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企業内新規事業 VS 子会社 

社長さんが「新しいことをやろう」と思った時、どんな形態をとりますか?分類分けするとこんな感じでしょうか?

  1. 既存の部署に新しく担当させる
  2. 社内で新しい担当を決めて「新規事業担当グループ」としてスタート
  3. 資本金を注入し、あるいは合弁で子会社として別会社化してスタート
  4. 社員、または新規採用者を代表として全くの別会社としてスタート

私は、1~3はたくさんやった経験があります。4は今回会社をやめてきぼうパートナーを起業したのが初めてです。ただ、前職も管理部門を対象としたコンサルタントサービスを提供する一部上場企業の子会社だったので、その経験を生かしている部分はあります。

どの方法がよいかは一概にはいえないのですが、後ろにいくほど権限の委譲と担当の専従性は高くなります。担当からすると「退路を断つ・背水の陣」形になるわけです。ただ、その分、成功率は高まる、というわけでもどうやらなさそうです。今回は特に、上の2と3、「担当部署」と「子会社化」の違いについて、どうすればよいのか?どちらを選べばよいのか?についてご説明します。

 

■期待の子会社がうまくいかないのはこんなケース(いくつもの実話から)

子会社では通常、役員の任命から役員報酬、重要な人事、取引銀行など取締役会で決議が必要な重要事項はすべて親会社の承認が必要なよう「関係会社管理規程」で定められています。そして、大企業の場合、親会社はその子会社で新規事業を始めた時には、通常は親会社の商材か顧客か技術かを共有することでよりグループの利益を増やせる、しかも管理業務は共有化できる部分が多くある、という意図で始めるわけです。ところが、一旦子会社のリーダーが初めて見ると、当初親会社が思っていたのとは違う点が出てくるのが通常です。自社を発展させるためには、もっと良いターゲットのマーケットセグメントがある、もっとよい技術が市場にはあるなどです。あるいは、親会社で子会社設立前に想定していたビジネスモデルが粗くてやってみると全然当たらないので、多くを変えなくてはならない、ということも多く発生します。それは非難するようなことではなく、仕方のないことです。どんなに考えても、やってみないとわからない、というのが新規事業の実情であり、それを一生懸命考え機動的に行動する、という意味では別会社化した意味があるのですが・・・

子会社のリーダーの最初の難関は、この親会社の意図に反することの実現を自社の発展のために、親会社を説得しなくてはならない、ということです。しかしそれは「親会社のメリットを減らすこと」であり、トータルでプラスになるかどうかを判断することは子会社が今後順調に大きくなるかを見極める必要があることです。親会社が大きく保守的であればあるほどこの判断はNoとなり、子会社の成長を阻害します。ただ、こういう議論がきちんと親子間でできるケースはむしろ幸せです。多くの場合は、親会社の反応は、「そんなこと言われても、そんなこと知らないし」と言って判断しない、というものです。そして、「言われたことだけおとなしくやっとけ」という態度をとるケースが多い。たしかに株の過半を保有されている子会社というのは、実際には一部門と同じで「逆らうことができない」存在なのです。しかし、それならば、わざわざ登記税を払い、決算公告コストを支払い(やっていない会社も多いですが、株式会社は本来罰則付きの義務ですよ)、税理士や会計士に余計なコストを払ってまで子会社化する意味はないわけです。

大きな会社には、「生産子会社」とか「販売子会社」という単機能の会社があり、親会社の商品しか扱えない、という縛りがあります。私が中国で代表をやっていた会社も生産子会社でした。これなんか、責任だけ負わされて、権限は何もない。やることは品質と生産コストのコントロールしかないわけでして、やってるうちに、私なんかは「自分たちで販売機能も持って、中国国内でビジネスしたい」と強く思いました。そのほうが、空いている寮や建物、管理部門のコストは増やさないでも対応できるわけで、日本からの請負業務の平均コストを下げるうえでも役に立ちます。しかも、日本の親会社から受ける業務よりも中国国内で受ける業務の方が10年前の段階ですでに高く、十分利益がでる水準だったのです。社員の士気高揚という点でものぞましかった。結果的にはこれをあちこちに強く言い過ぎたのが私が解任されて帰国させられた直接の原因になったのですが、子会社が独自に考え発展されることを保守的な親会社は望みませんでした。

 

子会社にするならば、以後の発展は、承認を受けることは「十分な検討がされているかのチェック」にとどめるべきであり、その子会社の発展のために必要な子会社側での政策の変更方針は子会社に任せるべきである。それがいやならば、親会社の中の一部門にするべき、というのが私の意見です。この親会社との意見のすり合わせにかかる時間と神経というのは本当に面倒くさいし、精神的にも苦しいし、子会社側の外部の協力者からみてもみっともない、というか残念なことです。

 

