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経費削減講座23 国際貨物

毎週一度のこのネタですが、メインどころはだいぶ紹介してきたので、細かな話題が多くなってきました。

今回は少しマニアックですが、今時は中小企業でも発生しうる国際貨物、それも専門に輸出入をやっているわけではない会社向けの話題をまとめてみます。(専門にやっている方には輸送チェーンのあちこちでいろいろ専門的なノウハウがありますがそれはここでは省略します。)

 

なぜ、私がこれに詳しいかというと、中国にいるときには、「毎日」数百キロの紙の原稿を日本から国際速達便で受け入れ、作業後返送する作業の会社の代表でしたので、コストと安全性、速達性のバランスをいろいろ調べていました。黄色い国際速達サービスからはしょっちゅうゴルフに誘われていましたが、一度も行ったことがありませんでした。私は受ける側で送った側ではないのですが、関連する中国の他の会社が一度だけ(それも変えてみた最初の1回で)中国国内の品質体制の確立していないサービスを使用してそのオンリーワンの紙原稿が行方不明になり、親会社がうん千万円の賠償金を支払った、というようなことにも出会いましたので、海外では事故の危険性のあるものはまず選べません。

その次の会社では、中国で制作したグッズ類を多いときはコンテナ10本分ぐらいを一度に日本に輸送し、日本の顧客の指定倉庫へ検品の上収める、という会社の財務担当役員をしていました。英語の見慣れない用語で記載があり、外貨だったり円だったり、締め日もバラバラな請求が起きてくるのを輸出入担当の女性社員に教わりながら仕組みを理解し、費用を下げることには限界があるのですが、為替リスクや通関リスクを下げる努力をしていました。そんなわけでこの関連の費用には割と詳しいのです。

 

【分量が多くて、時間に余裕があるならばコンテナ】

通常の会社が取り扱う国際貨物は多くの場合、段ボールの荷姿か封筒だと思います。石炭とか穀物とか言い出す方は(ドライバルクという専用船が使われるのですが)専門だと思いますのでここでは対象外です。その段ボールがどのくらいの数になるか、あるいはどのくらいの価格の物かで輸送手段が変わってきます。まず、段ボールで数百個~数千個になる場合は通常はコンテナに入れて船で運びます。船便の値段は航空便の10分の1以下です。船は時間がかかりますが、それでも中国沿岸部から日本の大阪、東京を経由し通関を完了し指定の倉庫まで運んでもらっても1週間あれば届きます。それが隣国中国で生産する際の生産規模に次ぐメリットでもあります。

安いだけならば東南アジアや南アジアでさらに安く作ることもできますが、生産規模と到達スピード、それに検査まで含めた生産管理体制の整備、物流網の整備度、中国日本間の輸送便と手段の豊富さ、という点では日本にとって中国ほど優れた場所はありません。余談ですが、よく中国嫌いの方が「中国生産なんてやめちまえ」みたいなことを匿名でwebに書いていますが、多くの小型製品は布にしろプラスチックにしろ、金属にしろ、中国で大規模生産しコンテナで日本に送付するようなものを同じ規模で日本で同じ期間で制作することは、たとえお金を積んだとしても不可能、時間がたっても誰も日本ではそんな設備投資や大量雇用に手を伸ばす下請けはいない、というのがまぎれもない現実です。このことは来週にも中国関連の記事で書きたいと思っています。

コンテナも1本、2本と本単位で積む場合と、船の面積をまとめて借りる場合とでは後者の方が全然安いのですが、それにはコンテナ数十本の規模が必要です。これは私も体験したことがありません。多くの方には関係ないでしょう。

ここでの安くするポイントは、納期がある問題なので安い便を選ぶ、交渉するというような余裕はありませんので、いかに全体で支払う手数料を減らすか?という点にあります。外国の通関から船積み、国内の通関から荷渡しまで荷物は様々な業者の手を介して届くのですが、素人には何が何だかわかりません。それを丸々うけてくれるような会社もあるのですが、やはりかなりの手数料を取っています。「知らないとできない」し、「一部は資格がいる」「なんだかあちこちに登録もいる」というのが依頼主の弱みです。そこをできるだけ内製化するか、あるいは普段多く使っている会社の紹介、といった方法でできるだけ抑えるのが基本になります。

また、中国国内や船の費用よりも、日本の陸送費用と保管費用の方が大きいというケースがざらにあります。国内で10トントラックを1日走らせるほうが、中国国内の輸送と海上輸送を合わせたよりもはるかに高いケースが多いので、実際には海外輸送ではなく、国内の物流をどう組むか、という方が大きな問題です。

 

【航空便にはいろいろある】

中国からだと船は1週間は少なくとも見る必要があるわけですが、そんなに待てないというケースもあります。あるいは生産が遅れてしまってクレームを避けるため大急ぎで先行して必要な一部だけでも急ぎ届けたいというようなケースも発生します。管理担当の私からすると腹立たしいことなのですが、それが現実であり、海外で生産する、ということはそういうアクシデントを力づくで都度抑え込む力量が問われる、ということです。そういう場合は、航空便を使用します。航空便にもいろいろありまして、大きく分けて通常航空貨物(関係者はエア便と通称)と国際速達便があります。

■エア便

代表的な取り扱い会社は近鉄エクスプレス、南海航空などです。こうしたところに依頼すると、多くの場合、旅客機の貨物スペースに混載する形で貨物を搭載して運んでくれます。(路線や分量により貨物専用便もあります)ただ、気を付けなくてはいけないのは、通常は、自社の営業拠点(海外の場合は提携先のこともある)から自社の営業拠点までの輸送であり、その両端は自社で手配しなければならないケースが多くあります。日本の宅配便サービスのようにドアToドアのサービスではないのです。そのため、その両端の輸送を手配、あるいはこれらの会社の紹介という形で手配するとその料金も意外に高いのです。また、時々(春節前などの繁忙期)「スペースがいっぱいで明日の便になってしまいます」といわれることが起きます。その場合は、より高い方法を採用せざるを得ないこともあります。

