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中国の変化の速度がトンでもないのはどうしてか?

■現実に機嫌を悪くし、視線を逸らそうとする「知識人」へ

先週、ある60代の社会的に活躍されている方とお話しているときの話です。

「日本ももたもたしていると中国にそのうち、追い抜かれるからさ、あんたみたいな若い(?)のがどんどん変えていかないと」

ニコニコと「ありがとうございますっ!」って言っておけばいいものを、こういうところでわかっててもこういうこと言っちゃうから偉くなれなかったんでしょうね。

「もうだいぶ前に抜かれていて、これからは如何に経済的政治的に飲み込まれないかのしのぎの時代です。」

その人、とたんに不機嫌でした。その人にもわかっているのです。

もう中国は日本の2.7倍の経済規模(名目GDP)があり、しかも成長スピードも中国の方が圧倒的に高い。投資規模でも、研究開発規模でも全く叶わない状況になっていることが。

■たとえば、国として比較してももうこんなに大差がついている。

このカテゴリーの記事でも、中国が世代間、民族間、地域間で非常な多様性があり、様々な矛盾を抱えているという話を多少面白く話していますが、それでも中国は当面は人口も増え続け、軍事的にも経済的にも大きくなり続けます。

重点的に予算投下する項目を決めると有無を言わせず移転させるやら、建設資材や人員を配置するやらするので、日本でも高度成長期に新幹線が東京から大阪まで着工から開通するのに5年、リニア新幹線は13年かかっていて新幹線網は50年以上かかって3千キロに達したのですが、中国では、この前「日本の真似だ」と話題になっていた新幹線が初めて開通したかと思うともう今の時点で2万5千キロを超えています。地下鉄網も上海は東京の倍の規模に達していて駅数は400もあります。

10年前とは大違いなのです。液晶でも、半導体でも生産規模、高度化水準ともに、圧倒的な水準で日本を凌駕しています。

大きくてバラバラな国をまとめて具体的な戦略目標に対して成果を上げるには、一党独裁は効率的に機能している、という事実は、一般選挙を基盤にした民主主義が正義であると教育された知識人にとっては不愉快この上ないことであり、「いつかは中国はコケる」と言われてはや10有余年、いろいろな事件はありましたが、コケはしませんでした。

もちろん、中国も高齢化、人口減少などの影響をやがて受けることが予想されているのですが、その時には日本は今よりはるかに人口が縮小していて、中国、インドネシアだけでなく、人口規模でいえばフィリピンにも抜かれ、ベトナムに並ばれています。

面積は20倍以上、人口は10倍以上、自分たちの数倍の軍事、経済力を持つ国が隣にあり、その差は開くばかりであり、そして他のアジア諸国にもキャッチアップされていく中で私たちは、自分の会社と自分の居場所を見つけていかなければならない時代を生きているのです。

経営者の方にわかりやすい例えをすると、同じ業種で20倍の規模の大企業が隣接してあるのと状況的には似ています。地域の小型スーパーと巨大な〇〇モールぐらい違う。〇〇モールは催事を開いたり、TVでCM流したり、はやりのお店をどんどん招き入れて吸引力を発揮するように国家も投資を行いと人材、資本を吸収しています。まず、その事実を認め、それを出発点に考えなければならない、それが中国の急成長期を現地で中国人中産階級と同じ暮らしをして過ごした私が得た一番の教訓であり、いまだに中国に関心を持ち続けている理由です。

■変化の速度が速いのは国だけではない

しかし、「党の領導(という言葉が中国の新聞やテレビで使われます。)」だけがこの急速な成長の理由ではありません。古い人は中国を「共産主義」と言いますが、「共産党が支配している」事実はありますが、経済原理は、社会民主主義が浸透した日本よりもはるかに「資本主義」です。もっとわかりやすい言い方をすると、農業政策や弱者対策は中国も力を入れている(あまりに大きすぎてまだまだ手が回らないのだが)のですが、こと企業経済に関しては日本よりもはるかに「競争社会」で「拝金主義」的、「弱肉強食」です。このことは日本の企業、それも大企業しか知らない方には実感をもっていただけないかもしれませんが、中国を知る人からすると逆に日本の企業社会や経済政策の方がとても共産主義的であり非競争的です。

たとえば、深セン市では、「実験校」と呼ばれるエリート学校に、みなお金とコネを頼って子供入れたがり、小学校低学年の頃から学校の先生が朝や夜に有償の補修授業を行い(これが教師の副収入でもある)、その上バイオリンやらピアノやらテニスやらを習わせています。大学受験は日本の比ではなく、人生を賭けて勉強しますし、日本ではどの大学でも理系でも文系でもみんな22万円からスタートですが、理系トップクラスと言われる大学をいい成績で出ればその倍の初任給45万円ぐらいは当たり前のようにあります。その代わり、大学時代もとても勉強するし、企業でも実績が上がらないと容赦なく切られます。この切られる、というのは2008年に労働契約法が成立し大幅に体系が変わったのですが、基本的には有期契約の満了時に更新しないか、補償金を支払って無期契約を終了するという形で合法的に行われます。

なお、有期契約は2回までと制限されています。そのため、最初は様子見で1年、その次は成果確認で2~3年の契約を行い、本当に貢献できるならば無期契約しそうでなければ契約しない、ということが行われます。また、極めて「成果主義的」です。

