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中国への投資話の仕分け方 その話はトンでもか?

つい最近出会った話なので、多少事実を脚色してお話します。真偽のほども現時点ではわかりません。ただ、ここには一般の人が飛びつく前に注意しないといけない要素がたくさん詰まっていたのでご紹介するものです。

 

ある方が、中国で20億円の新規事業への投資を行いたく融資を募っている、ということをおしゃっていました。それを聞きつけた私、中国系ファンドや現地とのパイプの深いコンサルタント会社ともお付き合いがあるので、中国ネタは任せてください、と言わんばかりに首を突っ込んでお話を聞かせてもらいました。その方の行われる事業と最初は勘違いしていたのですが、概要はこんな感じでした。

(中国の会社の資金集め、というスキームだったのです)

 

  • 中国が政策的に取り組んでいるある環境美化案件に対して現地の会社Aがいくつかの都市で応募して選任された。
  • 現地の会社は外国製の設備を輸入しそれを国内で組み立てて地方政府に設置、納品する。
  • 実施は今年度(というのは中国では2018年12月まで)開始。
  • 工場の建設と設備の購入の初期段階で必要な資金は20億円相当でこれを国外で調達しようとしている。
  • 転換社債、あるいは融資の形で融資の場合はリターンは年利20%相当を約束。
  • 政府からの初期ロットの発注内示書はある。(その一部のみは確認したが、その社名の記載はあるが、数量や確約事項かは未判明)

結果からいうと、この案件については、ご相談先も私もお断りしました。もしかしたら大儲けのチャンスを逃したかもしれません。これをウソとかインチキとか断定しているわけではないのですが、事実を確認し制御することは短期間でこれから関係を構築してやるのはかなり難しい、というのが私の判断でした。

 

■私のチェックポイント

細かく突っ込むといろいろな指摘事項はあるのですが、たとえばこの話を聴いて私が作成したチェックリストは次のようなものです。日本とはだいぶ違っているのがわかっていただけると思います。

  • この会社は実在し、事業内容は当該事業の登録となり年次検査を正常に通っているか?(営業許可証と政府サイトからの検索でいったん基礎的な確認ができます。また、日本の定款に当たるものを要求して確認することで事業内容や会社構成を確認することができます。)
  • この会社が選任され発注内示をうけているというのは本当か?(その文書の全文を見て、特に「割り印」を確認して確認します。1枚目と4枚目が別文書ということがないよう中国では複数枚の公文書には割り印を行う慣習があります。ないと偽物、と確定できるわけではないのですがあると信用力は高いのですが私がもらったデータではこれを確認することができませんでした。)
  • この会社の新工場建設(図面と基礎データがある)と作業工程に対する必要な設備、工具と人員数からして20億円は妥当か?(中国では建設費用というのは日本に比べてはるかに安いですし、人件費もこの候補地のあたりの工場であればまだ、相当安い地域でした。そして大きな設備投資が必要な種類の設備の組み立てではありませんでした。日本の感覚ではそうでもないのかもしれませんが、現地の実情からして20億円はかなり過大である、という想定をしました。)
  • なぜ、国外調達が事業主にとってメリットがあるのか?特に20%の利回りというのは妥当なのか?(中国でも日本と同様に銀行は設備投資資金はプロジェクトスパンを参考に長期資金として、信用力に応じて日本よりは結構高い金利で貸し付けを受けます。また、今回のように部材を海外から輸入する場合にはこの代金をこれを組み立てて納品し入金するまでの間、信用状取引の決済サイト期間(長い場合は120日まで)の提供という形で、あるいは短期つなぎ融資という形でこちらは長期融資よりも低い金利で借りることが可能です。この辺の事情は少なくとも表向きは日本と同じです。ただし、地方の農協的な組織などでは結構ざるな融資が行われて不良債権化するということも問題になっています。もし、政府が事実上の発注書を発行しているならば、その商品代金の範囲での融資には、この会社が正常な事業会社であれば融資が20%よりは相当低い金利で融資を受けられるはずです。また、設備投資についても、この会社の事業性が政府方針に沿ったもので政府との関係性がきちんと確立されている(これは裏でつながっているとかではなく)ならば、設備等の担保の範囲での融資が受けられるはずです。それを国外で異常な高金利で調達しなければならないのは、なんらかの「融資がうけられない事情」があるはずです。
  • 今年度の実施内容である(すでに11月になろうという時期にこれから工場をたてて、納品する、ということ自体は日本ではありえませんが、中国では十分にあり得ます。ただし、そのためにはその場所での建設と営業の許可はすでに得られている必要があります。中国では環境保護のため、工場の建設には事前の審査が必要ですので、この書類を見せていただくことでこの点を確認することができます。

