今日はもう一題。
私が中国に赴任しているとき、ソフト開発部門の仕事が日本から断ち切られ、この部門を廃止しなければならなくなりました。私のこの企業グループでの出身部門ということもありとても苦痛だったのですが、日本側の経営者が「ソフト開発なんて価値がない」と公言している人だったので、日本も中国も廃止する羽目になりました。その時にもいろいろな事件があったのですがそれはまた別の機会にするとして、その時の主要技術者は、その後アメリカとカナダにわたりました。2008年前後、両国はデータベース技術(その部門ではオブジェクト指向データベースを武漢大と協力して開発していた)やそれに関連する開発者をどんどん招きいれていたのです。
最近、そのうち、アメリカにわたっていた一名が帰国したと聞きました。娘さんがアメリカでプロテニスでそこそこいいところまで行っていたと聞いていたのですが、理由は、「ビザが発行されないから」でした。トランプ大統領になって、新規のソフトウエア技術者の労働ビザの発給がかなりうるさくなっている、という話でしたが、長くいる「定住予備軍」に対しても締め付けが厳しくなっているようです。彼が離職したのは、アメリカの世界最大のデータベース製品会社。その彼をすかさず雇用したのは、世界2位の携帯電話販売会社、華為集団。こうしてトランプさんの意図に反してさらに世界の覇権の中国へのシフトは加速していくのです。
10月1日のニュース、メルカリの内定式でインド系技術者が大半だったというニュースをみてピンときました。彼らも本当はアメリカに行って世界の最先端をいく企業に勤めたかったはずです。その技術者たちはこの情勢に戸惑い、そこを「本社は日本で、当面勤務場所は日本だけど、アメリカ、そして世界制覇を狙う」とメルカリは口説き落としたのではないでしょうか?(私の推測ですが)
全然、気づいていなかったのですが、トランプさんのおかげで、世界のソフトウエア技術者の日本素通り(ジャパンパッシング)は少しだけ緩和されていて、今がチャンスなのかもしれません。
ただし、働きやすい柔軟な環境と発展的な人事制度を用意しないと、また状況が変わると時計の針は逆回しになるかもしれません。