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クラウド型会計ソフトの選択基準~freeeかマネーフォワードか

会計ソフトを変えると、データの一元管理や初期設定の手間、それに移行期の両方を参照する手間などが発生するため、会社の経理部にとっては、できればやりたくない作業です。ところが、こうして管理系業務の整備という仕事をしていくと、やはりあるんですね、会計ソフトを変えたいとか、選びたい、という場面が…実際、この1年で3例のアドバイス場面がありました。そして、いろいろ比較検討し、freeeとマネーフォワードはかなりいろいろな機能を触ってみました。
ちなみにその3例とも移行後のシステムはマネーフォワードシリーズです。それは私がマネーフォワードを指示しているとか、機能が明らかに優れているから、というわけではありません。

しかし、その3社が他ではなく、マネーフォワードを選択したことには合理的な理由がありました。そして、こういう時は変えた方がよいとか、変えない方がよいとか、そういうこともだいぶわかりましたし、変える時に整えなくてはならない条件というのもわかりました。結論をいうとこの問題で考えるべきことは、「システムの機能の比較の問題」ではなく、「主に人的な運用負担」です。今回はそんなご説明です。

クラウド型会計システムの利用の是非と市場の状況

会計ソフトは10年ぐらい前までは零細企業向けでは5万~10万円、中規模企業までカバーできるものだと30~50万円ぐらいのパッケージソフトを購入し、そのうえで、税制改正などの対応のために毎年のサポート料金を払う、という形態がほとんどでした。

小規模法人向けのパッケージソフトはいくつかの雄が存在しましたが、その中でもシェアが大きかったのは、ソリマチの会計王シリーズと、弥生の販売する弥生会計という製品でした。もう少し大規模な法人向けには「勘定奉行」シリーズが有名でした。そして、日本ではこの会計システムの選択には「税理士」の推奨という非常に大きなファクターが存在しています。

実は、日本の零細企業のかなりの割合は自分で会計ソフトを使用して帳簿を入力する、ということはしておらず税理士さんに領収書と通帳コピーを渡してあとの月次、年次の決算処理を丸投げしています。これ自体は問題があることではありません。この方法でも「経理担当」がいなくても納税を中心とした合法的な経理はできますし、銀行に出す資料(決算書、試算表)もできます。しかし、だんだんとそれでは足りないことが出てきます。一番ニーズが出てくるのは、早めの月次決算による状況把握であり、特に資金繰り状況の早めの正確な把握です。税理士に任せていては通帳残高の推移以外、自分たちには状況が見えないのです。

そうなるとどこかの段階で、社内で「経理担当、経理経験者」を雇用し、自分たちで入力し、チェックと年次決算を税理士さんにお願いする、という段階に移行することになります。この時に、依頼していた税理士さんを丸投げしていた時から変えないとなると、税理士さんが対応できる推奨ソフトを選ぶ、というのが選定の大きな基準になっていました。そのため、ソリマチ(こちらももともと会計事務所だった)、弥生は協力してくれる税理士を確保する、ということを営業展開の中心において成功したのです。

そして、日本の会社には、「経理担当」が数多くいるが、その多くは、伝票の処理方法はわかるが経営、営業はわからないし、むしろ営業などやりたくもない、というちょっと人見知りな人たちが選ぶ傾向のある職種になっていました。(全員がそうとは言いませんが)

ちなみに税理士さん自身は、このようなパッケージソフトは通常使っておらず、TKC全国会などいくつかの「税理士向けのシステム」を使用しています。

その市場を大きく変えたのは、クラウド型freeeの出現でした。freeeの大変優れた点は、「経理の知識がない人でも経理処理ができる」ことを目指した点でした。このことは、今でもfreeeシリーズの大きな特徴になっており、経理の基本である、複式簿記による仕訳ということが分からなくても、一通りの入力ができる仕組みが提供されています。そもそも「経理のわかる人」を一人配置しなければならない、ということは中小企業にとっては大きな負担であり、多くの場合、経理だけでなく、総務、人事、システムまで全部兼任で一人でやっているうえ、一部の実務まで対応していることが少なくありません。そうした会社でも「自社で経理ができる」という仕組みは非常に大きな魅力でした。そして、「経理のわかる人」という職種を不要にすることが期待されましたし、その期待は一部は実現しました。

また、「クラウドサービス」自体はその前から経理分野でも各社が出し始めていましたが、中小企業の膨大なマスを狙って、月額3千円~人数、機能によっては2万円程度という価格水準はそれまでよりも大幅に安いものであり、加えてインターネットさえあれば、OS,データベース、アプリケーション等のシステム設定やバックアップさえいらない(ここは要注意で後述)、ということは「時代を変える」ものとして、市場を拡大しそして、席巻したのです。私は15年ほど前、弥生の初期設定のSQLサーバー設定で数日を費やしたことがあります。

