取引先の商品について、同じ提供会社内のAさんとBさんでは言う事が違う。という事が最近起きた。どちらも、同じ社内の担当者Cさんから説明を聞いて私に伝えているのだが、結論は全く逆になっていた。
あるITソリューションについて、Aさんは、「自社はコンポーネントの販売だけで、SI部分はお客様側SIerが行う想定でいます」と言い、Bさんは、「社内に業務適用支援の実績もあるし、外部パートナーだが実績のあるSIerもいるので、全部受けられる」と私に説明した。職位はBさんの方がだいぶ上である。
Cさんにはお会いしていない(名前は存じている)ので真相は分からないのだが、実はこういうことは企業の中では良く起きている。同じ情報に対して、「それならばやれる」と受け止める人と、それだと難しいとしり込みする人がいるし、同じ人でも心理的な状態によって伝え方が変わるケースもある。Cさんが、AさんのITリテラシーの乏しさを踏まえた上で、「顧客側のIT化リソースによる仕組みにしないと危険」と判断し、伝えたという可能性もある。
確かめる方法はただ一つ、Cさんにお会いして自分で確認することである。Bさんにご相談して、お会いすることにした。
経営者が判断する時に、正しい情報が十分に集まっていることは決して期待できず、情報が不足する中で判断をしなければならないことは日常茶飯事である。しかし、その不足状況の中で、こうした「誤った情報」が含まれていると、他の情報から、その誤りを補正することができない。そのため、誤った判断に直結しがちである。今回も結構重要な方針決定のための情報であったので、かなり危険であった。用がなくてもあちこちのネットワークに情報を仕入れて回る私個人の習性がたまたま役に立ったのだが、それが正解とも思えないし、今回に関しては、偉そうに言う事でもなくて、偶然・幸運だっただけで、業務の仕組みとしてやっていたリスクマネジメントでは全然ない。
どうしたらこういう判断の危険性を下げることができるのだろう?あるいは、誤っている可能性のある情報を確認するような動作をルールづける方法はないものだろうか?
今回のことで改めて実感したのは、「事実」が個人のフィルタを通して、様々に脚色されることがあり、その傾向は、抑うつ状況や、責任回避的な姿勢、あるいは数字に対する積極性など、「個人の性質」に強く依存しているということである。
社内の人間ならば、日ごろから言動を見知っているだけに、この傾向を理解し、一見分かったように聞いているが、実は内心では、「確認が必要」と気づくこともできるが、社外の方でもそれをやろうと思うと、少ない機会を生かして、その人の性質や傾向を見抜く必要がある。そう思ってみてみると、確かに、そうした「脚色の傾向」はあるのである。
もう一つは、経営者ともなると、担当者だけでなく、上司、相手の幹部とも会っているので、「これはこういうことですね」と議事録を後でメールで、他の関係者もCCに入れて送るという対策が考えられる。
ただし、部下の商談の議事録をきちんとチェックして訂正してくれる上司というのもそんなに多くないのが実情であるが、相手の会社の経営幹部であるならば、話は少しはましだろうと思う。これは今回、できていなかった点である。
20世紀のように、ビジネスが比較的ゆっくり進む時代には、危ない点を洗い出してダブルチェックして…という事が出来たし、そういう役員に仕えたこともあるが、今の時代、それも常在戦場状態の中小企業経営者では、その「じっくり対応」はもうできない。
常に人間対人間のリスクを意識しながら、その場で注意し、迅速に自分で議事録を相手の第三者にチェックしてもらうぐらいしかないのではないかと今回の件で考えた。