 

【事業を制御する方法】

以上のようなチェックポイントに対し、特に気になるのは、「なぜ日本なのか?」です。このことは相手が本音を言わない限り検証できませんが、中国では歴史的に事業資金として集めたお金を投機に流用してそれを溶かしてしまって逮捕される、夜逃げする、という事件がたくさん起きています。(とここまで書いて思ったのですが、これは日本でもありますね)そのうち、不動産や株式への投機はいろいろな規制があるものの、一定の資格を有するものには投資ができる余地があります。しかし、たとえば「仮想通貨」など、一切の扱いが禁じられているにもかかわらず地下化しているものもあります。(中国では仮想通貨関連は取引所も、マイニングも、保有物の換金も政府により禁止されています。)仮想通貨については、地下化したうえで相当広範囲で扱われているような噂も聞きます。

このような流用に対する疑いが上の事項を一個一個細かくチェックしていけば完全に払しょくできるならば、これらのチェックに私はとりかかったと思うのですが、私の中国感覚ではこれらの書類チェックをすべてクリアできたとしてもそれでもまだ、懸念は持たざるを得ない、と考えています。

 

これは中国人だからというのではありません。たとえばその事業家が長年の知り合いでどのような知識と人脈を持ち、どのようなビジネス行動をとってきた人物なのかを知っていればどの程度彼を信用していいかはわかりそうなものです。あるいは、この会社に合弁として参画し、その中で現地に役員と金庫番をきちんと確保し銀行印を自分で確保して定期的にチェックに行くようなことができれば、この「流用の可能性」を抑制することができると思います。しかし、話を聴く限り、「融資」スキームを希望しており、この「リスク抑制」を有効に機能させることはかなり難しい状況だろう、というのが私の判断でした。この部分を機能させるように事業を組み替えるためには相手方とのそもそもの信頼関係が必要であり、そこは短期で容易に構築できるものではありません。

 

今回は実際にあった、ある実例を一部事実を変えて秘匿してご説明しました。やっているチェックは実は日本向けの投資でも同じことなのですが、リスク判断の部分は中国の知識がある程度必要になる、ということはお分かりいただけると思います。中国は依然日本に比べてはるかに大きな成長をしており、投資により大きなリターンを得ている事業家がたくさんいる「チャレンジの国」です。中国に進出して大きな果実を得よう、というチャレンジは私もしたいし応援したいと思っています。しかし、その中には、「とんでも」ない事例が多くの事例の中に潜んでいて多くの中国人が騙されていることがニュースになるのもまた事実です。

一つ言えるのは、投資だけして監視抑制をせずに放置している、というような形での中国での事業展開はダメであり、やるならば営業ももちろん、お金の監視も自力でキチンとやれる体制でなければ思わぬ落とし穴がある、ということです。それは最初の段階で起きるかもしれないし、一年は通常に事業をしていたのに、信用して人員を引き上げるのを待って流用流出が起きることもあります。そのプロジェクトスパンの間、ずっと現地で対応しつづける覚悟がなければ中国にお金を投下するべきではない、と私は考えています。今回の例でいえば、限られた時間の中でご相談者様の中国関連のスキルとことである、と手先との関係性の中でリスクを除去した形で進めることは相当難易度が高いことである、というのが結論です。

大胆さの前には慎重な検討、チェックが必要です。

 

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