では、今の時点でこの「クラウド経理システム」の市場がどうなっているか、というといくつかの調査を総合してみると、一位は過半数を超える圧倒的割合で「弥生」(クラウド)シリーズです。そして、後発ながら2位に最近浮上したのが、「マネーフォワード クラウド会計」シリーズ、freeeはシェアを落として3位となっています。なぜ、弥生がダントツトップなのか?というのは、機能面でダントツだからではなく、税理士ネットワークが推奨してくれたから、というのが実態だと思います。機能はどこも一通りは揃っているし、開発速度という意味ではfreee、マネーフォワードの方が早いです。

ここまで、「税理士さんが推奨」と書いてきましたが、この1年程度の体験からは、この部分も少し掘り下げて考えてみます。

私は税理士・会計士の知り合いはサッカーの試合ができるほどいますし、お付き合い先やその経営者のニーズに応じて、それぞれの特徴に優れた方をご紹介しています。この数か月、ある顧客の管理改善企画に関連してその2チーム分の税理士の方それぞれに、「freeeかマネーフォワードで自社で入力するので、アカウントを一つお渡しするので、確認してSlackをベースに指導してください」というお願いをしました。結果、「そのやり方は他にも実績があるので、大丈夫ですよ」と答えた方は約1割の3人だけでした。それよりもだいぶ多い数の方が「弥生とLINEの組み合わせならできます。」と答え、半数以上が、「やってみたら多分大丈夫だと思います(=やったことはありません。)」という回答でした。根拠のない「多分大丈夫」には私も、自分の大事な依頼主をお任せできませんので、「やったことある」3社の方にご依頼のご相談をしました。

打診した中で、一番高齢(この方、10年以上前からお世話になっていて、元税務署長さんで税務調査にめっぽう強い方なのでそれは別の価値が存在するのですが)の70代の先生は、私にこう言いました。「みんなそういう便利なソフトができて、自分でできるようになっていくんだよ。時代の流れだよ。それでチェックだけしてって言われて単価が下がるのも時代だよ。」そして、「チェックだけっていうのも君には協力するよ。こっちはこっちでフロッピー(!?)でもらってきたデータを自分たちのシステムに入れなおすんだけど(先ほどの税理士向けシステム)」…

税理士は税務申請の適正性の相談相手、もう少し広げて実態としては中小企業の会計の専門家であり、経営、システム、マーケティングの専門家ではないわけですが、それを割り引いても、世間の変化する速度に対して、古い住処に、ちと安住しすぎではありませんか?そして、経理の知識と対応力に乏しく、自分たちのことを0から説明し理解してもらうことが大変な企業側も、税理士を変えてしまう勇気を持てずに税理士の推奨に従う以外の選択肢を見いだせないので、弥生がシェア過半という結果になってしまった、というのが実情でしょう。

それでも、あなたの会社が10人~100人の規模で、これまではデスクトップ型の会計ソフトを利用しているか、税理士に記帳からお任せしていたが、もう少しこれから資金計画や社内の統制をきちんと構築したいと思っているならば…税理士を変える覚悟をしてでも、freeeかマネーフォワードに変えるべきです。(弥生クラウドの方はそこからすぐにあえて変える必要は通常はありません)そして、これ、宣伝文句です。移行はお手伝いします。

理由は次のようなことです。

  • 全社において、経費精算、給与計算、請求書発行、さらには年末調整や勤怠管理などをシリーズ内、またはシリーズに密に連携可能なクラウドサービスで統合することで、誤りが起きにくく、作業が大幅に軽減でき、速度を改善できる。
  • 経理部門において、システムの保守、インストール等の不具合や税制改正対応プログラムのインストールなどのトラブル、対応漏れの心配をしなくてよい。
  • 営業、企画の関連する請求や経費申請などの部分で、スマホを端末とした申請や承認の仕組みを構築することで意思決定速度を速め、内部統制体制を構築することができる。これにより、管理者の「部長の自覚」を醸成することができる。また、リモートワーク等の柔軟な働き方の実現を可能にする。
  • 請求書をベースとした資金借入など新しいFintechサービスへの入り口はこの2シリーズがデファクトスタンダードになりつつある。(弥生も一部やっている。

ということです。簡単にいうと、21世紀にあった業務管理の仕組みにアップデートしないと、コスト高になりますし、会社の変化を阻害する要因になりますよ、と言いたいのです。

