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街で田舎で 中国の春節の風景

前回(こちら)は、中国現地法人の春節前後の仕事の様子を中心にご紹介しました。今日、2月4日はその春節の前の「大晦日」、中国語では「春晩」と言います。日本の紅白歌合戦にあたる歌番組が人気なのですが、こちらも若い人の趣味の多様化で徐々に視聴率が下がり気味というニュースが毎年流れるのまで日本と同じです。「餃子」は中国では水餃子を差す言葉です。(日本の焼き餃子は広東の飲茶で「煎餃子」と頼むとあるお店もあります。)日本の水餃子は、中華料理店では野菜と一緒に色のきれいなスープに入っていることが多いですが、中国ではただ単にお湯で茹でただけなのが普通です。この暖かい餃子やいつもより少し豪華なお料理を一族みんなで囲みながらテレビの歌番組を見る、というのがこの日の中国の家族の風景です。日本と似てますよね。ちなみにCCTV(中国国営放送)はたくさんチャンネルがあるのですが、主ないくつかのチャンネルは全部この歌番組になります。

0時頃にはあちこちで爆竹(多くのエリアで本当は禁止なんですが)が鳴り、日本の数倍の規模で各都市で花火が打ちあがります。昔は中国の花火は単純なものが大量に上がるだけだったのですが、最近は日本の方法を取り入れたのか演出にも工夫を凝らした立派な作品が増えてきて、その上予算がふんだん(単価が安い)ですので、いずれ日本から「春節花火見物」ツアーができるのではないかと思うような仕上がりになっている都市が増えてきています。(もっとも最近では花火よりもドローンでの演出が流行ってきています。)

◆深センは

この時期、最低気温は10度近くまで下がり、からりとしたいいお天気が続きます。亜熱帯の深センはこの時期は乾季なのです。ブーゲンビリア(このページの写真がその花です)の花が町中に咲き、日中は暖かな、日本で言う小春日和の中でのお正月です。スーパーはその数週間前から通路いっぱいに特設コーナーが設けられ、田舎にもって帰る「都会のお菓子」(普通の袋菓子です)がそれほど安くもない価格で山積みされているのですが、それがみるみるうちに山が崩されていきます。この消費の旺盛さを目の当たりにすると中国という国の内需の大きさを実感します。他にもナッツ類やおつまみ類。それにお酒類が大量に入荷し、そして大晦日には店がスカスカになるほどに売れます。こういうイベント時には中国の人は、見栄を張る、と言いますか出し惜しみしないんです。

やがて大みそかも午後になると深センの街は車の通りもめっきり減り、とても静かになります。これは上海や広州とは全然違うところです。上海や広州には、「地元の人」がそれなりの数いるのですが、深センはほとんどが「地方から上京した人」なのです。何せ80年代にはこの街は人口数万人の漁村だったものが1300万人まで膨張したので、まだまだ「地元育ち」が少ないのです。ちなみにその「地元の戸籍」はとても貴重で会社や党に従い貢献した人への恩賞として年に1%ぐらいづつ与えられるものです。

そうはいっても、スーパーや大型ショッピングセンターは営業しています。ただ、来客はあまり多くはありません。店員も少なめでひっそりとしています。ちなみにバーゲンシーズンは春節前に集中しています。バスも電車も動いているのですが、そこには映像ディスプレイがあって、新年の歌や獅子舞の映像が流されていて、前回のタイトルの「新年来~新年来♪」というのもこの時の歌の歌詞です。大きなスーパーは元旦にはたいてい獅子舞を招いてお客さんに見せます。

◆観光地は

私もこの休みを利用して、日本からの電話をしばし無視して、雲南やその他の地域に旅行に行った年もありました。しかし、中国人はみんな家で一族ゆっくりと過ごしていてねらい目の時期なのかと思いきや、そこは日本の10倍の人口を有する中国、割合的には小さくてもこの時期に観光に行く人はそれなりにいるわけでして、有名観光地はとてつもない群衆が押し寄せます。有名な石林や大理にこの時期に行ったことがあるのですが、国内旅行は中高年の団体旅行を中心にそろいのカラーのキャップにそろいのカバンで大挙して押し寄せていて、私たちのような個人旅行客がどこに割り入って進めばよいのやらわからないような状況になります。観覧コース中とにかく人・人・人。普段は静かな大理の街も立派な城壁周辺が大変な人で埋め尽くされていて、漫画「キングダム」の城壁攻めの様子そのまんまです。(これはほんと誇張ではない)

長い休みの時期は、有名観光地はどこもこんな感じでして、現地での対応力と粘り強さがないと圧倒されて何もできない、という状況になります。最近はそれが東南アジアの有名ビーチにも波及していて大変なようです。(私が2008年の労働節休暇にバリに中国から旅行に行った時も、その時点ですでに「中国人だらけ」でしたが)唯一、こうしたときに割とゆっくりできた穴場の場所があります。香港の南Y島という深センからは近場のビーチリゾートです。深センからは半日で電車とバスとフェリーで行けるので、何度か一泊旅行をした場所です。

◆元節(ユエンシアオジエ)

日本にも小正月という風習が古くはありましたが、これと同じものが中国にもあり、元宵節といいます。旧暦の1月15日ですので、春節の2週間後です。この日でお正月は終わり、という区切りの日です。「中国人は長く休む」、と言われますが、それは理解が不足しています。「春晩から元宵節までの間は家族で正月として心身の滋養の時を過ごす」、それ以外の時期は中国は歴史的に乱世や出稼ぎもあり、家族で過ごすことがままならないことが多かったため、正月は一族が集まって、お互いをいたわり、あるいは商売の情報を交換する期間を大事にするようになったという文化が根底にあるのです。

旧暦ですので、この日は満月です。そして、湯圓(ユーユエン)という白玉団子の内部にあんこが入ったものがお湯の中に入っているものを食べる風習があります。日本の小正月、お汁粉もこの文化が伝来したものだという説もあります。(日本では7日までは松の内となったのは江戸幕府の通達でその前は15日だったそうです。)

実際には、その前に都会に戻り仕事を始める人も多いのですが、この日を過ぎると街はまた元のクラクションと、怒鳴り声、埃と悪臭に溢れて、皆がお金儲けに走る姿を取り戻します。深センで働いていると、生き馬の目を抜くばかりの拝金主義と実力主義に神経をすり減らすばかりの日々ですが、春節前後の社員や街の様子を見ると、日本でも昔はそうだった「大家族主義」文化が根強くあること、そして、様々な日本の食べ物や風習が歴史的には中国の影響を強く受けてきたことを感じます。

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