盟友で政治的バックボーンのある副社長を解雇する社長」というわけです。中国赴任中の最も気の重い仕事の一つでした。

経緯はともかく、その日がやってきて彼は去りました、挨拶もなく。そして、あとに残されたのは・・・私は大部屋でしたが、二人の副総経理には個室がありました。その部屋中に散らかった書類ごみ、その他生ごみ。引き抜かれて曲げられた机の引き出し。使えなくなった鍵(鍵はもともと退去後交換するつもりでしたが)

最初は不満の表現かと思いましたが、中国ではやめるときにこんなことがよくあるらしい。そういえば、引っ越すときも日本人の多くは部屋をきれいに掃除して退去しますが、中国では全く逆でして、部屋中にごみが散らかった状態で退去し、次に入居する人が人を雇って片付けるということがよくあります。立つ鳥跡を濁さず、は日本だけです。そもそも「清掃」は大卒の仕事ではない、という文化でもありますし。

唖然とする私をよそに、秘書さんが清掃工2名(社内に3名雇用していた)を読んできて片づけを指示し、「総経理、気にしちゃだめです、いきましょっ」と言ってくれるのですが、自分の犯した罪の重さをかみしめるように、清掃工と一緒にしばらくごみを袋詰めしていました。私がそういう人だということも彼はわかっていたと思います。

その後、彼はカナダにわたり大きな通信会社の開発部門に勤めたと聞きました。

 

■妊娠検査薬

女性の妊娠期間、産休期間、産後一年は会社からの契約の終了はできません。この辺の保護策は中国はとても厳しく、もちろん遵守していました。ところがこれを悪用して、時々、自分が契約終了対象だと判明すると、「私は妊娠しています」と主張する人が現れます。(契約終了を申し入れるぐらいですので、成績は下位です。)実際、若い女性が多い職場で、妊娠されている方はたくさんいるので、その可能性がないわけでもありません。そのため、妊娠が分かると中国でも「母子手帳」的なものが配布されるので、「診断書かその手帳を持ってきてください」と人事部長が伝えます。本当だったら撤回しないといけないからです。で、中国でも妊娠検査薬は市販されているので、それを尿をかけた形跡のあるものを私の部屋に押し入ってきて「反応がでてきます」と私に突き出すんです。人事部長もそれを見て慌てて押しとどめて、「今日は出勤扱いにしますので、病院で診察を受けてきてください」といい、「どこがいいとかわからなかったら、近くの東湖医院(地域の結構立派な公立病院)に行ってください。」と丁寧だけど冷たくいうのです。

こういう主張は全部嘘です。

優秀な人は普段から勉強して経理や英語の資格をとって、機会をみて自分から辞めていくのですが、そうではない人は勉強もしないで、放り出されるとしがみつこうとして怒り出す、というのは日本でも似たようなものですが、皮肉なものです。

 

■自分はもっとすごい

なぜか終了、解除を通知すると、結構な数「総経理と直接話したい」と言われます。私が鉄の意志の持ち主で一度決めたことは法律違反でもない限り変えない、ということは知っているのに。役職者だった方のそういう要望には対応していました。この時、何通りかに分かれます。一つは、「ありがとうございました。」と丁寧にお礼を言うタイプ。日本では美徳とされますが、中国でもそういう価値観の人は2,3割ぐらいいます。そんなお別れの仕方をしたあと転職して羽毛布団の販売を始めて売り込みに来てくれた人もいました。<買わざるを得ませんでした。>

困るのは、泣きじゃくるタイプ。「子供が小さく、うちが貧乏で・・・」本当に申し訳ないと思うが、成績順に統一ルールで措置しないと、1部門200人の部門は回らない。そして言質を取られぬよう「成績判断」という理由以外の詳細説明やましてや自分の誤りととられるような謝罪はできないのです。これが3割ぐらい

残りの3割ぐらいで多いのが、なぜかこの期に及んで自分はすごい能力があり、すごい人脈があると主張し、私の判断が間違っている、という人。生産現場の生産性、品質の指標は過去1年分すべて手元にある。それ以外の能力はもちろん計測していないが、管理者として抜擢すべきかどうかは人格面含めて各部が推薦し面談して決めている。「そんなにすごい人ならば、うちで作業員にとどまっていないで、発展する中国でビジネスマンとして、立身出世の道を歩んだ方が、ご自身にも国家にもよい!今後の発展を応援する(補償金払うし)」とこのケースは言っていました。日本だと、「一本取られた」という顔をしそうですが、中国の場合、多くの中国人の若者は、親親戚から「あなたはすごい、素晴らしい」と自己肯定感高く育ててもらってきている(小皇帝という言い方を一時期はされていました)ので、こういうケースは本人たちは心から自分をそう思っているので、さらに興奮して自分のすごさを主張して、疲れたころに帰っていただくのです。でも、1時間以上は主張し続けますね。「あの日本人に言ってやったぜ」と自尊心が満たされるのをお地蔵さんのように待つだけです。

 

■金庫の鍵があかない

現場の縮小に伴って、管理部門も20名を超えていた体制を縮小せざるを得ませんでした。各部部長にばかり痛みを感じさせるわけにもいかない。赴任して最初に私の運転手を解雇し車を売却したときも、運転手が車は自分のものだという無理な主張をして大変でした。警備員、清掃工、寮母と縮小し、やがて、総務部も縮小し3名中2名を原因し、最後に経理部を1名減員したのです。ただの経理業務だけなら食堂を外注化したり、その他の業務をアウトソーシングし月次の請求に変えたりしたことで実は業務はかなり減っていて、人事と兼任でよくなっていて、その資格を持つそこそこ優秀な人が人事部にいたのです。財務部は暇で対象者も(実は部長も)日中居眠りして他の管理部門の人員から疎んじられていたということもあり、断行を決断するに至りました。

財務部長には事前に相談し、了解をもらったのですが(この財務部長は社内で一番給料が高かった)、本人の反発がひどく、伝えたとたんに会社に来なくなり、金庫が開かなくなりました。ほんとうかどうかはわからないのですが、本人は「神経症」の診断書を会社に出し、解雇はできない(これはそういう法律がある)と言い、大きな会社の幹部だった旦那さんが会社に来られることになりました。この時は私は控室におり、財務部長が対処してくれたのですが、最初はどんなもめごとになるかとひやひやしていたのですが、聞く限り、旦那さんも奥さんのヒステリーと怠け癖には困っているようでした。その「奥さんのヒステリーにはかなわん」という点でなぜか意気投合してくれて、鍵を回収して事なきを得たのですが、その教訓から、私が予備鍵と開け方のメモを保管するようにしました。

 

ほかにもいろいろな事件がありました。

本当は、「契約解除通知」なんて私もしたくはありません。こんなことを毎日続けていると心が硬直してくるのを毎日感じていました。しかし、中国の生産組織が生産性と低コストをなぜ継続的に維持できるのか?という観点から見たときに、このような仕組みを運用することと成果給の割合が大きい制度設計により、生産性が低いのに、大きなコストがかかる部門、個人が見つかったときにそれを会社として短期間に改善できるからである、というのは紛れもない事実です。特に日本のように賃金の下方硬直性の高い組織では、新陳代謝なくして、コストパフォーマンスの維持ができない部分を感じます。いやな仕事でした、という通り一遍の感想とは別に、「組織の活力の継続的維持」という点ではこの経験は重要な知見であったとも思っています。

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