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「適正検査」はツカエルのか?

採用の際、新人でも中途でも「適正検査」って使っていますか?商品名でいうとSPI3とかそういうものです。簡単にご紹介すると、知能テストのような図形問題や基礎的な係数能力を試すような問題、それに性格診断のような質問を組み合わせて、回答内容や解答の一貫性などをもとに行動特性や性格、基礎的な思考能力などの診断を行う、というものです。このページの画像はイメージでマークシートになっていますが、今はほとんどのケースでWEB経由で行っています。

本屋さんにいくと大量に、新卒就職活動向けの「SPI対策本」が並んでいて、SPI側もそれに対抗して改良を続けて、当たらないとか批判を受けながらももうかなり昔から広く使われていますし、最近ではより低価格の類似商品も現れてきました。大企業では広く使われていますが、中小企業ではあまり使われていないと思います。

 

私も数社で用いてきて、入社していただいたあとの、対象者の様子も見てきました。私としてはこのテスト結果は、その人のもつ傾向をよく表していると思います。これだけ内面を適切に可視化できるというのはなかなかすごいことだとも思います。ただ、この結果をうまく用いることができるか、という観点でいえば、そこには組織としての課題があるケースが多いように思います。逆に言えば、中小企業でも、たとえセレクション用にはいかせなくても生かす方法はあると思っています。

 

■組織の活用のための課題

実際、大企業でも有効に活用できているか、というととりあえずやってるだけ、というケースも多いように思います。なぜそうなってしまうかというと次のような理由があるからです。

・採用する人事部、担当部門の管理者が、「人間というものの行動原理の種別」や「その人が持つ心理的な障壁」など「他人への洞察力」が十分あるか?

そうではないケースが多いように思います。このことは言うほど簡単なことではなくそんな感受性の高い人が特に現場の管理職にいることは期待できることではないからです。ただ、その会社で過去に起きた退職事例やメンタルヘルス問題などの不適合事例は、背景にあった組織文化の特性とそこに所属しなければならなかった個人の特性とがうまく接着せず摩擦を起こしたことが原因だったはずです。

特に歴史ある大企業の場合、「企業文化」は歴代の管理者が自分に近しい考え方の管理者を後任とすることで濃縮強化されてきていると同時に、長年その文化の中だけにいたために「自分たちが変わっている」ということを認識できずにいます。もちろん、この「企業文化」は全部が悪いというわけではなく、それによっていい面と悪い面があり、たとえば最近のパワハラを社会的に排除する流れのような時代の変化に合わせて修正しながらも、強化されていくものでもあります。しかし、それが苦手な人も一定割合います。わかりやすい例でいえば、集団でノリで合宿研修し、大声で何かの行動変革を宣言する、というような自己啓発的な研修を行う会社がありますが、こうしたことを平気で順応するタイプと強く逃げたがるタイプがいます。ちなみに私は極端に後者でして20代のころ仮病で合宿を途中帰宅したことがあります。

こういうのは、ちゃんと適性検査に如実に現れます。体育会でしごかれたって面接で言うからこういうのは大丈夫なのかと思ったら、実はそうではなかった、というようなことは適性検査の併用で減らすことが可能です。応募者はみな、入るまでは「頑張ります」「やらせてください」としかいいません。また、最近では中途の場合は職務経歴書がモリモリに盛ってあるのは当たり前です。しかし、その人がその配属部門で力を発揮できるか、能力を伸ばせるか?は実は能力以上に、その空気や文化とのマッチング度合い、そしてその人の特性に非常に強く依存しています。私はできれば面接の前に適性検査をして、その結果を見ながら面接する方がよいと思っています。面接の応対を分析するときの評価指標やチェックポイントがわかるからです。しかし、それは対応する人が自分を理解し、面接の短時間で相手の言っていることではなく、「どんな人なのか?」を洞察することができることが前提です。

 

・そもそもどういう人が欲しく、どういう人は避けたいのか?ということが「適正面」で定義しセレクションする仕組みがないケースがほとんどではありませんか?大学自体、大学時にやっていた活動内容や学習内容、それに本人の希望職種などと、各部門の希望人数、技術系はその専攻などで決めていて、入ったあとにその会社でその人が快適に長く活躍できるか?までは採用の段階ではあまり考えていないのではないでしょうか?

人事部も各部の要望数を満たすのに精いっぱい(辞退やら手続きやらで一斉新卒採用はとにかく忙しい)で定着活躍という質的評価はされていない(それは各部が責を負うので)のではないでしょうか?多くの場合、「営業向きではないな」(非社交的な場合)程度の判断にとどまっているケースが多いように思います。ただ、実はかなり上位の方の営業担当というのは、「社交的」「狩猟民族的」な人ではなく、かといって、「頭がいい人」というわけでもない。「感性が高い人」「比較的行動に移すのにためらいがない人」「まずは傾聴から入るのが上手な人」だったりします。そして、それは20代半ばになって会社で教わってできるものではなく、子供のころからの蓄積によるところが大きく、その傾向は適性検査でも見ることができます。

