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期末の夕昏は不正の香り

多くの3月決算の会社で上期は今週で終わり。景気は上向きといいますし、工業系の消耗品の会社さんは最近はとてもよいとおっしゃいますが、皆さんのところはいかがですか?

 

それでもやっぱり、高い要求に頑張ってはみたものの、まだ結構な距離が残ってしまっている営業の方、あるいは課長さん、部長さんもいらっしゃるでしょう。私も達成した時よりも不達成だった時の方が遥かに多いです。だって、その目標、達成できないことで人件費を抑制する目的もあるんですもん。

 

私はどちらかというと、「ダメならダメでいいや」と諦めて早くも次の期の作戦を考え始めてしまうようなタイプです。経営はそうとは言えませんが(言ったら株主から経営陣を外されますが)、営業は月が終われば、四半期が終わればどんなに悲惨な成績でも、命まではとられることはありません。さらに言えば、某スルガ銀行のように罵倒され、ものを投げられる、あるいは机を蹴られることはあっても、いきなり首になるというようなことも、直接殴られるようなことも普通の会社ではありません。ただの脅しです。営業は期が変わればまた、みんな同じ0から新しい気分でスタートです。それは営業のいいところでもあります。

 

ところが、そうではないタイプの営業リーダーもいるわけです。「絶対達成」を言い、最後の30分まで執念を燃やすような人。そういう人はいろいろな工夫もしてきたので知恵もあるし、自分で足で稼ぐ行動力も偉くなってもまだある。だいたいこういう人が営業で偉くなるわけです、私みたいなのではなく。昔のように営業部長が椅子で一日報告待ち、という会社はなくなり、こういう先頭で戦うタイプのリーダーが多くなりました。

そういう人は、その執念を最後の一週間、電話口で自分の顧客にぶつけ、そして周囲の部下にぶつけてくるわけです、達成すると自分も、あなたも成果報酬がたっぷりもらえて、未来が開けるんだと言って。ちなみにダメな(教育を受けても変われない)リーダーは、逆の言い方をするわけです。「達成できなきゃ降格だ」、「将来ない」と。

 

そして、最後の1週間、日が暮れて皆に困ったなあ、という空気が流れ始めるころ、聞いたこともない取引先の注文書が突然届く。あるいは、海外の通常は調達を行っているはずの関係会社からとてもいい単価でたくさん注文が入る。海外で臨時で取引先から注文があるという「幸運が頑張っていた営業部に訪れる」、ということが起きるわけです。おかしいでしょ、普通。それに気づかないのは相当洗脳されてしまっていると思うのですが、こういう時、怪しいと思っても誰も何も言わないでおくのが処世術になってませんか?これ、日本だけなのかと思っていましたが、強烈な営業リーダーにものが言えずに不正の温床になるのは実は洋の東西を問わず普遍的なことのようです。

 

こういう人たちは、「借りておく」という言い方をよくします。本人たちはあまり「不正」という意識は強くなく、親密な会社の役員や部長との間で数字の貸し借りをして、定期的に清算してお互いの会社でそれぞれが実績を上げることにより、偉くなり、より大きな貸し借りを実現できるようになるわけです。これが実態がなく、代金が回収できない取引であるならば数か月後にその売り上げの戻入を切り、責任を追及できる(上場連結だったりすると、決算期を超えてしまうと監査法人に報告することになるよ、という脅しを使える)わけですが、この「貸し借り」は売掛金は通常回収できてしまうのです。ただ、その会社に表向きは関係がないが裏でつながっている会社に、それを少し上回る金額の発注が数か月後に、(その期も数字がきっと苦しくて不達成なのに)その人の調達発注権限の範囲で発注されるだけです。

取引先を承認する。取引を承認する。あるいは取引に絡む調達を承認する。これらは業務の内容を熟知した営業部長の権限であることは通常の会社では正常なことです。したがって、上の取引は、「見え透いたことを」、と思ってもどれも損失が表面化しない限り管理部門からは簡単には止めようがありません。小さな会社がよくわからない「調達部」を作って調達を分離し不正防止を試みても、営業よりもその取引に詳しくて調達にも詳しい人は通常いない。営業部長の反論に堪え得ないため、多くの場合失敗します。しかも数字の責任は調達部ではなく営業部にあり、それに一番詳しいのが営業部長その人なのですから。

自分で手に負えないので社長に報告書を上げるわけですが、社長も自分で数字が作れない以上、その営業部長に期末を託さざるを得ない。その時点で社長も心理的に共犯者となっている、ということも多くみられます。これが大きくなったのがスルガ銀行で起きていたことなのでしょう。

 

私は30代で管理本部長をやっていた時、こうした状況を信頼していた親会社の経理部長に相談したことがあります。ちょうど今ぐらいの時期、大阪は淀屋橋の小さな居酒屋でした。この経理部長にはいろんなことを教わったのですが、彼は「おい、経営者にとって一番大事なことはなんだ」というわけです。私は「合理的に計画し、行動することを自分も行い、社員にも行うよう導くことができること」ということを言いました。それは今でも私の中での一大テーマです。そうしたら、経理部長、酔っ払って私の背中を平手でパンパン叩きながら、「一番大事なのは、モラルだよ、モラル。経営は最後はモラルだ。」というのです。

 

誰を営業部長にするか、役員にするか。それは能力よりも、不正を行わず、行わせないことを守る人間を選ばなければすべてはそこから瓦解する、というのが彼の意見でした。その営業部長の貸し借りは雪だるまのように膨らんでいき、会社の成長とその部長の出世がそのスピードに追い付かなくなったとき(あるいは先方のグルも同様に出世することが止まった時)、すべては崩壊し膨大な損失が残されるババ抜きでしかありません。そして、それはいつか必ず来るものなのに、自分は逃げ切れると思ってしまう。あるいは、自分の達成の責任感がその犯罪行為に目を瞑らせてしまうのです。

 

きちんとした営業の仕組みを作れば、財務的に潰れにくい会社を作ることはできます。そういう会社を作るお手伝いをしていきたいと思っています。そういう会社が危機に瀕するのは、売り上げや利益が原因ではなく、不正取引、情報事故、労務問題、コンプライアンスなどで足をすくわれる時、というのは最近の社会情勢をみても明らかでしょう。

 

ちなみに私は、親会社の指示で、期末に一泊二日で某都市銀の譲渡性預金(有価証券に分類されるわけですが)を1億円購入し売却するということをしたことが2度あります。その時の銀行営業のどす黒い顔、あれは翌日アンデッドになる兆候が出てましたね。

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