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クラウド契約はこんなにお得

先週、2社と新しくコンサルティング契約を締結させていただきました。2社とも若い社長の中小企業でしたので、その際、「契約をクラウド契約にしませんか?」とお話すると、やはり「なにそれ?」という回答が返ってきました。

どう説明したかは後程ご説明しますが、この仕組みは徐々に徐々に広まりつつあります。以前も「切手代節約」のところで「印紙代節減」の方法としてご説明したのですが、今回は自分の経験も含めてご紹介します。

 

■「契約」は紙ではんこを押すものなのか?

ドラマで「一筆書け」と脅されて割りばしの袋に無理な約束を書かされる、という昭和なシーン。それでも契約は成立している(ただし、不法な脅迫により強いられたものは無効なのですが)という説明が後に続きます。そもそも、民法上、契約は「口頭」でも「箸袋のメモ」でも、公法に反しない範囲で双方の合意があれば成立します。ただし、それを形にしておかないとあとで「言った」「言わない」の話になる、あるいは不利な状況が生まれると「そういう意味で言ったのではない」と言い出す。そんなことが起きるので、文面にしてあいまいなことがないようにしておきましょう、というのが契約書の意味です。ですから、決め事を誤解がないように、かつわかりやすい言葉で箇条書きにして、同意の証拠としての署名なりをすればよいはずのものです。

それがいつの間にか、「契約は丸印でなければならない」とか「差し替えられないようなきちんとした綴じをする」とか、しまいには「変色しないよう中性紙を使う」とか「訂正は○字追加○字削除」とか言い出し、わざわざ難しい言葉と形式…複雑で専門家しかできないような話に膨らんでいるのは、いったい何なんでしょう?私、ある会社の経営企画室長の時、A4の紙と糊で契約書を袋綴じにする練習を当時の取締役にさせられました。製本テープすらその上司には「邪道」らしい。これ21世紀になってからの、一部上場企業連結子会社の話です。

多くの会社で契約印は印鑑登録をした「公印」とは異なっているので、丸印を要求してもそれが正規の印かは誰にも検証できません。逆にいえば偽造も可能です。訂正も袋とじも本気になれば偽造する不正は可能です。逆に中小企業をめぐる状況ではそこまでシビアな契約というのはそんなにあるわけではないのに、大企業が持ち込む契約書は「一般条項」という呼び名でやたらと条文が多くてページ数がたくさんあり、2部郵送しようと思うと、140円ではたりなくて205円切手が必要となります。また、請負契約では基本契約では4000円、個別契約ではその金額に応じた印紙税が発生します。これは一部毎に発生するので、「甲乙それぞれ1部を保管」の場合は、2倍の印紙代が発生します。これをまた、受ける中小企業側に2つとも押し付けてくる某百貨店のようなところもあるんです。私、その百貨店に「弊社はコピーの保管で結構です。印紙代節減のため一部作成にしてください。」と言って「こいつ常識ない」と蔑視されたことがあります。独立してわかったのは、捺印対応の製本テープは意外に高いですね。以前はダイソーにあったという記事がwebにあるのですが今はないようです。紙代もインク代も、封筒代も返信用と合わせれば2部分いるし、請け負う側は返信用封筒に切手まで貼っていては結構な費用になります。それに私のような不器用な人間は、製本の失敗もあるし、時間も結構かかる。

 

時間といえば、最近は郊外ではポストの午前の集荷はなくなっているところが多くなっています。私も先日某ベンチャーへの請求書を「急いで送ってください」と言われたので、朝の6時に、修正が必要になった見積書と納品書、請求書と送り状、それに封筒も印刷して、A4 4枚を封筒に入れて92円切手を貼ってポストに走りました。たしか以前は9時台に集荷があったのでそれに間に合わせようとしたのですが、平日は14時と17時の2回の集荷になっていて、関西のその会社までは水曜日の夕に依頼を受けて、到着は土日を挟んで次の週の月曜日。(月末ぎりぎり)になってしまいます。これって、私と分かるメールアドレスからPDFで送ればいいんではなかろうか?

今回は請求書でしたが、これが契約書だと、到着してから先方でまた、「捺印申請書を作成」し、申請書を印刷して、上司の承認印をもらってから、法務部門(印鑑保管部門)にクリアフォルダに郵送された2部を入れて申請して、週に2回ぐらいの捺印指定日まで待って、捺印されてかえって来たものを複合機でスキャンを取って、送り状をまたWORDで作って、封筒に宛名を手書きで書いて、総務部門に切手をもらいに行って、帰りに投函しようと思ったら(最近は郵便局も集荷をしてくれなくなりましたので)、カバンに入れたまま家についてから「アッ」となって、翌朝ようやく投函。当社に戻ってくるのは、当然、その次の週となり、その間約2週間。仕事ってこんなスピードでいいんでしたっけ?その2週間の間、仕事は進めていいんですっけ?締結完了してから着手と原則論を言っていてこの時代、競争に勝てるんですっけ?

