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10月改正!電子帳簿保存の今とこれから

経理担当以外の方は、最近ではスマホでの経費精算アプリでの電子申請が多く用いられることから、経理でも電子データで全てを行っていると思っておられるかもしれません。なんでスマホに撮影しているのに、改めて領収書を経理に送る話になっているのかも疑問でしょうし、面倒なやつらと思っておられることでしょう。

経理、と言いますかこの場合は、税務署が関係してくるのですが、実は電子データで全てを行う、ということにはいまだに非常に大きな制約があります。これは1円単位で正しい数値をきちんと集計することや、不正を許さない、というために保守的な制度にならざるを得ないという伝統的な会計や税務の考え方(そして、実務の現場では実際にそうした間違いがたくさん起きていること)が背景にあります。

電子帳簿保存(請求書や領収書、会計帳簿類などの紙はチェックした後廃棄してしまうという意味)には、事前にこうしたことを電子でもエラーがないような制度を整備の上、税務署への届け出が必要なのですが、そういう弊社もその「面倒ごと」を全部乗り越えることができませんで、届け出していません。というわけで私の過去の領収書つづりはこんな感じになっております。

これ実物です。2年ちょっとで1000枚ほど。拡大するとわかりますが、駐輪場の料金とたまに喫茶店で人にあった費用と、その他もろもろ…2020年分(左)はちゃんと見えるんですが、2019年分(右)は消えてきているではないですか!2018年分(一番左の青いファイル)は見なかったことにしておきましょう。これらは所得税法の定めで決算後7年ちゃんと保管することが義務付けされていますが、これではコピーをとらないと、これを登録したマネーフォワードに保管してある写真を「参考資料」として税務検査に出さないといけなくなります。(紙があくまでも「正」です。)小売店側もコストと印字速度(私は複写ドットインパクトだった小売店をPOS入れ替えの際にサーマルに入れ替えて、速度アップを実現したことが20年以上前にあります)の観点から感熱紙にサーマルプリンタというところを基本にせざるを得ませんので、この「7年問題」は実は大きな問題なのではないかと思います。

ここで電子帳簿保存法の細かな説明をしても経営者の皆さんにはあまり役立たないと思うので、法律自体の説明は省きますが、あちこちの経費精算クラウドサービスが最近になって勝機到来とばかりに10月の改正の宣伝をし始めていますので、そこの解説記事を見ていただければよいかと思います。

大雑把に言いますっと「電子データがきちんと鮮明であること」や「登録がただしいこと」を第三者が定期的に検査する体制を整えて、検査記録を残して、それでやっと、会社として検査後に紙を廃棄できる、という制度になっています。しかも、その保管するデータが「改ざんできないようタイムスタンプをシステムで付与する」必要があり、しかもそれを発生から「3日以内」に行う義務があるというルールになっています。3日以内って、私のようにちゃんと整理するのが仕事のような人なら別ですが、普通の会社の営業や経営者にこれは無理ですよね。3か月遅れても平気で提出してくるような人がざらにいるのに…

しかもこのタイムスタンプ機能はたいていの経費精算クラウドサービスではオプションです。追加料金対象です。

「クラウド経費精算」でコスト低減は本当か?

こういうわけで、経理に領収書を提出するとか請求書を紙でもらって、綴ってパイプファイルに綴じておくということは結局多くの会社でやめることができていません。先ほど、「経費精算クラウドサービスの解説記事を読んでください」、と振ったのは実は伏線があります。そこの「経理が大幅に省力化できる」は信じてはいけません。

経費精算クラウドサービスは、「経理ではなく、各自が基礎情報を入力してもらうことで、経理の工数を減らす(それは手間が現場に移っているだけ)」ことにつながるはず…ということで導入するのですが、実際やってみますと、そうは問屋がおろしません。各自に入力させると、不思議なくらいかなりの率で金額は間違っています。経理実務をやると人間が悪気もないし不注意というわけでもなくても普通にいろいろ間違える存在であることを実感できます。電子帳簿保存法では、領収書を廃棄する前に画像が正しく記録されていて記帳も正しいことを第三者が確認することを求める仕組みがあるのですが、経理の現場を知るものからすると、これは当然の要求です。

これに消費税率(食品類軽減税率の入力や、外資系企業の課税処理の区分)の入力ですとか、日付の間違い(支払った日を入力してほしいのに、清算申請日を入れる)とか、会食相手をきちんと明記しておらず却下差し戻すとか、そういうことをしていると結局は会社全体として経理は省力化されたのか?という観点ではたぶん大してかわっていないのではないと思います。