この辺は比較的保護色の強いヨーロッパよりもアメリカの企業の人事やその他のガバナンス体制が用いられている傾向が強くあります。そのため、一年目から自分の給料分ぐらいは稼いでいる、という主張ができないと契約が更新されない恐れがありますので皆必死です。私の会社も労働契約法施行後も、1回目の契約は1年で締結していました。無期雇用をしても、ダメな人はダメ、と通告し契約の終了を協議します。明日からは別の人に交代、というアメリカのドラマのような事態が中国でも発生します。ただし、労働者側も権利意識が特にホワイトカラーを中心に高まっているので、公的な労働仲裁に持ち込まれるケースもたくさんあります。(私もありました)

日本は小泉政権以降、労働者保護が十分ではない、という批判がありますが、中国にのみこまれないよう同じルールで競争しなければならない状況に追い込まれている現実を政策が後追いしているだけである、(現に白物家電も液晶も呑み込まれた)と私は思っています。

■果断、というか拙速というか

企業においても、中国の経営者はリスクを取る傾向が強く、私からするとよく考えもせずに大型の投資を行い、実際問題が起き始めてからそれを力づくで抑え込む、という経営スタイルが多くみられます。

これは、段取り8割のプロジェクトマネジメントが身に沁みついた私のようなものからすると、危なっかしくて怖いというか違和感が大きいのです。しかし、日本のように労働者の質が比較的均一で、思考パターンもある程度の範囲に収まっている、経営者のモラルや行動様式も一定の常識の範囲に収まっている社会の中での出来事ならばこのプロジェクトの「計画性」が実施段階でも担保できるのですが、中国ではそこの多様性がありすぎて計画をいくらち密に立てたところでその通り他人が実施してくれることがまともに期待できないのです。

そのため、監視をきちんと行う、お金と圧力で言うことを聞かせつつ懐柔する、というような遂行力(自分に従わせてやらせる力)が経営者、マネージャーには必須です。

また中国の経営者はスピードを非常に重視します。2年ほど前の話ですが、中国の子供向けの職業体験施設に日本食レストランを入れたい、という商談がありました。お話を聴いたのが、たしか5月。建物は7月に完成予定。それを8月に1号店をオープンさせ、次の1年間で30店に広げたい、というお話を日本におられる中国人実業家がしておられました。(この話は先日紹介のような怪しい話ではなく、本当に実現していた話です。)「今からテナントを選んでメニューを決め、内装を決め、そして採用して訓練して質を上げて・・・到底間に合わない、ましては30店となると体制整備に時間がかかる、質の低いものを出すと中国でのブランドを棄損し取り戻すのに時間がかかる」と日本人なら考えるでしょう。

それでは中国では戦えません。まず出してみてやりながら改良する、その中でフォーマットを定義しそのあとは無理やり人をそれに当てはめる。でも、現場は現場である程度好きにやらせる。というのが中国流であり、私がその中国人実業家にお話ししたのは、「日本食レストランというのはわかりましたが、それを中国で今から中国側とペースを合わせて実施できるのは、日本食レストランをやっている中国人経営者でないと普通の日本人の飲食チェーン経営者では無理でしょう。」ということでした。

この不十分でも始めて見て、そのあとやりながらどんどん完成させる、という考え方は日本ではなかなか受け入れられにくい傾向がありますが、コンシューマー向けソフトウエア(スマホアプリ)やEC,あるいはリアル店舗でもアメリカ、中国では普通の考え方です。

たしかにそれでいきなり経営破綻するような経営も多くあります。最近ですと、中国では太陽光パネル関連やシェアサイクル関連が死屍累々です。後から内情を見てみると計画が非常に稚拙です。しかし、そこを生き残った企業が時価総額10億ドルを超える「ユニコーン企業」として育っているのも事実で、アメリカ、中国にそれぞれ100ぐらい存在し、この二か国で世界の約80%を占めています。中国は多産多死経済であり、かつ経営者はびっくりするようなぜいたくをしてモデルさんと付き合っていても羨望はされても、日本のように妬みや非難はされません。(ちなみに習近平主席の奥さんは結構有名な歌手でした)

日本同様成功するのはほんの一握りの努力と運と才能を兼ね備えた人だけであり、大部分は敗退します。しかし、成功者は称賛され、若者は「自分にもそうなれるチャンスがあるはず」と夢をもち、大して知識も経験もなくても飛び込むことが是認される社会。それが今の中国です。(でも中国でも親は大企業に勤めてほしい、と思うようでそこは日本と同じです。)

ちなみに日本では、ユニコーン企業というのは、LINE(韓国資本ですが)とメルカリの2つだけです。最近では、メルカリが世界進出費用のために赤字掘り続けていることに対して「上場して買ったのに」…と非難する向きがありますが、アマゾンもGoogleもつい最近までずっと赤字で巨額投資をし続けていたのです。メルカリもそれを追いかけているだけであり、その資金がいるから上場したのであり、「そんなんわかってるでしょ」と言いたいのがメルカリ経営陣の気持ちでしょう。それをやり遂げることが当たり前の国とそうでない国の差を如実に感じた出来事でした。メルカリにも、ZOZOにも、世界制覇を目指してガラパゴス市場の雑音に惑わされず突き進んでほしいと私個人は思っています。

先週、日本ではあまり売れない技術の商品を「中国で売りたい」という相談が1件ありました。たぶんうまくいかないだろうなあ、と思いました。

中国で戦う、ということは日本のルールではなく、中国のルールで競わなくてはなりません。中国の企業競争のルールは上でみたように比較的アメリカの資本主義に近いところがあり、いわばグローバルスタンダードです。日本のぬるい保護的環境しか知らないでモノを考えてもいいカモにされるだけです。それを分かっている人はまだまだ日本には少ないし、その人もわかろうとはしていなかった。ただ、中国にはお金も市場もある、と思っているだけだったからです。

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