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事業再構築補助金第一次を終えて…(いや、まだだった!)

 4月30日で事業再構築補助金の一次募集が締め切られました。と30日に原稿を用意していたら、なんと昼頃になって5月7日まで延長されました。びっくりしました。gBizIDサーバーがアクセスできない、という事なんですが、心当たりがあります。その辺も本記事で紹介しています。

 なお、二次募集は5月10日受付開始で7月上旬締め切り予定です。弊社は、「経営革新等支援機関」ではありませんで、これをお持ちの法人様のお手伝いをしたり、これとは別にご相談を受けたり…と都合6件ほど関わらせていただいたのですが、いくつか気づいた点があり、今後の参考になればと思い整理しておくことにします。

1 申請作業自体について

①ローカルベンチマークはあらかじめ入力しておこう

 ここ数年経産省がプッシュしていたローカルベンチマークでの過去3決算期のデータ入力が必須となっています。ただし、せっかくデータ入力させるのに、これをPDFで印刷してファイル添付するという、日本的可笑しさ…
 これが慣れないと以外に工数がかかり、最後に大慌てという事例がありました。

 ローカルベンチマーク自体は、今後も補助金助成金で活用されるという道筋が見えたので、前もって時間があるときに準備しておくとよいでしょう。また、このうち、BI機能(分析評価)は今回は提出が求められていませんが、そこも「世間では(銀行や取引先は)こういう目で見ているんだ」と参考になります。

②申請書15ページ以外に申請事項を入力する欄がたくさんある。

 これも直前になって大変だった、と皆さん言われました。申請書(15ページ以内自由書式)を添付して、会社の住所と代表名を入れれば終わり、というわけではなく、申請補助金額の内訳など詳細な情報をたくさん入力しなければなりません。そういう根気のいる作業ですし、時間がかかります。私にはなかったのですが、その段階で質問を受けた、ヘルプを求められた支援者の方もいらっしゃいました。事前に何か別ファイルで準備しておいて、アップロードできれば便利なのですが、そういうことはできません。

 4月30日になってgBiz IDサーバーがアクセス障害があり、それが理由(口実)となり7日まで申請が延長されたのですが、これも、「一人が延々長時間ログインし続ける」という異様な状況をサーバーが想定していなかったところに最終日で申請が集中したからではないかな?と疑っています。とにかく、この作業、半日かかります。

 締め切り日に慌てるような準備の仕方だと、この国のことですから、次回もまた同じことが起きますよ。

2 申請内容について

①自然志向

 これは私だけかもしれません。私には一切そういう嗜好はないし、そういう仲間がいるわけではないのですが、「自然を生かす」「自然の中で」「日本の風景」ということを詠う申請が多くありました。確かに申請要件には、「地域へどのように貢献していくか?」というテーマがあるのですが、申請者は皆、都会でバリバリ実績をあげてきた方たちばかり。ただ、アウトドアが趣味ということもあるようで、「いつか本当はこういうことをやりたいと心の中で思っていた」ということが表れていました。
 これは全然ダメなことではなく、そういう経営者の意思、もっと言えば「好き」が事業の原動力であることは大事なことだと思います。そして、経営者がひそかに温めてきた夢を聞かせていただくのは、私も楽しかったです。

②ビジネスモデル全体を見るという点は弱い案が多い。

 経営者の方が詳しい、あるいは一生懸命考え続けてきたであろう「サービス本体」あるいは、「コアスキル」の部分は、ご説明を聞いて感心することが多く、私も大変勉強になりました。(そのためにいろいろな方のお話を聞いているようなものです)
 ただ、受付をどうする、課金をどうする、あるいは、顧客管理とメンテナンスをどうする、というような、実際のサービスを作るうえでは費用や工数の過半を占めるような部分については、考慮が不足しているケースが多くみられました。

 これは、いきなり立派な課金システムや会員の管理システムを作れ、と言っているのではありません。最初の数百人までは「やるべきこと」をEXCELとメールでつないで実現してかまいません。ただ、必要なのは、「一か所だけではなく、全体の中でどこが課金(キャッシュ)ポイントになるのか?」や「顧客の生涯価値をどう高めるか?」のアイデアが、全体構想にとても大事であるということです。また、そういう視点を具備した事業計画はまた、採択の可能性が高まるであろうし、補助金額を大きくしやすいということでもあります。

③維持費や顧客獲得方法には甘さがある。

 これも気になったのですが…事業計画で「お金をもらえる」設備関係にはここぞとばかりにいろいろな機器名を書き連ねるのですが、実際には、それらの機器には、保守修繕や更新費用も掛かりますし、ビジネスモデル全体としても、サーバー維持費やwebサイトやシステムの改修改善などに継続して出費が続きます。そんなことは、自分の今の事業で嫌というほどわかっているはずなのに、新しく作った事業計画の収支案ではすっかり抜けています。工夫の使用はあるのでしょうが、初期費の2割ぐらいは、なんだかんだと毎年かかってくるケースが多いと思いますし、そのくらいかけられる事業計画にしないと、いざ実行すると赤字ということになります。つまり、初期の計画段階での必要単価や顧客数の算定があまくなってしまうのです。

 同様のことは、顧客を獲得するための広告宣伝費についても言えます。多くの方が、「適当にGoogle広告やSNS広告を回すつもり」というような説明をされていました。
 多くの事業には、自社にとっては新規事業でもすでに多くの競合がいます。その中で新規事業の命運をそんなあてにならない、競合他社も、自社よりお金をかけてやることにかけてもよいものだろうか?と私は多くの事例で感じました。

 幸いにも、多くの事例では、サービスを提供する際に、「埋めるべき枠」(たとえば、空室数や配達数)は、小規模事業者であれば、高々知れた数-一日にすれば、数件~数十件、半径にすれば、300メートル5000世帯など)-にすぎません。それに対しては、SNSではなく、キーマンとのリレーションから掘り起こして、年間枠の5%程度を埋めてくれる人を10人確保することができれば、それだけで稼働率は50%になります。そして、稼働率50%付近を試算分岐点とする事業計画にしておけば、そこから先は、黒字となります。そういうべたな営業手法の方が、スモールローカルなビジネスでは「固い」のです。
 その初期の安定化のための顧客の獲得手法という点では甘い案が多かったように思います。

 逆に言えば、初期の顧客の獲得にかかるコストをあまりに小さく見積もり過ぎているケースが多いように思います。これはweb広告でやるにせよ、人的リレーションで獲得するにせよ、相当の先行投資を覚悟してやるべきことであり、その視点が弱い事例が多かったように思います。

 最初の一年については、獲得した顧客からの売上の半分近くを獲得コストに投下するような視点で組み立ててみないと、「勝算」は立たないように思います。そして、それを実行するには、「顧客の生涯価値」、つまり継続性という観点からサービスを組み立てることがとても大事です。

というわけで、私もずいぶん勉強になりましたが、なかなかの大変さでした。これから申請の方は、力のある法人をご紹介し、そこに私も参加する形を取らせていただきたいと思います。



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