まだまだ続くこの「自社でできる経費削減」シリーズ。第21回は、やや大企業向けに偏った話題ですが、「IT保守費」の削減に関する話題です。
製造業や運送業では機械類や車両類の維持修繕は主要な経費ですが、それ以外の中小企業では、「保守修繕費」に上がってくるのはあまり大きなものがありません。大きな会社になるハード面では拠点間ネットワークのためのルーターやサーバー類、あるいは小売業ですとPOS類やその周辺機器、変わったところでは医療検査メーカーの高速プリンターなどがメーカーと保守契約を結んでいます。また、ソフトウエアでは自社で作りこんだ業務管理システムの保守費がやめるにやめられず、億の単位になっている某小売業の相談も受けましたし、そうでなくてもOracle,SAPなどの大型のソフトウエアの保守費が1千万円を超えている事例は普通にありました。これらの費用は、「なにかあった時のための対処費用」ですので、平常時には経営者から見ると無駄に思えてしょうがなく、「なんとかならんのか?」という指示が情報システム部に飛び、あるいは私たちもそういう相談を受けるわけです。
対処しうる方法をハードとソフトに分けて、簡単にご説明しましょう。
【ハード関連】
これらは下がります。最も現実的な方法は、保守をオンコール(障害が発生する都度、費用が発生する)契約に変更し、発生した費用を保険化をかけておいて賄う、という方法です。この方法を具体的にご説明したり営業することは保険業法の絡みで弊社のような無資格者がすることができないのですが、いくつかのケースで見た限りではかなり下がります。うまくいけば半額以下になります。ただし、古い機器にどのように対処するかですとか、すべて保険化していいのか?というと、そこは「24時間サポートを継続するべきところ」「保険化でいいところ」「保険すらいらないところ」を仕分けていくことが必要になります。これをお客様にやってもらうことは経験もないのに難しいと思いますので、SIに詳しい信頼できるパートナーをご紹介する形で仕分けたうえで効果を見極めることになります。
比較的大きく下がりやすいのは、年数がそれほど立っていないハブ、ルーター類です。これらは実は故障率が十分低いことが過去のデータから判明しており、それが保険料率には反映されているからです。その意味では、購入単価に比例的に決まる傾向のある保守費よりも、保険料の方が実コストを反映している、という言い方もできます。
この方法は、お客様からは「本当にメーカーが対応してくれるのか?」という心配をされます。そんな契約形態がある、ということすら、ほとんどの情報システム担当は知らないはずです。当然です。メーカーの営業は説明したくないからです、毎年定額もらえる契約の方がいいに決まっていますから。でも、ほとんどの機器であるんです。ちゃんと修理してくれないほどには、日本のメーカーは劣化していません。そういうところも、「知っていると知らないとでは大違い」です。
ある大きなホームセンター会社さんは数百台あるPOSの保守契約をすべて都度保守にしていました。そして、一定以上溜まるまで代替機対応をしていました。大きなホームセンターなので、一店舗にたくさんのPOSがあるので、1台2台壊れても店舗運営が止まるわけではない、という割り切りで、社長の強い指導力でこうされていました。この会社は保険化もしていません。保険会社が保険で利益がだせる、ということは保険化しないで都度保守、都度費用払いの方がさらに安い(ただし、費用水準が読めず、突発的に大きくなるリスクはある)わけですし、POSの修理費用なんて高々知れている、という見極めがあるのです。
ただ、この方法を一店舗に1台しかPOSがない飲食店におすすめするほど私も怖いものしらずではありません。
【ソフト関連】
ソフトウエア保守には私もOracleで悩まされた経験があります。購入の稟議も大変なのに、年間保守費がその2,3割発生する…誰も経営陣は理解してくれないし、必要性も説明が困難です。
アメリカには大手ソフトウエアのサードパーティ保守がある、ということは知っていましたが最近までこの分野には日本では有効な方法がありませんでした。それが1年ほど前、アメリカ最大手の「リミニストリート」が日本に進出し、状況が変わりつつあります。日本ではまだまだ知られていませんが、こうしたサービスが皆さんに知られて比較検討されることは、買い手の情報量を増やし、価格を適正化する上でとても大事なことだと思っています。Oracle.SAP,SalesForce,SQLServerなどを多数ご利用の方は一度ご検討になることをお勧めします。
※弊社はアフィリエイトは行っていませんが、こうしたまだ知られていない良質なサービスについては、リンク付きでご紹介しています。
【どっちかわからないもの!】
そんなものがあるの?と言われるかもしれませんが、私がわからないのではなく、ソフトとハードとコールセンターサポートとの内訳が区別がつかないし、数量も記載がないような契約を超大手SI業者に1億円以上の金額で結ばされている大手小売業者の相談を受けたことがあります。そもそも店舗のPOSが特殊なものでがちがちに開発しているため、これらを維持する限り、この契約を強制させられているようでした。その会社では何度も交渉に挑んでいるのですが、そのたびに相手の役員が自社の役員に面会を求めて手打ちが行われる、ということが繰り返され、現場の苦闘は水の泡になっているようでした。
実はこの会社、これとは別にPOSに用いられているハードウエアとその通信回りの機器は個別の保守契約が締結されているのですが、その水準はそこそこお安い状況で、上の記載のハードウエアの保守費削減手法を用いても数百万円程度の効果しか得られそうにありませんでした。このSIerは我々のようなところが入ることを想定して、比較検証されるところは単価を妥当な水準に設定し、そうではないところで儲けているわけです。
こうしたものに対しては、長い時間をかけて少しづつでも、個別の単価に落としていくしかないわけですが、それならばそんなに高い保守費が必要な十年以上運用されている仕組みを維持し続けるのか?から見直す方が適当だということにもなります。こうしたことに取り組む仕組みもご提案したのですが、結局はSierとの上層部のつながりもあり対処は行えなかった、ということもありました。
この例からもわかるように、最初の契約の際にできるだけ、機器単位、店舗単位に落とせるものは落として契約するべきですし、コールセンター業務はコールセンター業務で別に切り離しておくべきです。それがうまいこと絡めとられてしまった、という事例なのでしょう。