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業務マニュアルをどう作るか?②

前回と今回は、なかなかできない業務マニュアルはどうやれば完成するか?ということをまとめています。といっても、前回は、具体的方法論に入る前に、「完成する仕組みで業務を進めていない」こと。そして、平明で誰でもできる形の業務手順でなければ文書化する意味はないことについて述べました。

今回は、実際、どうやってマニュアルを作るのがよいのだろうか?ということについて弊社自身、あるいは弊社がご提案している中でそこそこうまくいっている進め方をご紹介します

マニュアルは誰がいつまでに作る?

まずはこの問題ですが、これも誤解が多いのですが、フローを作る(業務を設計する)ことができる人は実はごく一部の人だけで、多くの人はそれに従って改善することはできても、作ることはできません。そして、マニュアルは、その「手順を作れる人」がすくなくとも骨格、ドラフトは作る必要があります。やって見せて、それを記録するだけのはずでも、自分で作ることができない人にやらせると完成しませんし、できたものは実は大事なところが抜けています。

できたドラフトに沿って、説明を聞きながらやってみて、メモをしてそれを追記する、ということは多くの人はできますし、わかりにくかった点を改良することも多くの人はできます。そこに人によって大きな能力差異があることを日本人は学校教育の影響から認めようとしませんが、それは事実ですし、少なくとも30歳を過ぎてこれが劇的に成長・改善することもあまりありません。会社は学校ではありませんので、現実的対応をした管理者、経営者が勝ちます。

ですから、フローを作ることのできる人の作業時間を最大限守ってあげ、粗くても良いから短期間で完成させる。そのあとは集団で改良にかかる。というのが鉄則です。そして、ドラフトを作るのはせいぜい2,3日。周囲での改良もそのくらいで終わらせることを計画してください。3日でできないものは永遠にできません。

マニュアルはどうやって作る?

これは、多分、多くの作成担当のコンセンサスを得られるのですが…おおむね業務フローを確立出来たら、次に実際にやってみる時に、最初から最後まで自分でやってみながら作成する、というのがおそらく正解。

ただ、やってみながら作成するとあいまいなところや、整理できていないところが次々と見つかります。実はわかっていない、ということもあとからあとから見つかります。それでよいのだと思います。次に述べる「必要なこと」だけ書いてあれば、後追いで自分で少し改良追記し、あとは、「完成」でなくても使用開始しましょう。高いレベルをもとめてしまうと、また、「永遠に完成しない」症候群に陥ります。

そして、実際に担当する人に、マニュアルをA3の紙に印刷して渡して、説明しながら実際にやってもらいます。やってもらって、わからなかったことや、気づいたことがあれば、その場でそのA3のマニュアルに追記してもらいます。

最後に、そのA3の紙をコピーさせてもらい、それを再度必要箇所をマニュアルに反映します。あとは現場で改良してください、で良いと思います。

マニュアルには何を書く?

これ、とても重要です。

マイクロソフトワードに、画面キャプチャ―や図をたくさん入れて、文章をたくさん書いて作って…パソコンのメモリが限界に達してハングアップした…という失敗を私自身、この30年弱で何回してきたことでしょう。そんなボリューム勝負に何の意味もありません。

マニュアルに書く必要があることは次の事項です。

  • データ、ツールの保管場所
  • 入力物の受け取り方、出力物の渡し方(場所、形式、時期)
  • 中間生成物や参照物の保管、廃棄ルール(セキュリティ)
  • 判断はいつ、誰が、何を元に行い、どのように記録するのか?
  • 誰がいつどんな処理を行うのか?
  • 誰が情報を共有されるのか?誰がされないのか?

必要のない「相談、共有、メールのCC」は人の時間の無駄遣いで生産性の低下を招くだけであるし、セキュリティリスクを増加させます。判断が多重になっても、精度は上がらず、時間を無駄にするばかりです。これらを最小限にしながら、参加者とそれぞれが行う処理と判断を定義し、処理の品質と判断の責任の所在を明らかにするのです。

ところで、上場企業グループの経営に携わる方は、ここまで読んでこの内容に見覚えがあるのではないでしょうか?実は、これは「内部統制」の目的そのものです。そして、内部統制制度の整備とは、これらを明らかにすることにより、経営の品質と速度を一定水準以上に保つことを担保することを目的としています。

私も2002年頃、当時の勤務先で導入が始まり、フローチャートの作り方のマニュアルが配布され、対象業務の定義が送られてきたときには、「また、一円にもならないのに無駄な作業が増えたなあ」と嘆いていた口なのですが、現場はいつでもどこでもみんなそんなものです。ただ、今になって思うと、上場審査のためのがちがちで完全に整合したフローチャートはかなり荷が重いのですが、そこまで重くしなくても、同じ手法でこれらを整備し、手順を記録することは、「マニュアル化」の手法としてとても有効だと考えています。

マニュアルはどんな風に書く?

最後にこの話題に簡単に触れておきたいと思いますが、結論から言えば、「形式なんてどうでもいい」です。

マニュアルというと、画面キャプチャ―や図のたくさん入った、Wordのページ数の多いものを想定する方が多いですが、それがやりやすければそれでも良いし、そうではなくてもよいと思っています。

そうではない代表格はEXCELで作るフローチャート方式で、私はどちらかというとこちらの方式を推奨しています。それは、上の「書くべきこと」を整理しやすいからです。書きかけの状態ではあるのですが、一つ例をみていただきましょう。

これは、上場審査等で用いられる代表的な方法(専用ソフトがないと作れないし、ルールを色々覚えないといけない)からはだいぶ簡略化しているのですが、EXCELで作れるようにしたものです。

左から、関係する部門、担当が並んでおり、処理とデータがどのように流れるのかと、保管(この図の中にはないが)、廃棄のルールがわかるようになっています。また、フローチャート内には実施時期がわかるように記載があり、補足事項や注意事項は一番右の備考欄に記載するようになっています。

やってみるとだんだんわかって来るのですが、フローがきちんと上から下に流れ、意味のない分岐や交錯がないようにすることと、平明なフローは結構一致します。システム設計をやられる方はこの感覚はわかっていただけると思います。

という感じでお客様のフローとマニュアル整備を御手伝いしています。

マニュアルは変わり続ける

これは、EXCELのような汎用ツールを使って誰もが自分のパソコンでできるような仕組みがよい、と私が考えるようになった理由でもあるのですが、家電品や自動車はすこしずつ変化しつつも、大部分が流用できるマニュアルが数年単位で使えるのですが、業務マニュアルは、多くの業務で一年と持たずにかなりの改変が必要になります。それほどまでに、現代の企業の変化の速度は速くなっているのです。昔はルーズリーフ方式なども試したのですが、結局、今はパソコンで改変する方法を用いています。

だから、「完成を待たない」し、3日で終わらせるし、EXCEL、WORDで作る方がよいのです。一旦、整理したマニュアルができると、担当する人はそれを参考にそこに集中して作業をして、その周辺に改善ポイントを見つけられるようになります。それが業務をどんどん効率化し精度が上がる根源であり、時短を実現するポイントでもあるのです。

私が外注でのRPA導入に積極的ではないのも同じ理由で、現場ですこしずつ業務フローを改善する、ということを外注RPAは妨げる、と思っています。マニュアルは、変わり続けるのが正、なのです。


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