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2018年のビジネス界を振り返る②4月~6月

先週に引き続き、一年間の「経営/ビジネス環境」を振り返ってみます。今回は4月~6月の話題から

<4月>

・楽天が携帯電話に参入を発表

少し前まで関連する業界にいたので個人的にも関心があったのですが、総務省がキャリアの4年縛り契約手法を問題視したり、その前にはMVNOを積極的に推進したり、値下げを半ば強要したり、とここ数年は、攻める政府となんとかお茶を濁そうとする携帯電話キャリアとの争いがずっと続いていました。日本の携帯通信事業は、電話端末と回線をセットで販売するという世界では珍しい形態をとっているのですが、競争が固定化してその弊害も目立ってきました。そんな中での久々の新規参入には期待しています。

携帯電話事業は日本では20年ちょっとでもう十分に成熟してしまい、ソフトバンクはロボティクスや投資、auもIoT関連のベンチャー投資に力を入れるなど、「脱スマホ」を急いでいます。11月にはソフトバンクが携帯部門から他部門への大幅な人員移管(事実上のリストラ策)を発表しました。来年2019年には5Gサービスが開始され、さらに大量のデータが移動体で通信できる世界が始まります。私個人は、「低容量」で十分安いパケット通信の領域での競争が通信だけでなく、ハードでもさらに進めば面白い案件がいくつかあるな、と思っています。

 

・「漫画村」問題 ブロッキングの是非をめぐり激論

小難しい「通信の秘密」論戦は関わらないにしても、この問題は、「違法性」の問題はもちろんあるのですが、それを除いて考えても現代の「コンテンツ(紙でもネットでも)にお金を払ってもらって、知ってもらう」というビジネスが昔に比べてかなり急激に難しくなっている、わかりやすく言うと、「情報はネットでタダで手に入ると市民が思っている」状況が進んでいることを表していて、「良質なコンテンツ、クリエーターがどのように収益を得るか」というビジネスモデルについて、コンテンツホルダー側があきらめなければならないこと、そして、たとえば広告、ライセンスといった周辺ビジネスなどを交えた収益計画に基づいてコンテンツの作り方、届け方を考えなければならないことを示していると思います。

クリエーターが直接お金を読者、鑑賞者から得るということが昔よりも難しくなっている一方でクリエーターとビジネスサイドの実のある関係の結び方ということが求められていて、もっとクリエーターにやさしく、継続性のあるアライアンス、そしてインフラが今後は生まれるはずだ、と思っています。(自分もやれないか考えています。)

 

・日本サービス業の労働生産性が「米の半分ほど」とする調査が話題

そうでしょうねえ。付加価値を持たない過剰なサービス品質、たとえば誰もいない24時間営業や、不自然なほどの接客への執着などを減らすか、価格転嫁していくことはもはや避けられないし、それを維持するための労働力を「安く使い倒す」ことでしか実現できない企業の在り方は12月の外国人労働者問題へと行きつきました。「判断役といいつつ、稟議書のてにをはを直すことぐらいしかやらない40代、50代」というのを大手銀行に勤める20代の女性が先日も話題にしていましたが、これもこのサービス業の労働生産性を低くしている要因でしょう。

この問題はもう臨界点に達しています。外国人を安く使う、サービス自体を合理化する、あるいは価格転嫁する、いずれの場合も、今いる若い人、そしてそれ以上に若くないサービス業の人が椅子に座って仕事をしていられる季節は終わりつつあります。この問題の解決は簡単です。「自分の給料分以上に稼がなくてはならない」が子供の時から常識になればよいだけです。

 

・〇のたくさんついたゾゾスーツが登場

これ、4月の話なんです。その前のゾゾスーツはセンサー付きでした。そして、11月の決算発表時には、このゾゾスーツの配布自体も収束に向かうと発表。このニュースは、私は日本企業の「仕事の仕方」が変わってきたことの象徴と考えています。日本人は、完成度の高い商品、サービスを最初から投入しようとし、そうでない課題が残るものがリリースされ、それが問題になると鬼の首をとったかのように大騒ぎしますが、実は最初に出したものから市場の様子を見ながらどんどん改良する、というのは当たり前のことです。ソフトウエア分野ではクラウドサービスではそのような商品が増えてきましたが、他のサービスでもそれでよい、と思います。

改良し続けている限り、それは失敗ではなく成功に向かっているのであり、始めないよりはよほど成功に近い。それを1000億円企業になっても、やり続けることにこの会社の本当の強さがあると考えています。

 

