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中国の年末年始は

週に1回お届けしている中国ビジネス内情ですが、今回は、別にとんでもなくありません。年末ということで、中国、深センの1月1日前後の様子を少しご紹介します。

よく知られている通り、中国をはじめ多くのアジアの国は、「旧正月(春節)」を盛大に祝います。テレビでよく見る中国の民族大移動でターミナルが夜のうちから人で埋め尽くされる光景が起きるのはこの時。それでは1月1日はどうしているか?というと、中国でも1月1日は国定の休日(この辺が一貫性がない)のため、12月31日まで普通に仕事をして、1月1日だけ休み、2日からまた普通に仕事です。そして、12月31日には、「新年快楽!」(良いお年を!)とお別れの挨拶をし、1月2日には、「新年好!」(新年おめでとう!)と挨拶するのは、一見普通のようでいて、3,4週間後の春節の前後にもこの挨拶が繰り返されます。休みが多ければ、理由は何でもよいのは日本でも中国でも同じです。

ただ、新年の飾りつけやイベントは旧正月の方に集中していますので、1月1日は本当に普通のお休みです。テレビも春節前は日本の紅白歌合戦にあたる歌番組があり、春節中は特集番組が多いのですが、1月1日の方は普通の番組をやっています。ちなみに、この中国の大晦日の歌番組は、視聴率が30%ぐらいあります。つまり4億人が見る、ということは・・・ここでのCMの費用はとてつもない金額(30秒で7億円以上とも)となっています。

飾りつけと言えば、このページの写真のさかさまに「福」の字が張っているのが見えると思います。最近は日本でもこれを見かけるようになりましたが、文字を正しい上下で張っている人が日本でいますが、これはさかさまに張るのが正解です。スーパーに行くとこの飾りが12月下旬からたくさん売られています。もっともメインは1月1日ではなく、春節に向けてですが。この逆さに張るのは、「倒福(だおふー)」と「到福<福が到来する。」が同じ発音であることにかけているからです。この手の同音に掛けた縁起担ぎというのは中国ではたくさんあります。たとえば、中国の最も大事な国宝の一つに「ガラスでできた白菜」があるのですが(現在、台湾の故宮博物館にあります。)、これは音が「百才」と同じだから。「魚」と「余」が同じ音なので、魚が正月(春節)の縁起ものです。同じ音でも、表意文字を持つ文化ならではであり、日本人にも何となくわかる文化感です。

私が総経理をしていた会社は日本の仕事しかやれなかった(現地での自主的営業をさせてもらえなかった)ため、12月29日~1月4日ぐらいは仕事があまりありませんでした。その間は手持無沙汰なのですが、社員は歩合給の割合が大きいですので満タンに仕事をこなしたがっています。楽でいいですね、というわけにはいかないのです。こういう現地法人運営は本当に困っていて、スポット業務だけでも現地で営業して受けたい、と思ったのはこれも理由の一つでした。日系企業の従業員の給与が上げにくいのは、年功的制度の問題のほかに、こうした稼働率を無駄に下げることを当然視する日本側の理解のなさ、というのもあります。

また、中国では法律の定めによりすべての企業が12月31日が決算日です。IFRSでは、グループ会社は国をまたいでも決算期を統一することを求めていますが、中国だけは無理です。そのため、年末になると管理部門では経費の精算漏れがないか呼びかけたり、先行して伝票入力をしたりして、1月2日から全力で決算に当たります。この辺の様子については以前のこちらの記事にも記載しました。経理部だけは大忙しなのですが、他の部門は、きたるべく春節に向けてむしろだらけていく時期でもあります。

12月31日の業務を終えて、決算に向けて速報を誰もいない日本の親会社にメールして、一年のお礼と業績のあらまし、それに新年の抱負の挨拶文を秘書さんに翻訳してもらっておいて、それを中国人幹部社員にメールで送って、警備員さんと無駄話をして帰ると、NHKの国際放送で紅白歌合戦が始まります。(時差が一時間ありますので)私は、5年の赴任中、夏に3回、東京に帰国しただけ(帰国費用も会社から年1回が上限でしたので)で、決算期のこの時期は帰国せずに毎年中国で決算作業をして過ごしていました。日本にいるときは、紅白なんて馬鹿にしていたのですが、外国に暮らすと、基本NHKしか見れませんので、朝ドラも大河も、紅白もすべてが貴重ですし、なんだか感動します。「日本人」「日本」をこんな時に強く意識します。

ブーゲンビリアの花

この時期、10月後半~2月ぐらいまでは深センは乾季でして、まったく雨が降りません。亜熱帯と言いつつとてもカラリとしたさわやかな気候が続きブーゲンビリアの花が町中を彩ります。しかし、意外に寒く、最低気温が時に10度を下回ります。日本で、「大陸から冷たい空気が張り出してきて」と天気予報で言っている時がこれにあたり、NHKの国際放送を見ながら、「日本とつながっているんだなあ」と変な感想を妻と言い合っていました。深センでは、冷房はどの建物も乗り物も完備していますが、暖房はほとんどありません。そのため、この時期に外食に行くと店の中でもジャンパーを着ながら飲み食いするような状況ですし、ビールを飲んだりするととても寒い思いをします。そういう時は火鍋です。日本では真っ赤に煮えたぎった地獄絵図のような辛い物が有名ですが、あれは四川や湖南の名物で、広東省では中国人も他地方の出身者は「あれは異常に辛い」と思っていて、白湯ベースのものや最近では日本から逆輸入された豆乳ベースものも人気です。

お隣の香港では、イギリス領だった時代の名残で、西暦のお正月もそれなりの重みがあり、大みそかにはビクトリア湾で花火が打ち上げられ、半島側のメイン通りのネーザンロードでパレードが行われます。2000年問題で日本がやきもきしている2000年の1月1日は実は香港で迎えたのですが、深センとも東京とも全然違う華やかさに圧倒されました。もっとも、最近では、春節期に中国側から大量に買い物客が来てくれるので、香港の商業エリアも春節時期にイベントの比重を移しています。

飾りつけの色合いは中国の方が派手ですし、しめ縄など神道的な要素は日本独特のものですが、それでも中国でも日本でも、「魔をふり払う」そして、「縁起がいいように、と祈る」という新年を迎える気持ちは同じです。忙しいさなかでも、挨拶の中にそんなことが感じられるのが中国の12月31日の夕方の景色でした。

ビクトリア湾の新年の花火

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