小売業でロードサイド店に勤務していると、多くの業種で正月お年玉セールが終わって2月いっぱい、それに、7月25日にはおわってしまうボーナス商戦後の9月初旬までの2月、8月は客足が落ちます。もちろん、スキーやキャンプ用品を扱っていればその辺がピークになるのでしょうが、そういう「季節商品」はさらに難易度が高く、適当に手を出してよいものではありません。
この「ニッパチ」「夏枯れ冬枯れ」は、昨今のEC事業でも同様のようで、7月下旬からはアクセス数が低下してきます。特に今年は、昨年3月の新型コロナウイルスによる巣籠り需要の急増が息切れしてきている業種が多くなってきています。(一部に以前需要が旺盛な業種もあります)
そうなると人通りがないところで大売出しをしても売れないのは、リアル店でもネット店でも同じことで、無駄金を使わないよう販促策を適度に制御しつつ、イベントや休日での露出を工夫することが重要になります。
しかしながら、売れ行きが落ちるからと言って、店を開けない訳には行かないし、店を開ければ多少はお買い上げいただくお客様がおられるのも、リアル店もネット店も同じことです。昔、家電店の店員だったころ、台風で一日店内に流入してくる水の掻き出しをしていた日の出来事はこちらでもご紹介しました。
ありがたいはありがたいのですが、売り場に人員は貼りつけざるを得ないし、物流は動かさざるを得ません。そのため、この時期の営業利益率はどうしても落ちてしまいます。これはEC店でも同じでして、「商品のお問合せ」などの件数は受注件数に比例して減るのですが、受注データの処理、送り状の印刷、ピッキングと梱包の人員の準備は大半を即日出荷するためには結局同じだけ用意せざるをえません。件数が少ないからと言って、一日置きというわけにはなかなかいかないので、この時期の収益が悪化します。困ったものです。
もちろん、多少余裕があるこの時期だからこそできることもあります。現場でそれを率先してやってくれている人もいますが、弱点補強の良い機会として、具体的指示をすることも経営者として必要なことでしょう。
もう25年以上も前の話ですが、小売業にいるときは、8月だけはまとまって事業グループ内で時間が取れ、しかもお盆中はメーカーの担当営業さんからの電話や訪問も減るので、年末商戦(12月)の対策と翌期(2月決算だったのですが)の事業計画を集中して立てる期間に当てていました。ここぐらいしか、複数人でじっくり時間を取れるタイミングがなかったのですが、その時の部長の真剣さと部屋の涼しさが病みつきになり、それ以来、私個人は、「お盆中は事業計画を考える時間」という習慣がついてしまいました。
売り場も、自分たちでできる配置変更をしてお客様の動きを見たり、POPを工夫するコンテストをしたり、と空いた時間を「質の改善」に当てるようにしていました。
これをEC事業に置き換えて考えるならば、普段は、「アクセス増、クリック率増」を必死で追いかけるのですが、こうした時期には、転換率を改善する施策をじっくり取り組んでみることができる、と言えばよいのでしょう。もちろん、普段からガンガン両方やれればよいのですが、限られた時間の中では、どうしても後回しになりがちです。サムネイル画像一つを改善し、文章を追記し、説明動画を用意し、あるいは競合商品の説明を調べ…と手間のかかる作業をできるのは、少し余裕のできるこの時期ならではです。そして、そうしたことを改善する「仕組み」を作ったり改善するためにはまとまった時間が必要になり、それはこの時期が最適なのです。
9月になれば、また目まぐるしい日々が続きます。いまだからこそできることをやりましょう。
そして、交代ででも数日間のお休みを取る人も多いでしょう。その中で、会社として何を求めるか?だけでなく、社員一人一人が市場で価値が認められる存在になるために何を学び、何を成果としていくのか?も考えて欲しいものです。別にレポートりなんかいりません。問題意識を頭の中にぼんやりと掲げながら、モノを見たり読んだりするだけで、ものの見方ややるべきことを気づくことはたくさんあります。社員は皆、仕事の中に問題意識や自分の能力の改善の必要性を内心感じているものですが、日常に流されてしまっています。それを振り返るには、こうした時期が一番よいのです。
そのために必要なのは、「宿題を出す」ことではありません。経営者自身が、どう考えているかをきちんと論理だてて表明し、意見やポストへの応募を募るだけで、一定の反応期間後に望ましい反応は起ります。