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プロジェクトマネジメントの技術ってなに?

長く経営管理の仕事をしてきましたが、学校以外で勉強してとても役に立ったものというのがいくつかあります。具体的には、A.クリティカルシンキング B.交渉学 C.プロジェクトマネジメントの3つが代表的です。いずれもアメリカで学問として体系化されたビジネス系の知識体系です。Bの交渉学については以前、さわりをご紹介したので、今日はCのプロジェクトマネジメントについて簡単にご紹介したいと思います。

【プロジェクトマネジメントの必要性】

そもそも「プロジェクト」というのは、その言葉自体に「有期性がある」、つまり、始まりと終了がある、通常は1回限りのものという定義があります。そのため、マニュアルがあって、それに従って実施すればよいという日常業務と異なり、何が起きるか誰もわからない、というものです。そして、その「初めてのもの」であるがゆえに、機械にやらせることが難しく、通常は人がやらなければなりません。そして、人はまた能力、体調、気分などいろいろな不確実性を含んだ存在です。

 プロジェクトマネジメントは建設、システム開発などでコスト超過プロジェクトの発生を抑制するという点ではとても重要です。最近も三菱グループの造船部門で大型豪華客船の建造にあたって当初見込みを大幅に超える費用と期間がかかって、事業が存亡の危機に立たされています。似たような大型豪華客船を普段からたくさん作っているならば知見も生かせたのでしょうが、三菱グループの力をもってしても大型客船の経験を有するエンジニアは社内にほとんどおらず、手探りの部分が多かったようです。同じ三菱グループで国産旅客機MRJのプロジェクトも大幅に立ち上がりが遅れていて技術的優位性が競合他社にキャッチアップされる危険性が高まっています。

日本を代表する企業の優秀な人たちでもこれです。そんな人のことを言わなくても、皆さんの周りにもいつまでも終わらないプロジェクト、なんだか初期の目標の完成品に至らなかったり、大幅に費用が超過したり、というプロジェクトはたくさんあるのではないでしょうか?システム開発部門では、いつまでも終わらない開発業務を「デスマーチ(死の行進)」と呼びます。

 

【プロジェクトマネジメントの知識体系 PMBOK】

実はプロジェクトマネジメントには、ある程度の「定式化」された流儀が存在しています。この知識と基本的手法を知って運用演習しているかどうかで対応力は大きく相違します。それがPMBOK(Project Management Body Of Knowledgeの略)です。この中には、いろいろな知識があるのですが、基本的には、(アメリカで生まれた経営管理手法はそのパターンが多いのですが)計画段階、遂行段階、評価段階という形でいくつかに分け、その各段階でやるべきことを定めています。また、遂行段階においても、できるだけ作業を小さなプロセスに分割し、そのプロセス単位で品質とコスト、スケジュールを各部分で管理していくこととします。

また、リスクについてもあらかじめ想定されるリスクに対して、発生確率と被害の大きさに合わせて、事前対策を行っておくべきか発生時対処とするかを仕分けておく、というようなものです。日本人はなんでもリスクに事前に対処したがる傾向がありますが、実は、発生時の被害がさほど大きくないものや発生確率が低いものは、「発生時に対処」すると決めておくことが合理的なのです。

 

こうした知識は本にもありますし、外部の講習などもあります。私も実は30歳のころ、大手SI会社のPMP(Project Manegement Professional)研修にお願いして会社にウン十万円出してもらって研修に行きました。年商20億円の会社では外部研修を活用すること自体、銀行系の新人ビジネスマナー研修以外では初めてのことで、当時の部長には大変感謝しています。

もちろん、知っていればそれですぐ当てはめて解決できる、というようなものではなく、実務に当たって発生する事業に、これらの知識を適用する洞察力は必要になりますので、これらを勉強したら問題が誰でも解決できるか、というとそういうわけではありません。

 

【変える力】

私は、システムや建設の関係企業でなくても、経営に携わる人はプロジェクトマネジメントを学ぶ必要性は高いと思っています。それは、経営の多くの業務は、ルーチーンではなく、プロジェクトだからです。経営とは毎年予算書を作ってそれの実績との乖離をチェックして、という仕事ではなく、「どこか目指すところを決めて、そこへ社員とお客さんを連れていく」ものであり、そのための変化を起こし、それを完了させるプロジェクトマネジメントだと思うのです。

私は、中期計画をお客様とお話するときも、全体を分割してそれを順に順序だてて組み合わせていくPERT的な表現をよく使います。そしてクリティカルパスの管理を強化します。また、資源をどこに配分するべきなのか(クリティカルパスに重点配分してバッファを設けるのが常套手段)や、リスクの事前の評価と対策のコンセンサスという部分でも多くのケースで役に立っています。

最近国内のMBA系講座でも、クリティカルシンキングは多く取り上げられていますが、プロジェクトマネジメントについても、会社マネジメントという視点からもっと取り上げられていくとよいと思っています。

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