 

さらに、大きい会社や歴史ある会社になると、紙で保管する契約書が膨大な量になって社内で結構なスペースを取っている。場合によっては貸倉庫にお金を払って預けている。実は、その大半は捨てても差し支えないものなのに、法務部門では区別がつけられないし、法務部門は、「機密保持や著作権関係は契約終了後も条文が有効となっている」と形式論を言って保管の必要があると言うので、「古文書の保管」のようになるわけです。ある会社で営業譲渡作業をしたときなど、1970年代の契約書まですべてリスト化し、すべて譲渡したのですが3000以上ありました。でも、業容が大きく変わっていたのでその中で本当に必要なのは、たぶん50ぐらいでした。私は買い手に「捨てよう」、と言ったのですが譲渡先はさらに保守的な会社で大阪市内の一等地ロッカー2つ分の古文書が社員と商権とともに譲渡されました。

スピード重視、IT活用と言っている一方でこれ、21世紀もだいぶたつのにおかしいでしょう?この前相談した2社のうち、1社の社長に内容について合意した後、本当にメールで言いました。「21世紀方式使ってみません?」社長さんから「21世紀式でお願いします。」と、そのあとすぐに返信きました。そして、15分後には締結完了していました。

 

■21世紀式はこんな感じ 金銭的メリットはこんな感じ

本来合意文書をメールか何かでお互い交換しておけばそれでも契約としては有効ですし、機能もするはずです。ただ、万一のことを考えると「改ざん」への対策や合意内容を第3者が保管しておいて、双方が異なる文書を出してきたときに「正本」が別にあった方が安心です。実は、IT技術では、普通の方法では改ざんするとそれがわかってしまう仕組みを文書に付与することが電子証明書という形でできます。これを第3者が付与し、クラウド上にそれを保存し、契約当事者は閲覧はできるが変更削除はできない、というような状態に置くことで紙よりもむしろ強固に改ざんや紛失に備えることができます。まず、この方法は紙よりもむしろ安全性が高い方法です。

そのうえで、この方法では、印紙代が現在の印紙税法の体系ではかかりません。日本の印紙税は、「紙の契約書」にかかり、「電子的に作成されたもの」にはかからない規程になっているからです。また、先述の通り作成部数単位でかかります。ちなみに中国は「契約税」であり、方法・部数の如何に関わらず、締結件数と金額に応じて課税されますが普通に考えればこちらが正しいのであり、これはそのうち日本でも中国型に改正されるような気がしています。

・印刷の紙代、インク代は発生しません。また、往復の郵送の封筒代、切手代、クリアフォルダ代も発生しません。これらの作業時間も不要です。(社内の締結のための承認手続きは今までと同じく必要です。)

・保管もweb上で行いますので、保管スペースが不要です。検索もできますので、目次の作成も不要です。

・そして、内容に合意していれば、メールが届き次第、その後数分で締結が完了します。具体的には、自社からは、あらかじめ内容について合意した文書をPDFにして、クラウド契約のwebサービスにアップロードします。そのうえで、相手の会社の締結権者(通常は代表取締役)の名前とメールアドレスを入力すると、そのメールアドレスの先に「内容を確認の上、問題がなければ締結のボタンをクリックしてください」というメールが届きます。届いた文書が確認したものと同一であれば、その後「締結」を画面上でクリックすれば作業は完了です。双方に完了の通知のメールが届き、電子署名済みのPDFと証明書が届きます。そのメールを保管しておけばよいし、システム上でいつでも見ることもできます。

クラウド契約にはいくつかの有力サービスがありますが、そのいずれも、有料サービスではさらに契約書のひな型を提供してくれたり、保管検索の機能を従来の紙の契約書にも拡張してくれたり、といった付帯サービスを提供しています。この分野は上場企業が現れたり、巨額の資金をVCから調達したりして機能拡張競争がいまだに繰り広げられていますので、現時点での優劣はここでは記載しないこととしますが、シェアの大きいものならば、どれも上のようなメリットを享受することができます。