<5月>

・「かぼちゃの馬車」スマートデイズが経営破綻 スルガ銀行の暴走

今年の経済界の最大のニュースと言えば、スルガ銀行で支店長が審査担当を恫喝して机を蹴っていたというこの事件。

ただ、この事件のもう一つの側面は、普通に考えれば周辺相場よりも割高な家賃で部屋がフル稼働する状況が長期続くわけがない、という投資回収試算に、お年寄りだけでなく、普通の壮年、中年、あるいは若いサラリーマンがまんまと載せられた、ということです。企業で働く人のうち、かなりの人が実は、「収益性の判断」であるとか「試算の前提のチェック」というようなことを行うことができない、ということは普段仕事をしていて感じることが多いのですが、そうした「お金の教育」の欠如が、こうした経済犯罪の被害者を生む温床になっているということも感じます。

これからはこれまで以上に、「投資で収益を得る」という動きが大企業だけでなく、中小企業にも個人にも広がります。膨大な国債を抱える日本では今のプライマリーバランスを維持できない財政を改善しない限り低金利を脱出することが事実上できなくなってしまっているからです。そして、「投資の上げ前をはねるビジネス」というのはさらに広がっていくでしょう。クラウドファンディングのサービス提供者やフリーランス向けの小規模融資などもその一つです。その「弱い側」をサポートする仕事、というのは意義があることだと思っています。

 

・武田薬品工業がシャイアーの7兆円での買収を発表 日本企業過去最大

今の武田の経営責任者は外国人です。この事案、12月には株主総会の承認を得ましたが、久々の日本企業の大きなチャレンジです。30年前、世界の時価総額の上位の半分を日本企業が占めていましたが、今は30位以内にはトヨタ他2,3社が残るのみとなっています。この大きな原因は、中国勢の台頭ともう一つは従来の重厚長大産業を中心に国際的な合従連衡の動きに日本勢が置いてけぼりを食っているからです。時価総額が大きいからえらい、というわけではありませんが研究開発や設備投資がどの産業でも非常に巨大になっており、かつ世界規模での企業間の競争が行われる市場では、世界の中で上位数社に入っていることがその業界で生き残っていくうえで一つの重要な要素になっています。

特に日本は、今後人口が急激に減っていきます。その中で海外の企業、そして市場を取り込む、それをM&Aという短期的に効果を発現させる手法で行うことはどの業界においても有力な選択肢とするべきだと考えています。そして、その効果を発揮させるためのPMIのテクニックの重要性はもっと重要視されてほしい、と思っています。

 

。日本ガイシで少なくとも90年代から続く検査不正が発覚

スバル、日産、KYB、クボタ・・・今年も不正発覚がたくさんありました。特徴的なのは、その多くが、80年代、90年代までさかのぼるものであり、それが今になり発覚した、ということです。最近も別の記事で書いたのですが、これは経営トップに対して、若い層が中間管理層を飛ばして告発するようになったこと、そしてそれを受け止める外部委員会などの仕組みができたことなどを反映するものであり、むしろ私は日本企業は改善に向かっていることを示すものだと思っています。

 

<6月>

・メルカリが上場

日本の唯一のユニコーン企業(LINEは資本は韓国ですので)が上場を果たしたのですが、これも海外市場の攻略に膨大な投資を行っていることが脚を引っ張り株価は低迷し一部投資家からはたたかれています。でも、ずっと前から、「世界に打って出る、その資金を集めたい」と同社は言い続けていました。それが成功するか失敗するかはわかりません。私は心情的にだけ応援していますが、メルカリに投資するとは、その彼らのチャレンジに賭ける、ということだと思うのです。決して簡単なことではありません。最近ではたとえばグリーがこれに挑みましたが、敗れ去りました。世界がネットで結ばれた現代、その上を進むソフトウエア、ネットサービス業界は大航海時代を迎えています。2050年、日本は世界のGDPでも人口でも約1%の規模でしかなくなります。日本の若い会社が世界で成功していくようにしたいものです。

 

・#METOO告発が世界中で相次ぐ

日本でも、財務次官がテレビ朝日の女性記者にセクハラをしたり、海外では有名映画プロデューサーが有名女優から次々告発され、追放されたりしたのはこの時期のことです。90年代は、そんなのざらにありましたけど、こんなに早く時代って変わるんだな、と思った出来事でした。あと、こうした不条理な男性優位社会、というのは日本だけじゃなかったというのもよくわかりました。人口の半分は女性ですから、女性が成果を出してくれる会社が勝つ会社なのです。仕事で必要なのは、ルールでも恭順でも同調でもなく、「成果」です。やり方、働き方は違ってよいのです。それを受け入れられない組織というのはまだまだ多いな、と感じています。

 

次週は7月~9月のビジネス関連の出来事を整理してみます。

 

 

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