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「会社」の「集団力」を発揮するには?

弊社は、このブログに書いてあるような施策を実際にご縁のあった会社様に入り込んでやっています。業務フローを変える、評価制度を変える、マーケティングの仕組みや顧客との接点の作り方を変える…それを会社ごとに相手の必要な順番、必要な強度で手作りするというのが主業務です。

もちろん、過去に適用してきた帳票ですとか、ルールベースはあるので、その会社のことさえ十分に理解できれば(それには1か月程度はかかってしまうことが多いのですが)、実は案を提案すること自体は、毎週1トピックづつぐらいのペースでできます。やろうと思えば相当のスピードで仕組みを変えることができます。

しかし、多くのケースで実際にはそうはなりません。それは「理解できない」、「定着できない」ということが往々にして発生するからです。

その原因は、「会社」という仕組みを使用するメリットを最大限発揮するための「仕事の方法論」を知らないまま、30代、40代になったリーダー層が学生自体の「自分で努力する」という文化の延長上でなんとなくリーダーをしている、ということです。一部にはこの「方法論」の教育を徹底して行っている営業会社もありますが、これ自体は日本の病巣であり多くの会社、そしてそこでハイパフォーマンスを発揮した層が転職して転じたベンチャーですら見られる症状です。

そんなことを思いつつ、日々を過ごしていたら、今週たまたま同じ思いをしている同業者に別々に2人も出会いました。二人とも私のように、コンサルタントというよりは、整備請負人的な方で、方法論はいくらでも教えられるが、その「風土」(私はこの言葉にはあまり同意ではない)を変えることには苦労する、ということを意気投合しました。

私は、これは、一定レベルまでは「風土」ではなく、「教育制度」と「運用のトレーニング」の問題であると思っています。なぜならば、何度かこのブログでも書いているように、製造業の製造プロセスの納期、品質、コストコントロールでは同じことができていますし、ビジネス教育の進んだアメリカや中国でもエリートの多くはできているからです。ただし、風土という言葉を使うことが適当と思うのは、変えるには、高いレベルのマネジメントの100%、中間層の過半数の思考を変えさせなくてはならず、それは多くの場合、結局変われない管理者の入れ替えにつながるからです。

ハイパフォーマンスリーダーの落とし穴

私に仕事の話を持ち掛けてくれる人は、多くの場合、多分学生時代も学業がそこそこでき、プレイベートも要領が良く、会社に入ってからは個人で仕事をどんどん取って来るような人が多いです。そういう人が起業する傾向にあるし、同様な仲間と付き合って私のソーシャルグラフと接点ができるケースが多いのです。

そして、そういう人は自分に肯定的なので、自分と似たハイパフォーマンス系、高カロリー系の人材を集める傾向にあります。しかし、5人まではうまくいっても、10人を超えるとうまくいかなくなり、20人ぐらいになると維持するのに大変になって来て、あちこちに話を聞き始めているというのが典型です。彼らは、話をすると、決まってこう言います。「いい人がなかなか集まらない」

このパターンの会社はそこからそれ以上大きくなることはありません。「いい人」でなければこなせない仕事を、同じ品質、レベルで展開していくことは無理なんです。そういうと、このパターンの人は決まってこう言うんです。「100人になればそりゃそれもわかるけど、もう少しいけると思うんだよね」

で、現場に話を聞くと、次から次へと新しい案件、プロジェクト、指示が降ってきており、最初は高カロリー系人材ももっと生き生きしていたはずなのに、なんだか疲弊しているのです。とにかく、「こなしているだけ」で精一杯になっているのに、気心通じていたはずの社長に「このままでは続かない」とホンネを言えなくなっているし、社長も、「あいつは優秀だ」「今いるメンバーは優秀だ」と、彼らが無思考状態に陥っている現実から目を背けてしまっているのです。私はこれを「旧日本軍体質」と呼んでいます。

言っても聴く耳を持たない経営者も多いのですが、私はその経営者には言い切ります。「3年後にはリーダー含めて辞めていきますよ。社長を傷つけないような理由をつけてね。」きっと今までもそうだったけど、その人は気づいていないのです。

会社を使う理由は「集団」にある

こうした会社は、自分たちではそうではないと言いながら、「個人の集合体」として仕事をする体質から抜け出せていません。なぜならそのリーダー自身が「個人としてのハイパフォーマー」としての成功体験を持っているが、集団行動での成功体験はもっていないからです。そして、そういう組織では実は現場のメンバー個人は強いストレスにさらされていて、退職率も高い傾向にあります。