営業部の方はその素質のある人の行動特性を実際によく知っているのに、いざ要望人材となると、「ストレス耐性と行動力のある、はきはきした応対のできる人」で終わっているのではないでしょうか?また、私が見た事例では、営業と企画と管理では適性はかなり相違しますが、社長が頭のいい企画に向いた人員ばっかりたくさん集めてしまって、割り切ってガンガン売る営業も、地道に作業を工夫する管理もいない会社になってしまい、結局皆がどれも躊躇していているような難儀な例もありました。

 

■活用している事例を体験した話

人の特性がパフォーマンスに強く影響し、かつ一人当たりの売上金額が大きいような業種、たとえば経営コンサルタントではこうした特性を見抜く選抜というのはかなり力を入れて行われています。SPIとは別に図形判断などの知能テスト的な試験を併用していて事前に自宅で3時間ぐらいテストを受けさせられたりする会社もあります。実は、この3時間という設定にも意味があり、長時間考え続ける知的バイタリティがあるかどうかを数値的に判断していたりするわけです。私、40歳を前に、中国から0泊3日で東京のある有名コンサル会社に応募したことがあり、事前にこのテストを受けたことがあります。テストは通過し面接を受け、すぐ一次で落ちました。落ちた理由を人材エージェントがきちんと聞いてくれていました。その理由は、「頭はいいが、可塑性が低い。年齢的に今から適応できるか危惧がある」というものでした。

残念なことに、この分析は当たっています。私は努力はしていますが、確かに新しい文化やルールへの対応力がトップレベルというわけではないと思います。コンサルタントは、業務の分析の知識以前に、その会社の幹部の心理に入り込み、仲間になるために同化するようなことが一つの技術として必要なことが多いし、この会社はそのような点を重視していて、その基準からはわたしは適性がない、と判断されたわけです。悔しかったですが、ぐうの音も出ないとはこのことです。そして、思いました。「さすがに、よく考えている人たちが集まっている会社だなあ」と。

 

■もう一つの活用事例(活用しきれなかった事例)

ある会社にいるとき、新卒新入社員(女性)に適応障害が起きました。実は私はそのメンターチームの一員でしたが直接の担当ではなかったのですが、メンタルヘルスに一家言ある私としては事前に何とかしてあげたかった事件でした。一年上の新卒社員が直接の指導に当たっていたのですが、この指導員は、とても強い意思を持つ優秀な営業マン(実はこの人も女性)で、2年目ではまだ「人の心の弱さを思いやって指導する」ということはできなかったし考えをしなかったようです。だいぶ年上でメンタルヘルスに詳しい私は何とかしてあげないと、と思い会社に手続きを取り、入社試験時の適性検査のデータを開示してもらいました。

この事例、実際には障害を起こした彼女自身の生活や背景などいろいろな要素があったので会社が悪いとか、指導員が悪いとも言えない事例だったのですが、初めて見た彼女の適正検査の内容を見ると、過適応しようとすること、依存的なことなど彼女に起きていたことの背景となる特性はその検査の中に表現されていました。入社試験は別として、新人研修を始める前にわたしがこれに目を通していたら、「あの子は心理状態のモニタリング少し注意してやった方がいいよ」と助言していたと思いますし、研修中に過度に元気を出しすぎる様子に警告を出せたと思います。

適正検査結果はきわめてパーソナルな情報のため、研修スタッフで共有できるようなものなのか?というとそこは会社として考えないといけません。理解方法や利用方法についても研修などを行わないと別の問題を引き起こす可能性もありますが、研修対象の心理的サポートを行う担当がいるようなケースがもしあれば、これは活用しうる方法だとその時思いました。

 

■中小企業にとっては

多くの中小企業は、適性があるとかないとかを選べる立場にはないわけで、とにかく応募してくれて、その人がまじめならとるしかない、というケースが多い(そもそも中小企業は欠員が出て困って募集することが多いですし)。しかし、その人とどう付き合っていくか、という問題は中小企業は人が少なく、一人当たりの職務の担当範囲が広く、人と人とのつながりも密接でしかも長くなりがち(異動して会わなくなる、ということがない)なため、大企業にもまして大きな問題です。入社時にセレクションするのは正直私も現実的ではないと思います。しかし、その人を社長さんが理解して活躍を図っていくうえで、直接話す情報以外に知っていると役立つ情報はこの適性検査の中にはたくさん含まれています。また、新しいことに取り組もうとしたとき、だれが向いているのか?というとき、この中にはそのヒントとなる情報が含まれています。実施したうえでデータを保管して、業務内での面談での情報と多面的に理解しておくことは後々効果があると思います。

 

また、これは全般に言えることですが、適性検査データと、実際に起きた出来事(よかったこと、悪かったこと)を対称して理解する蓄積をしておくと、徐々にどのようなデータの人が活躍しやすいのか、問題が起きやすいのか?ということが部署、職種ごとにわかってきます。

 

この時代に至っても誰と働くかが最も大事な要素です。自分の判断をサポートできるデータとしては適性検査はうまく活用すべきだと思っています。

 

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