ちなみに契約書のあの「赤くて丸いはんこマークをPDF上に配置する」機能を用意しているサービスもありますが、意味もなく工数増えるだけですので、これは不要です。

ここまでを整理してみると以下のようになります。試算はA4 8ページの契約を片面で甲乙双方2部印刷するケースで、やり直しがないものと想定します。

・材料費 契約書用 A4用紙16枚 送り状用 A4用紙2枚(往復)→10円

印刷代(複合機モノクロとして) 20円

社名入り角2封筒 2枚(往復)  100円

クリアフォルダ 2枚       50円

製本テープ 60センチ       20円

切手往復205円 2枚       410円

計               610円

・作業人件費

印刷作業(送り状込み) 2分

製本作業 2通    10分

封入しポストへ投函  5分

仮に1時間3000円の人件費(年収400万円相当)ならば ここでは850円かかっていることになります。合計で実費で1460円の節減と、1週間以上の締結時間短縮(たぶんこれが一番大きい)、それに保管場所節減、検索調査時間の短縮、という効果がついて月額1万円~2万円のサービスが多い、ということですので、月に10個以上締結する会社ならば有償サービスを締結しても十分合理的です。

なお(ここが弊社ブログが世の中のアフィリエイトサイトと違うところなのですが)、弊社は月に10個も締結しないので、一部の機能の制限はあるものの、「クラウドサイン」(弁護士ドットコム)の「無償バージョン」を利用しています。その場合でも上の金銭と時間に関する効果はすべて得られています。まず、これを試してみてはいかがでしょう?

 

■クラウド契約の困った点

「21世紀型」のクラウドサインにもいくつか困った点があります。その最大の点は、「当事者すべて(通常二者)がある特定のクラウド契約サービスを用いて締結することに同意していないと使えない」ということです。主要なクラウド契約サービスは一方が契約していれば、受ける側は費用は発生しません。しかしこの分野にはまだ、「WORD」「EXCEL」のような圧倒的勝者、デファクトスタンダードが存在していません。そのため、受ける側はいろいろなクラウドサービスを相手から言われてそれに都度対応していると、インターネット上のいろいろな個所に契約書が散在してしまうことになります。そうなると、結局締結した契約書を社内のサーバーかあるいは、紙に印刷して保存する、ということになりかねないのです。

また、私が過去に経験してきた中では、中小企業は社長さんが判断されてその場で導入してもいいよ、と言ってくださる傾向があるのですが、立派な大企業の法務部はこれだけコストメリットを言ってもルールを盾に紙から変えようとなかなかしません。ある大手LPガス会社は「うちは年に何万と全部紙、おたくだけ例外にできるわけないでしょう」と言われました。

つまり、双方が同じサービスでクラウド契約しましょう、と合意しない限り、この21世紀型へは移行できないのです。この「ネットワーク効果」(外部経済性)の問題というのはかなり厄介ですが、大企業にはたぶん何を言っても変わらないので、新興企業と中小企業で徐々に変えていくしかないと思います。メリットは確実にありますので。できれば、地方自治体がこれに移行してほしいと思っています。そうすれば、多くの調達事業者が導入に前向きになります。

なお、「社長にメールを送られても困る」というのも大企業で発生する問題です。「いや、貴社では社長が契約印自分で押されているんですか?」と私は返しています。一定以上の規模の会社では、社内の審査規程を通過した契約を社長名、あるいは締結権者名で事務方が捺印しているのが通常であり、その社内審査は同様にしたうえで、締結窓口メールアドレスを別に設けてたとえば法務部グループのメールアドレスでこれを受信し、社内でこれを権限規程等に位置付ければよい問題であり、これは解決可能です。

 

■こんな会社ではとくにメリットが大きいです。

これまでご説明してきた内容からご理解いただけると思いますが、次のような会社では導入が容易でしかもメリットが享受しやすいです。

  • FC本部と加盟店、親会社と子会社、キャリアと代理店のように、ルールが統一しやすく、本部と加盟店の間でたくさんの合意文書が交わされるケース。
  • 印紙代がたくさんかかる請負契約が多数締結される業種
  • 本体に次々と覚書が追加されていくような業務の進め方をする会社(長期にわたる共同開発プロジェクトなど)

こういった業種では、社内の作業時間と保管スペースと紙インク切手印紙等の費用を積算すると私が知る事例では1人分の人件費が優に出るようなケースもありました。そして、何よりも大きいのは、審査さえキチンとおわり社内で承認されれば(ここは今までと変わらない)、その場で締結が可能でビジネスがスタートするというスピード感である、というのは間違いありません。

 

私に「21世紀型でいきましょ」と言った社長さんにその後、「クラウド契約はどうですか?」と聞いたら、「全然問題ないよ。これでいいじゃんという感じ」と言ってくれていました。

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