私なら、こうします。

  1. やることを、一番市場が大きく成長過程にある業務に絞ります。
  2. その業務をプロセス、あるいはレイヤーという言葉で現れる構造に営業も、開発も分解します。
  3. すべての分解された要素の中で、今のブレイクスルーを起こすためのボトルネックがどこなのかを特定します。
  4. そのボトルネックを突破することだけにエース(通常はリーダー)の全パワーを投下し、そのエースを他の雑事からプロテクトします。
  5. その間に、他の分解要素のマニュアル化を進め、トレーニング、テストを作り、若手社員、新入社員を活用して改善していきます。(「標準」の作成)
  6. 各プロセスごとに、次のプロセスに進める確率を測定しながら営業を訓練済みの内容をベースにします。(数値による予実管理)
  7. 計画した確率と実際の確率の差異が大きく、改善見込みがありそうなところを次のボトルネックとして4を行います。ただし、今度はエースだけではなく、全員で、このボトルネックに関する改善案=マニュアルの改善案を出しトライアルして方法を選択します。(会議の改善)
  8. 改善が進み、そのプロセスの目標値に近づき、効果が収穫逓減段階に入ったと見たら、他のプロセスに進みます。

これは、製造業では日本を含む世界中で当たり前のようにやっていることです。それを他のビジネスプロセスでもやってみようというのは、実は当たり前のことであり、プロジェクトマネジメント、交渉、最近では接遇などもこうした分解的アプローチの対象となっています。

この方法は、なぜ効果があるのか?それは「普通の人」でも成果が出せるからです。複雑な社会現象のシステム全体を相手にしようと思うと、多くの人には手におえない複雑な問題となり「いい人」が必要になります。しかし、そのいい人が適切に問題を分解し、対処する箇所を具体化して「そこだけを考えろ」「他はやらなくて良い」とすれば、普通の人でも、やっているうちに多くのことに気づくのです。

また、忙しい原因のかなりの部分は、ここのパーツの不良流出による後追いでのトラブル対策にあります。そのパーツの品質を不良が起きない一定品質に全員を上げる(品質以下のものは現場に出さない)ようにすれば、そこの後追い作業は劇的に減ります。

この場合、リーダーの仕事は次の4つだけです。

  1. 問題を上手に分解し、対処の順位を決め、現時点で対処する箇所を限定して指示する。
  2. 会議を「実績の標準からの乖離とその原因(真因)を明らかにし、その対策を出し合う場にする。(報告、指示の場にしない)。うまく言語化できないメンバーの気づきを言語化する手伝いをする。
  3. 周囲の部署や経営陣から降って来るかく乱要因をはねのけ、メンバーの集中を保護する。
  4. 発見は成果ではないが、マニュアルの改善は成果であり、マニュアル、標準の改善に、作業を帰結させることを徹底する。

「会社は個人事業主の集まりではない」ということはよく言いますが、それではそれが仕組みとして組み込み出来ているでしょうか?こうした仕組みをまた、ハイパフォーマンス人材は、「人のクリエイティビティを否定する」と言って批判するのですが、そこが集団のリーダーに向いていない点です。

世の中の大半の人は、マニュアルがあって、その通りやれば一通り危なくないし、成果もそこそこ出る方を、自分で未知の世界に挑むよりも選好するに決まっています。だからと言って何も考えないか?というと、リーダーが改善提案を渇望する姿勢と評価軸をもっていることが必要なものの、範囲を限定し、「それだけを必死に考える」状況を作り続ければ、その限られた範囲での改善は考えてくれます。その過程を通じてマニュアルは改善していき、誰でもある程度はできる、ケースによって使い分けられるものへと進化していくのです。

今、日本では働き方改革、という言葉が濫用されていますが、時短、育休、などの「働かない」改革だけが実施され、結果としてさらにいる人は忙しくなり、混乱している職場が多くなっています。しかもそれがなぜかそれがテレビ会議システムの導入だったり、助成金の獲得支援だったりという営業ネタにもなっていますが、そこがまた会議や書類作成の仕事を生んでいます。しかし、それらはすべて間違いです。無駄な作業をせず、一点突破でアウトプットを増やすこのアプローチが正解であり、現場の疲弊と混乱の処方箋です。

また、多くの場合、会議を活性化し、メンバーの創意工夫を引き出すことにもつながります。ただし、そのためには、社長と部長のビジネススキル、こうしたプロセス管理への理解は一般の日本企業よりも高いレベルが要求されます。「リーダーの力」は、個人としてのハイパフォーマンスではなく、組織の運営力という意味で、昔以上に組織の命運を握るようになってきているのです。

冒頭ご紹介した二人の同業者と話したのも、一人はそのような経営者を育てるスクールを作ろうというもの、もう一人は同じような課題を企業に感じているというお話しでした。私も準備中の次回ダウンロードコンテンツでは、その辺の「新時代の経営リーダーが学んでおくべきこと」を解説したいと思っています。

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