OCRで金額や日付や店舗名(電話番号から検索)も自動入力してくれるという売り文句もありますが、金額は何か所も書いてあるものを正確に読むことはまれですし、電話番号検索のヒット率は私の場合は、1割程度で、喫茶店ですら、2割行きません。

クラウド清算システムの宣伝で「大変省力化できました」と言いますが、あれは経理部門での入力文字数が減っているということを言っているのであれば正しいですが、全社での総入力量という意味では大して変わっていないか、むしろ精度低下やスマホで入力する手間の分だけ増えている可能性が高いと思います。

省力化を妨げているのは、システムではなく、ルールである

一体、何が省力化を阻んでいるのでしょう?それは、「入力システム」の問題ではないのです。

この場合で言えば、「社員が自分の財布やカードからお金を出す=立替」ということを止めさせない経営の在り方に問題があるのです。多くの中小企業の月次の経理業務の作業量や時間、あるいは精度の問題のかなりの部分は、この「立替払い」にあります。そして、私が見る限り、「立替払いの多い会社はたいていコスト意識が甘い」です。

実は今回10月からの電子帳簿保存法の改正では、ここの部分での変化があります。(ようやく本題)

簡単に言いますと、「クレジットカードや電子マネーの明細データ」はこれまではそれ単体では、電子帳簿保存法の対象にはならない(つまり、紙で保存が必要)ものだったのですが、それがデータとして認められるようになります。つまり、法人カードや会社用スマホや会社用スイカでの交通費決済はきちんと公私が分けられている限り、そのデータを用いて経理を行ってよいし、これを保存データとしてよいということです。

実はこれらを用いれば、現在の規定でも先ほどのクラウド系の経理システムは、自動でデータを吸い上げることができ、金額間違いや簡単な摘要は入力を省くことができます。(とはいっても摘要は結局わかるように入れ直す羽目になるのですが)、また「件数が漏れる」心配も大きく減らせます。先ほど、クラウド系でも大して省力化できない、というようなことを言いましたが、これは「立替経費精算」についてであり、こうした引き落としやカード払いについては非常に大きく省力化できます。

立替をクレカや電子マネーに変えるのは、その気になれば交通費以外は実は簡単です。そういうとモラルを心配する経営者が時々いますが、そういう経営者に限って、「立替を認める範囲」を明確化していません。個人の判断でなんでもかんでも立替払いを認める仕組みというのがまずおかしいのであって、「原則は認めない」の中で、どうしても必要なものだけを認めて、さらにそれを現金+紙領収書からクレカや電子マネーに変えていくことです。

これが多くなっていけば経理のリモートワークが可能になる部分もだいぶ増えていきます。また、現代ではリモートワークの中での支払い申請も増えていますので、実は電子マネー、クレカ払いに切り替えやすい状況が増えてきています。

交通費だけは区間を申請させないといけないので(チャージ金額を清算対象にしている会社を時々見かけますがこれは、「前払い金」ですので、経理上の「費用」ではありません。)これだけ何とかならないかと思うのですが…今の交通系カードには最大30件までしかデータが保存されないという制約があるなど、ここをすっきり解決させる方法はまだ存在していません。カードリーダーで吸いあがるから楽になるという人がいますが、その人は週に数件しか出かけない内勤の人です。毎日数件営業に行くような人は全くと言っていいほどこの方法は使い物になりません。

クレカ払いの注意点

実は、私もなんでもクレカで払う風潮には反対でした。それは、クレカ払いの明細には、単価と数量の記録が残らないため、データをためてコストダウン施策を検討する際に障害になる、というのが理由です。ただし、webでこれらのデータが閲覧、ダウンロードできるのであればそれは補えますし、最近では携帯、電気等多くのものでこれが可能になってきました。購買見直しのためのデータは別途蓄積できる、ということを確認したうえであれば、どんどんカードに変えていくべきだと思います。

電子帳簿保存法は数年おきにすこしずつ改正され、使いやすくなってきてはいるのですが、大企業の保管場所(外部倉庫費用)の問題は解決したとしても、中小企業の生産性を改善するわけではないのが実情です。しかし、今回の改正点を俯瞰してみると、電子帳簿保存を行わなくても、まだまだ社内のルールの変更で生産性をアップすることはできる箇所は残されていることを感じます。

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