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「販促カレンダー」活用

家電店の商品部にいたころ、チラシ作成を指揮する「販促部」から「販促カレンダー」というものが配られていました。これは、独自に作成したわけではなく、チラシで取引のあった印刷会社(広告代理店機能も持っていた)からいただいたものでした。今でもwebで「販促カレンダー」で検索すると似たようなものを見つけることができます。たとえば、当時だと10月の欄には、

  • 「運動会」・・・お弁当グッズ、ムービー
  • 北の方から紅葉始まる・・・カメラ、旅行用品

というような感じでその季節のキーワードと販促企画のヒントが書いてあるのです。そのほかにも気温や前年の曜日と天気が書いてあって、私は全然使っていませんでしたがテレビや白物家電の担当者は前年対比を追い差異を解釈するのに重宝していました。

ちなみに今は運動会は秋はかなり減り、春に移行してしまいましたが、今の販促カレンダーには「体育の日」として同じような内容が記載されていました。また、20世紀の販促カレンダーには、来週に迫ったハロウィーンという記載はなかったように記憶しています。たぶん、運動会は春に移動してしまうし、七五三は少子化で大きなビジネスになりにくくなったしで、AV機器とお菓子の業界はこの辺に他のイベントが必要になったんでしょうね。

 

チラシ作成は実は2か月ぐらい前にはもう、全社としてどんなものを企画するかは決まっています。それから各商品担当がメーカーと商談しながら(利益の出やすい)商品を選定したり、売り場の展示を企画しPOPを発注したりという準備をしながら、最終的には1週間前にすべての校正を終えて印刷に回すようなスケジュールで進行します。私はPC関連商品の担当だったのですが、当時は商品の変動が激しく、在庫の確保も直前まで確定できないことが多く、直前の商品差し替え(本当はこれ、ダメなんです。)を行って販促部や印刷会社に迷惑をかけることが常態化していました。そしてとんでもない事件を2回起こしたことがあります。(この話は今ではすっかり私の営業ネタなので、私の知人はきいたことがある話ですが)

一度目は、当時はイメージセッタから出力した原稿にトレーシングペーパーをかぶせて、その上から指示を記載する、というやり方を各商品担当が行っていたのですが、直前の「念校」と呼ばれる段階で、競合との価格調査でたしか39800円を39000円に変更したのだと思うのですが、本来ならば、赤いボールペンで「39000」とかかなければならないところ、私は8のところを0と上書きしたようで、印刷されて配られたものが0円で出来上がっていたのです・・・

もう一つは社会を揺るがせた伝説的事件なのですが、今でも大きな一流周辺機器メーカーでアイ・オー・データというメーカーがあります。当時私は仕入れ先の拡充に重点を置いており、同社との直接取り引きの開設に成功しラインアップを大幅に拡充させました。メーカーはもちろんですが、私にとっても比較的良い条件で安定的、機動的に調達できるこの取引開設はとてもうれしい出来事で、チラシで「アイオーデータフェア」を入れました。そして、チラシの商品コマのメーカー名はメーカーからいただいたロゴ画像をメーカーのCI規程に基づいて使用するのですが、何かメーカー名が間違っていたのか、抜けていたのかのため、私はそこに、赤ボールペンで「IOデータ」(ロゴデータもアルファベットだった)と書いて出稿したのです。これも最終稿でした。そうしたら出来上がったデータはなんと「エロデータ」になっていました。確かに似てなくもないけど・・・

これ前者は私のミスですが、後者は絶対、いつも迷惑をかける私に対するいやがらせだと思うんですよね。40万部規模で恥をかき、取引開始早々、メーカー様に部長と一緒にお詫びに行きました。私の肝心な時に大きな失敗をするという天分は、こんな時に存分に発揮されてしまいます。

 

そんなチラシ制作サイクルを販促部が駆動してくれるおかげで常に2か月先に向けて企画を練るサイクルが商品部には存在していました。今だとちょうど年末年始の準備が本格的に始まるころです。私の例では、10月中には、プリンターのインク、それと大量のワープロのリボンを需要予測し一括発注を行うのが10月頭、そのあとは年賀状ソフトの数量確保と書籍の年賀状作成テンプレ類をこれも大量確保する、というのが私の絶対の使命でした。プリンターのインクだけでキャノン、エプソンそれぞれに2000万円ぐらいの発注を一回で行い、絶対確保するよう担当者の上司に挨拶にいくのです。また、書籍は版元により扱える扱えないが決まっているので、扱える版元の中から何をメインで行くのかを自分では判断できないので、同じ卸さんが秋葉原の日本最大のお店も担当していたので、神保町の卸さんまで行って、それとなくうちにも同じ構成で流してくれるよう頼む、というのが10月下旬のお仕事でした。

一年目は先輩の準備の様子を見て、慌てて追いかけるような状況でしたが、2年目に入れば要領を得て主力仕入先と年間のプロモーション計画を販促カレンダーに合わせて相談できるようになり、商品と売り場演出の連動をイメージできるようになりました。(ちなみに3年目は以前記載したようにもう資金難から仕入れが思うようにできなくなり、開店休業状態で売り場に売りに行く機会が増えてしまいました。)

 

おかげで仕事が変わっても、2,3か月先の売り場(営業現場)のイメージを完成像として、スケジュールを作成し作りこみを行うということが自然にできるようになっていました。小売業では当たり前のことですが、ソフト開発やコンサル業では実はそういうことはほとんど意識されていません。しかし、四半期ごとの締めに向けて売る「口上」は「新機能」にしろ「時節ネタ」にしろほしいのは、どの業種でも同じです。そして、その時期が来て思いついたようにやっても忙しいばかりで完成度は低く成果が上がらない。というわけで、チラシ策を離れてからもずっと2か月先の販促カレンダーを見て、自分の仕事に生かせることがないか、ということは続けてきました。これは意外に役立ちます。

今はランディングページを駆使してこうした時節ものを取り扱う、というノウハウが発達していますので一般の企業でも、たとえば年末年始に取り組んでもらう、新年の新たな決意で取り組んでもらう、というような商品企画は今が準備のしどころです。

 

同じような「ネタの仕込み」はほかにもいくつかあります。たとえば、主力のお取引先の「周年行事」は販促企画の会社や総務部長とお仕事をする会社の役員をしていた私にとっては1、2年先まで欠かせないものでした。話題にもなりますし、もしかしたら仕事に紐づくかもしれません。それ以前にその会社の積み重ねてきた歴史を理解するということは大事ですし、相手の幹部にとっても信頼できるパートナーになろうと努力してくれている、という印象を持ってもらいやすくなります。

また、IRカレンダーというのも実は総務部、経理部とお仕事をする上では繁忙の差にも大きく影響し、話すネタにも影響する、ということで上場企業やその連結子会社と話す際、スケジュール調整する際には欠かせないものです。その裏では、たとえば3月決算の場合、2月の取締役会での予算案決議上程に向けた準備、3月の重要な人事の決議、4月の決算作業と速報、監査法人、年次報告書の作成、5月の発表、6月の総会準備、取締役人事等登記、決算開示と毎週のように締め切りが襲ってきます。そのゴールに向けて管理部門で多くの締め切りが動いているのは、チラシの商品部と同じです。

ちなみに「○○の日」(記念日)というのがものすごくたくさんありますが、これはあまり役に立ったことがありません。

 

今年開業したきぼうパートナーにとって、今の販促カレンダー上の課題は、「年賀状」でご協力をいただいた皆様にどのような姿をお見せするか?です。

 

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