逆にシステムトラブルはないのか?というと、そんなことはありません。実は、freeeはシステムの広範な停止事故を昨年と今年2回にわたって発生させています。うち1回はシステム運用を依存するAmazon Web Serviceでの冗長化構成の不足に原因があったことが公表されており、もう1回はなんと月末最終営業日の日中に停止しました。その時に振込データをあわてていた会社さんもきっとあったはずで…どうなったんだろう?と心配はしました。マネーフォワードは今のところは目立った事故はありませんが、利用を選択するにあたっては、「事故はありうる」という立場に立ち、業務を構築する必要があります。先ほどの例で言えば、振込データを月末最終日にシステムに頼らないと作れないような仕組みは非常に危険なわけです。そうは言っても、中小企業がそこまでクリティカルか、と言えば実はそんなことはないわけです。いままでだって月末にパソコンの調子がおかしくなって振り込めない、という騒動は起きえたわけでして、どちらかが事故率が低いか、と言えば中小企業にとっては専門家が運用しているクラウドサービスの方です。

マネーフォワード VS freee どっちを選ぶ?

あまり、扇情的な書き方はしたくありませんので、最初に結論を申しますが、どちらでもよいです。一長一短というところもありますし、その短は比較的短期間にバージョンアップで補われてきたので、現時点で記載する長短が来月も通用するかというと、そうではない世界がこのクラウドサービスの開発競争の世界です。お客様での検討過程で作成した比較資料もたった半年でだいぶ変わってしまっていますし、私自身マネーフォワードの経費精算の交通費登録画面が今日変わったことを知りびっくりしたりもしました。予告もなく、勝手にバージョンアップしています。

実は、ある会社では、「経費精算を合理化する」ことに力点を置いて検討しており、freeeは、iPhoneのアプリから交通費の経路を探索して費用を入力する機能がありませんでした。その会社では半分以上の社員がiPhoneであり、それも大きな理由になって(それ以外にもあります)マネーフォワードを選択し移行を開始したのです。一応freeeのコールセンターにはリリース計画がないか?とちゃんと確認して、今のところないという回答を得て決定したのですが、移行開始して間もなく、freeeはこの機能に対応しました。また、「知らないでも入力できる」はfreeeの優れた特徴でしたが、今ではマネーフォワードもその一部を取り入れています。そのうえで、今なお言える差異は、仕訳を表だってユーザーに意識させるかどうかという点で、今でもfreeeはあまり意識する必要はない、という立場に立っていて、マネーフォワードは、正しい計算表を得るためには「一応最小限は知っておいた方がよいよ」というのが立ち位置です。

また、マネーフォワードは複数のアプリが別個に存在し、それぞれログインする必要があります。たとえば、経費精算と会計と、請求書、勤怠と給与はバラバラです。freeeは経費精算、会計、請求書が統合されています。(給与は別です)それは経理担当にとっては工数が少しでも減らせて良い、という面もあるのですが、現場で請求書を作る人や経費精算をする人にとっては、適切な画面設定を行ってもなお、「専用システムのわかりやすさ」を損ねている面があり、マネーフォワードの「清算アプリ」「請求書作成サービス」の方がシンプルでわかりやすいという面もあります。

また、マネーフォワードには、最近勤怠サービスが登場しましたが、これはfreeeには現時点ではない機能です。ジョブカンなど他サービスからインポートすればよいものではあるのですが、他社にはない「異動予約」などの機能があり、こちらもあるお客様で移行を予定しています。

両方を使った感じでいいますと、「経理の伝票処理」「入出金処理」という点ではfreeeの簡単さは魅力的ですが、少し規模が大きくなったり、やりたいことが増えてきて、現場で請求書や経費清算をしたり、プロジェクト管理をしたい、というような要望が出てくる、あるいは稟議や事前申請の仕組みを統合したい(マネーフォワード経費精算にその機能があります)というような場合には、マネーフォワードの方が、一歩優れています。

もう一つ言えることは、先ほどの「仕訳を意識しなくてもよい経理ソフト」という位置づけが、初心者にとっては長所なのですが、税理士の先生方にとっては、「わかりづらさ」になっているケースが先ほどのヒヤリングでは3例ともそうでした。そして、3人とも、「できれば、マネーフォワードの方がやりやすい」と答えたのです。それが決定打で3社ともマネーフォワードへ移行を決定しました。

ちなみにマネーフォワードにはクラウドの特徴を生かした記帳代行(提携サービス)や請求書発送代行(freeeにもあり)なども弊社のお付き合い先で使用しており、業務整理には大変役立っています。

どちらを選ぶかは、①信頼できるこの先数年の税理士さんの対応実績がある方、②部門での入力を請求書や経費精算でどこまで行うかで、全面導入するならば、マネーフォワード。という観点が今のところお薦めです。

ちなみに弊社はマネーフォワードなのですが、これはもっとも使用頻度が高い機能が「経費精算」機能であり、ここで1年前の創業時点でのiOS経費アプリの完成度に差があったことで選んだものです。


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