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人口…嘘をつかないデータ

最近、いくつかの事業者さんと基礎的なディスカッションをする際に、今後3,40年の人口データを整理して臨むことがありました。統計データは日本でも、世界でもとかく当てになりません。世界では、時の政権に都合の良いように捻じ曲げられているという疑いがある経済指標もたくさんあります。しかし、その中でも人口データは比較的精度が高く、かつ整備されているデータです。また、人口の総数が、そのエリアの基礎的な生産力、購買力を決めるものであることから、物事を考えるときに押さえておくべきデータです。

事例を二つほど紹介しましょう。一つ目は横浜市郊外の医療法人の例です。親の代から地域に根差して経営してきたのですが、この先の経営方針、それに基づいた人事体制や制度について整理したいというお話でした。私は医療は門外漢ですが、勉強しつつお会いする前に地域の年齢層別人口データを5年おきに2060年まで用意し、首都圏全域、全国平均と比較してみました。ご存知の通り、日本の総人口はすでに減少し始めており、65歳以上人口についても、間もなく減少し始めます。実は横浜市合計でも2041年をピークにかなりの速度で減少に転じます。しかし、この医療法人が商圏としている郊外の川崎を含む4区の65歳以上人口は、2060年の時点でもまだ増え続け、2015年比208%に達します。ちなみに65歳未満については、同じ4区で2015年比で2060年は2割減少する予測となっています。ここからすると、この病院は、「今後は人口減少に備えて、規模の適正化を進める」というのではなく、「高齢者向け医療を中心に2倍以上の成長を図る」ということをベースに人事や財務の組み立てを考えることが正当化されうることがわかります。

もちろん、他にも政策面や設備投資や有資格者の確保など様々な検討が必要なわけですが、地方はもちろん、横浜市中心部に比べても、新興住宅地を後背地に持ち、この先あと1世代は「立地に恵まれている」というところから考え始めることができるわけです。

 

もう一つの事例は、世界の国別の人口です。こちらは2060年には100億人に達します。その時日本は今から2割以上減って9600万人となっています。アジアは中国、インドだけでなく、パキスタン、インドネシア、フィリピンなどが日本を大きく上回る人口水準になります。一方でアフリカの一部はそれをはるかに上回るペースで人口が増加し、エジプトは現在の1.8倍の1億6千万人、ナイジェリアは2.7倍の4億8千万人に達すると国連人口統計では推計されています。ナイジェリア人、いったいどうしちゃったんでしょう?

ある会社が海外展開を検討されていました。それも、今でいう発展途上国のような課題を抱えている国を対象としようとしています。その時、近いという意味ではアジアなのですが、21世紀中盤には、アフリカの力をどう取り込むかが重要課題である、ということに気づき、今から情報収集を進めよう、ということを話しました。

 

昔は統計データを活用しようと思うと、政府機関に申請して手数料を支払って、オープンリールの磁気テープを借りてきて大学の装置で読み取る、とか毎回していたんです。(今から30年近く前の話です。)お金も時間もかかるし、読み取るプログラムもいちいち自分でデータフォーマットに合わせて書き換えていたんです。

今は、そんなことしなくても公開された統計はインターネットで検索してEXCEL形式でダウンロードできるようになりました。EXCELを使えば、二つの表を結合することや、抽出する、という昔ならば帰宅前にプログラムを走らせて帰って翌日チェックしていたことがその場で作業できるようになりました。

その中でも人口統計は、いろいろな判断の出発点になるデータであり、整備や集計が進んでいるデータです。表をつなぎ合わせたり、集計したりするだけで、〇〇分析(重回帰、共分散構造・・・)を多用しなくても、あるいは統計学者でなくても、先の見通しを立てるときにはちょっとまず整理して、それをミーティング参加者で共有してからはじめてみてはいかがでしょうか。

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