エア便を多く使うのは、通常は5箱以上50箱以内というところでしょう。エア便の料金は、普段からの分量により結構差があります。多く使っている会社はそうではない会社よりもずいぶん安く送付しています。したがって、一つの会社を継続して使い続ける方が有利な交渉ができます。ただし、輸出入には国内とことなり「関税」やそれ以前にコンプライアンス面での検査などが伴います。他社の荷物を個人が代行してあげる、というようなことをすると思わぬトラブルに巻き込まれることがあります。そもそもライセンスの問題もあります。「うち、安い料金持っているから一緒に送ってあげるよ」や「送って頂戴」というのは避けるべきです。

 

 

■国際速達便

FEDEX,DHLに代表されるドアTOドアで運んでくれる国際速達便。ほかにも一時期郵便局がTollを買収して競争しようとしたり、実は世界最大のUPSなどがあります。世界中に専用便を飛ばしているほか、混載便も保有し、スペースがいっぱい、ということはまず起こりません。これらも使う分量により数か月ごとに安くなる交渉が可能です。最近では一度交渉すると分量ごとに自動的に割引率が上下する通知が来る仕組みが運用されていることが多いです。気を付けなくてはならないのは、使用量が減ると半自動で割引率が下がる通知が来てしまうことです。従いまして、ポイントとしては、

1 会社をできるだけ使い分けず分量をまとめる。

2 できるだけ受取人払いは使わない。(受取人払いは計算の対象外)

ということをまず抑え、使用量のデータをもとに相見積もりをとる、ということが基本になります。ところが最終集荷時間が相違していて一番早くつくところを現場は使いたがります。「早めに準備しとけよ」と一喝したいところですが、じっと我慢して、「割引率を育てる」のが基本です。

それで4割引き、5割引きになればそれを使い続ければよいと思います。だいぶ昔の話ですが、私は最大60%引きまでやったことがあります。ところが、毎月、10万円や20万円は使うんだけど、その分量ではそこまで割引にならない、2割、3割程度という場合もあります。その場合は、上のエア便のところで記載した秘策が国際宅配便では使える場合がありますので、お問合せください。この方法も万能ではない、少し将来の価格上昇リスクのある方法ですので、ここでの詳細のご紹介は避けさせていただきます。

本当はもう少し時間をかけても良ければもっと安くする方法はあるのです。しかし、この宅配便感覚の便利さを知ってしまうとなかなかエア便には戻れません。また、コンテナ便の場合の船荷証券(B/L)など時間と書き留め機能の両方でどうしてもこの国際速達便で送らざるを得ないものもあります。

 

■基本はEMS

郵便局で取り扱いしているEMSは上の国際宅配便よりは1日か2日余計に時間がかかりますが、とても安いです。国際速達便が割引になってもEMSよりも安くなることはなかなかありません。分量がさほど多くなく、急ぎではないというケースをできるだけ増やして、EMSを中心に使う、というのが普通の会社でできる最善の努力です。EMSもドアToドアで運んでくれます。ただし、注意しなければならないのは、追跡機能は日本国内ではきちんとしていますが、海外ではまったく当てになりません。日本の感覚でいるとイライラします。そこが気になるならばやはり、高くてもすべてが一貫管理されている国際速達便の方が優れています。

 

別シリーズ「中国とんでも・・・」の番外編ですが

なお、どの方法を使用しても、送るものの価格をinvoiceで税関に報告するわけですが、この価格が100ドルを超えると関税が課されます。税関で貨物が止まる確率も格段に高まります。100ドル以下に発送を分けて速達便を利用する、というような便法も急ぐ場合には用います。私は中国赴任中、アマゾンで日本から月に何度も2,3万円単位で本を買うのですが、そのたびに深センの空港税関で止められてしまい、「説明報告書」を中国語で作成し会社からFAXする、という作業を繰り返していました。これは価格以外に「内容」のチェックもあったわけなのですが、会社だけでなく、個人でも高い送料と面倒な通関には悩まされていました。

 

■「ロストです。」

私は、たぶん1500回ぐらい、国際貨物の発着を見てきているのですが国際速達便で2回、荷物が行方不明になったことがあります。「ロスト」と言うのですが、どちらも中身が顧客からお預かりした要返却の手書き原稿だったので、冒頭に記載の賠償事件の後だったので本当に肝を冷やしました。

一度目はフィリピンはスービック(ここが某社のアジアのハブだった時期がある。)にて止まっていることが発見されました。2度目は4日ぐらい行方不明になったのち、説明もなく相手に届きました。貨物の保険は、そのものの価値価格でしかかけられません。つまり通関時に添付するinvoice(内容説明書)に記載の金額となります。紙原稿ならば紙の代金にしかなりません。逆にこれを高くしても税関で完全対象として引っかかるという問題が生じます。本来、サンプルや貸し出し品は一定範囲内は課税対象ではないという規定があるのですが、あまりに量や金額が多いと税関が不審に思い調査に入ります。そうなると荷物がたびたび止まり仕事に支障がでる。というわけで保険で損害に備える、ということは「お金に換えられないもの」を送付する場合にはできないのです。

当時はそこまでしかやれなかったのですが、事業の損害賠償を保障するタイプの保険でこれがまかなえないのか?知っている方がおられたらお教えください。商品名や問い合わせ先付で本ブログでご紹介します。

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