前回から、オープンイノベーションの現実と対策と題して、連載しています。前回の記事はこちらで、大企業の「新規事業開発」がなぜうまくいかないのか?とその対策案を述べました。
その中で骨子にあったのが、「新規事業にチェレンジするリーダーを5年で100人育成しましょう」ということなのですが、具体的にはどんな人物が必要で、それはどうすれば得られるのでしょうか?というのが今回のテーマです。
贅沢を言うときりがありませんが、それでも、よくある、「最低限これが出来ないと困る」ということがいくつかあります。そして、それは知識で補える部分もなくはないのですが、大部分が書籍では身につかない、ある種の気質の人が実体験から得るという性質のものです。
こんな人は選んではいけない
こんなことができない人をリーダーに選任すると、選んだ側がおんぶにだっこで面倒を見されられることになります。
このように、事業家魂的なものを持っている人、とでもいえばよいのでしょうか?自分で自分の事業を何とか形にしてやろうと人の目を気にせず猪突猛進していしまうが、「社外に対して」社交的でもある人。そうでない人を選ぶと大変苦労します。
そんな人はどこにいるのか?
昔はそうでもなかったのだと思うのですが、今の大企業システムは、リスクを回避し、情報を制限し、失敗をしないことが得策、という組織になってしまっています。特にこの20年は、個人情報保護法、内部統制、コンプライアンス…と安全を重視する流れが強まってきました。これらは時代の要請でもあったわけですが、そこに日本特有の出る杭は打たれる論、異質なものを排除する体質が加わり、大企業の「内向き」「社内政治に終始」「何もしない方が安全」という体質がイノベーションを困難なものにしてしまったのだと私は考えています。
大企業は今やリーダーを輩出する、ということには向かない組織になってしまっているのです。逆に、こうしたリーダーに向いている人は、打たれないほどに飛び出て目立っているエースになっているか、大企業を辞めてチャレンジの場を自ら選んでいることが多くあります。
それでは、こうしたリーダー層はどこにいるのでしょうか?
一つは入って間もないころから特性を持つ人をピックアップして新規事業要員として育成するというバッチをつけてしまうということです。このような性質を持つ人は、適性検査でもある程度見えますし、新卒入社時にはそれなりの割合でいるものです。ただし、結婚、加齢などの要因でそうではなくなり安定志向に変化するという人もたくさんいます。
もう一つは、前回述べたようにこうしたことを専門に行う部署に投入して実地で鍛え、使えそうな人材を引き上げるということです。そして、一度目よりは二度目の方がはるかに上手にできるのですから、本人がへこたれない限り二度、三度とチャレンジさせることが必要です。それは、大組織のリーダーの選抜とはやや異なる性質が(本当は一致しているべきだとも思うのですが)あるという現実に対応する必要があるのだと考えます。
三番目は、社外でこのようなことに取り組んできた人、起業経験者や中小企業で事業全体を任された経験のある異分子を自社に取り込む、ということです。その取り込み方には、社員として取り込む、という方法のほかに、協業関係の中で取り込む、という方法もあります。というのも、大企業社員であることをさほど魅力と思わない層がこの層には多く、むしろ「対等な協業」を望むことが多くあるからです。
これらの方法を組み合わせつつ~つまり、社内で10年選手から選抜、ということはそれほど多くの期待をかけずに、それよりも若い層や社外からの登用も併用しつつ~100人の候補者を集めていく、ということが今、できる「リーダーの見つけ方」となってしまっているのだと思います。
リーダーが見つかったらどうやって立ち上げるのか?ということが次の課題になるわけですが、その辺は回を改めて述べたいと思います。やっと本題、コアコンピタンスとオープンイノベーションの話となります。