小売店や飲食店が契約しているクレジットカード決済端末と決済手数料。これを下げることは、難しいと言えば難しいのですが不可能ではありません。これが下がると実質的に売り上げが増えるのと同じ効果があります。
実は一時期、とても下げやすい時期がありました。それはプリペイド型の電子マネー決済の決済端末を置く店舗数を流通系の金融会社が一生懸命拡大しようとしていた時期です。犬の声とかするあれです。
今では一服してしまいましたが、その時期はチェーン展開する会社さんでこの決済端末導入を材料に交渉する、ということを試みていました。
【カード加盟店手数料の相場と下げ方】
カードの加盟店手数料は実はかなりの差があります。私が担当した中で一番低いのは上場ホームセンター様で1.7%、他の人から聞いた情報ではさらに0.1%低い会社もあるということでしたし、コンビニチェーンはさらに低いという噂を聞いていますがこれは未確認です。この手数料率は実は業種によって差があり、一般には与信力が高く決済金額の大きな業種、たとえば百貨店や家電量販店は2%を切る水準が多いようで、中小型の小売業は2~4%、飲食店は3%~4.5%程度が多いようです。ただし、ある大きな飲食チェーンは2%を切っていましたので、やはり規模によるパワー、それに交渉の上手下手、実は抜け道の類はあるのです。(抜け道はここでは書けません)
気を付けなくてはならないのは、決済代行会社を変更すると決済端末(カードを通す機械)も入れ替えなくてはならないケースがある、ということです。その費用も含めて新しい会社とは交渉すればよいのですが、古い方の端末がリースで入っていて残額がまだたくさんあるチェーン店では初期のリース解約損がでる(実際、残額の支払いが必要なのでキャッシュアウトする)ことから障壁が高かったり、メリットがでるのに時間がかかりることがあります。
逆に、「決済端末が世代交代したので入れ替える必要がある」ということを決済代行会社が言ってくる時があります。カードの世界も進歩が速くやむを得ない部分はあるのですが、逆にこの時はどうせ端末を入れ替えるならば他の会社に入れ替えてもよいではないか?と再検討するチャンスです。弊社は大きな宅配チェーンで相見積もり方式で0.6%程度下げたことがあります。お客様はそれだけでウン億円の利益増だったはずです。
大きなチェーン店ですと、成果報酬でこうした相見積もりを代行してくれる会社もあったりしますし、そうでなくても、最初に導入するときは店舗のオープンにあわせて比較検討する余裕もなく大慌てで導入して操作を覚えるのに必死だったと思うのですがこういう機会に「他社の話も調べてからにする」と返事するだけで相手の対応は変わってくるのです。実際、クレジットカードの「決済代行会社」はたくさんあります。(検索すればわかります。)時間をかけて調べると料率だけでなく様々なサービスの提案を受けることもできます。先ほどの宅配チェーンは、流通系の決済代行会社をご紹介した際には、料率だけでなく販促支援的な提案もたくさん受けており、私も感心しました。
【QRコード決済はカード会社の寡占体制を変えるか】
クレジットカード決済の仕組みは、カード会社、それらを取りまとめて皆さんの会社の窓口になっているカード決済代行会社、そして、その二つをつなぐカード決済ネットワーク会社が複雑に組み合わさっています。非常に堅牢でセキュリティの高い、しかも全国規模、世界規模のネットワークを構築しノンストップで運用しなければならない、という事情はあるのですがそれでも私からすると古い高コスト体質に思えてしまいます。海外全般は調べられていないのですが、中国ではこのカード決済手数料は競争激化により日本よりもだいぶ安いようです。冒頭に記載したような流通系電子マネーの普及競争、というような追い風が吹かないとこの岩盤を打ち破って安くする、というのは一企業ではなかなか難しかったのです。
ところが、今まさに、ここに別の波が到来しつつあります。QRコード決済です。これらの仕組みはインターネットの仕組みを活用し比較的低コストに抑制されています。従来から多くのQRコード決済は決済料率が1%程度とクレジットカード決済よりもはるかに安く抑えられていました。飲食店にとってはカードで払ってもらうよりもQRコード決済で払ってもらった方が儲かる、ということです。当然、お店はQRコード決済を歓迎します。カード会社は内心面白くありません。これらのQR決済の多くは端末が不要です。カメラのあるスマホで決済できてしまうのです。クレジットターミナルを売っていた会社も電子マネーの端末を売っていた会社も内心困っているし、どうこれを取り込もうか考えているのが今の状況です。
そして、ついにこの夏…「LINE PAYが初期費用も加盟店手数料も(3年間は)0%」を打ち出し、ヤフーもこれに追随しました。これはクレジットカードからこれらに移行してもらったユーザーに1%程度のプレゼントや割引をしてもまだ、お店はカード決済よりも儲かる、ということです。
10年前は中国のスーパーではみな銀行のキャッシュカードの銀聯カード(デビットカード機能)で支払いをしていて、我が家のように現金で払う人は少数派でした。(一応中国銀行に口座をもっていたので、銀聯カードは使えました)それがここ数年で中国ではすでにかなりの割合の決済がQRコード決済に移っており、銀聯カードは過去のものになりつつあります。
日本にもこうした動きは普及しつつあります。一つは年間800万人におよぶ中国人観光客がこれを望んでいるということです。もう一つはQRコード決済は個人とお店だけでなく個人と個人の間でのやり取りまでを包含するものであるということです。
まずはこうしたQR決済を導入し歓迎する表示をすることで実質負担は少しでも減らせますし、こうした施策に対して、冒頭の流通系決済代行会社のようにこれを取り組みつつユーザーを囲い込む動きがそろそろ出てくるはず、と思っています。
というわけで今から5年も縛られる端末リースを組んで更新するよりもあと1年間QRコード決済を歓迎する動きをしながら情報収集するのがよい、というのが現時点での私のおすすめです。