この国では、様々な政策的誘導がなされています。経営の立場になってみるとそうした政策方針というのは、大きなリスクでもあります。例えば、労働者保護に関する法律は100年にわたって時代に合わせて強化されてきていますし、戦後は環境政策、最近では資源保護や介護育児に関する保護策などが導入されていて、対応を与儀なくされています。余儀なく、というと極めて受動的、消極的であり、経営にとってマイナスであるかのような言い方に聞こえますが、こうしたことに積極的に対応し、それを公表することは宣伝にもなり採用面でもプラスの影響があります。つまり、どうせやらなければならないならば積極的に、他よりも早くやった方がよいことも多いのです。
ある日、お取引先様に伺って食品ごみの減容処理装置の説明を聞かせてもらいました。そこで教わった内容の整理受け売りですが…2015年の食品リサイクル法改正では再生利用等実施率の2019年度目標率が定められています。そこでは、食品卸売業では70%(2011年実績57%)、食品小売業では55%(2011年実績41%)、外食産業では50%(2011年実績23%)の目標が設定されています。製造業は95%目標なのですが、これはすでに達成されているようです。この「リサイクル」の意味は大きく分けて「肥料化」と「飼料化」があります。一昔前には、ごみの「減容」を行うための過熱乾燥などを行う大型装置もありました。これは焼却設備が不足する、処理費用が自治体の財政を圧迫するなどの社会的背景がありました。今の政策はさらに処理を減らす以外に、「循環型社会」の実現、食料を輸入に頼る中で、膨大な無駄をそのままにしてよいのか、というようなところから発している政策です。
しかし、私も居酒屋チェーン店様のごみ廃棄のコストダウン作戦のお手伝いをいくつかしてきたのですが、そもそも分別して出すことも外国人を含むアルバイトに徹底を指導するのに苦労している中でさらに設備を入れたり、仮に設備を入れたりしてもそれを運用できるのか?肥料になった後、その肥料はどうするの?という疑問を持つわけです。
すると、設備については、多くの自治体で補助制度がありました。ちなみに千葉市は事業所が排出する一般ごみの処理費用が全国有数の高さに設定されています。一方で処理機器に対する助成率は最大2/3に設定されています。若い熊谷市長が積極的にリーダーシップをとられている中でこんなところでもそれが表れているのでした。
また、肥料を回収するという事業者も中には表れ始めているようですが、ここはまだ未成熟なところもあり、安く回収して、市販品よりも安く農家に卸して差益を得るビジネスというのが新しく生まれる余地が十分ありそうでした。地域での農と商の連携という動きもきっとできそうです。ちなみにごみの量が減りますので、処理費用も減らせるはずです。
政策が市民や事業者にコスト負担を強いる場合、多くの場合、初期の一定期間にはこうした公的な援助が行われています。LEDも、エコカーもありました。しかし、それが当たり前になってくると助成制度は縮小されて行き、やがては逆に「やらないと罰」という方向に変わっていきます。「ピンチはチャンス」そうとらえると、見えてくるものが変わってくると思いませんか?