もう一つ、うまくいかないケースは、子会社側での販売に親会社側の紹介を期待しているケースです。マーケットセグメントが同一であるならば、これは有効に機能することが期待できるのですが、実際には親会社側の担当営業部も自分の部署のことで忙しいし、なんだかよくわからない新規部門がお客さんに迷惑かけてこちらまで被害を被るのは御免だ、という思いもあり、なかなかうまくいきません。実際、しくみが出来上がってうまく回っている仕事をやっている親会社に比べて、新設子会社は、「仕組みも商品も販売ルールも作りながら営業している」状況になることが多く、その意味では本当にお客さんに「何これ、大丈夫なの?」と思われてしまうような状況は起きがちです。準備万端整えてスタートできる子会社なんて実際にはないのです。

逆にみんなが協力してくれる雰囲気があるのに、マーケットセグメントが異なる、たとえば親会社は中小企業に販売していたが、子会社は大企業向けにサービスを提供するようなケースはさらに悲劇です。紹介してくれるところが事業企図とずれていて、子会社側は親会社の担当者のせっかくの協力に謝って断るか、しょうがなく説明に行くかするのですが、当然顧客からはTooBigとの評価を受けてしまうし、親会社の営業担当からは、「どうして会社はこんなことを始めたんだろう」という違和感を持たれてしまうのです。私もそんな子会社の代表をしていたのですが、親会社は数十万社の既存法人顧客があるのに、そこからの紹介による受注というのはほとんどなく、別に紹介網を構築して運用するところから始めなければなりませんでした。それを理解してくれる親会社の担当(私の場合はこれは理解してもらえていました。)ならばよいのですが、すでにしくみが出来上がったことに慣れている親会社の中で出世した人は、そのことの難しさや必要性を理解できないことが多く、能力が低いという評価を受けることがままあります。

 

さらに大変なのは、人の確保です。子会社で人を採用しようと思っても、なかなかいい人が取れません。親会社から出向させる、という方法があるのですが、今度は親会社側はどの部署もエースは供出してくれませんし、あまり事業意欲高くない、いつかは親会社に戻してくれるんだろう、というような人が集まりがちです。こういう集まり方をした人たちに、「会社を発展させて、独立して上場を目指そう」「その時にはストックオプションでみんなにもメリットがあるようにするよ」と言っても、響かない、というか逆効果です。親会社で生活の保障がある方を家族が望んでいるのを反映して生返事しかしません。

それが現実である以上、子会社の初期メンバーに選ぶ条件は、「発展し続ける限り片道切符」「その代わり給料はだいぶいい」ということで目に炎を宿らせてくれるような人を選ぶ必要があると思いますし、そこから先は自分たちで採用することを前提にした方が良いと思います。そこを変に親会社に甘えるとうまくいかない原因になるケースがおおいです。

 

■管理業務の共有はうまくいくのか?

大企業の子会社では多くの場合、管理部門の機能は親会社に依存する、という方法が初期には取られることが多くあります。これは、子会社側で人員の用意が大変、ということのほか、親会社側で子会社含めて内部統制ルールや会計方針の統一をしなければならない、という連結決算上の要請を実現するのに、同じ部門でやった方が楽、ということが背景にあります。しかし、立派な上場企業になると総務法務人事経理財務、とたくさんの人員を抱えて、今までと同じ業務を依頼していたら、依頼費用が何十万円、というケースも多く発生します。たしかに使っているのですが、始めたばかりの子会社にはあまりにも多い負担です。私が担当していた子会社は社員5人で月額80万円賦課されていた時期がありました。私は管理系出身なので、自分で会計ソフトを入れて管理し、給与等を月額3万円ぐらいで外注し、法務は目を瞑れば、これよりずっと安く上げられ黒字化に近づけることは明らかでしたが、「IFRS対応の会計基準にのっとり、連結パッケージを作成して」とか言われると対応しきれません。また、営業や経理を管理することはやむを得ないのですが、それ以外のコンプライアンスやら情報セキュリティやらの研修とルールとドキュメント作成提出業務というのが上場企業の子会社はどこもとても多い。これらが重要性が高いということはわかるのですが、それで同じジャンルのイケイケベンチャーに勝てるのか?というと営業面の相乗効果というのが十分に発揮されない限り、値段でもスピードでもこれでは勝てないのです。

 

どれが一番成功の確率が高いか、というとそれは難しいです。独立してみると、上場企業の連結子会社の信用力というのは本当に洗い難いことだとも思うことが多くあります。でも、子会社として独立させてそれを成功させる、というためには親会社側にも事前の準備はもちろん、エースをつぎ込む人選、やりやすい環境づくり、場合によっては連結対象から外してでも成長させることを優先する、というような覚悟がいるのだと思います。それらが揃った場合には、社内の部門としての新規事業よりも子会社とした方が成長が期待できる、ということなのだと思います。

 

 

 

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