前回、原状復旧工事の際に、有価物を買い取りしてもらうことで費用を減らす、というお話をしました。昨日も廃棄物処理の話題でしたのので、その続きで今回は、ごみ、廃棄物の処理費用についてご説明したいと思います。多くの事務所では、週に何回か、指定回収袋で燃えるごみを出すことが中心だと思いますが、そうではない、ある種のごみがたくさん生じるような事業所もあります。そんな会社のいくつかの事例を中心に注意が必要な点をご説明します。
【適正廃棄の責任は御社にあります】
何年か前、中部地方で廃棄物業者がごみとして引き取った食品を転売していた、という事件があったことは覚えてらっしゃる方も多いでしょう。この時にもそのごみを排出した事業者名が「被害者」としてメディアに出ていました。この事件では、その食品事業者は、廃棄物処理会社から適正に処理したという偽の証明書(これをマニフェストと呼びます。)を受け取っていたので、本当に被害者でした。しかし、そうとも言えないケースも世の中には多くあります。
今の法律では、適正に廃棄する義務は廃棄物処理業者にあるのではなく、排出した事業者、つまり御社にあります。そのために、適切な運搬と最終処理の資格を有した会社を選定し、その会社と適切な契約を締結し、そして適正廃棄されたことを管理する(といっても車で後をついていくわけにはいかないので、それを示すものが先ほどのマニフェストなのです。)義務があります。しかも、廃棄処理業者の資格は有効期限があるので、これが更新されていることも確認しなければなりません。
コンプライアンスにうるさい世の中になりましたが、ごみの世界でもこの適正管理をきちんとしようと思うと負担が大きいのです。これが複数都道府県にまたがる多数拠点になろうものならさらに大変です。(廃棄物処理業者の免許は通常都道府県単位なので都道府県が変わると業者も変わるのです。)
さらにこれに加えて価格の適正性を管理しようと思うとまた大変ですので、拠点が多く、ごみの量や種類が多い会社は、こうした管理業務を専門の管理委託会社に依頼する方法がとられることがあります。この方法を用いると、適正な管理と必要な交渉を委託し、一部はコストダウンすることができますし、振込手数料や契約関連の郵送費用や作業も節減できるので、信頼できる管理会社を使うのは人手が限られている中ではよい方法だと思います。もちろん、その管理会社への委託手数料は発生しますので、トータルで見てコストダウンになるかというと金銭的には増える場合もあります。
【ちゃんと分別できていますか?なにがどのくらい廃棄されていますか?】
会社ごみの費用の適正化の第一歩は家庭と同じくまず分別からです。ある飲食チェーンでは、ごみとして廃油が袋に捨てられていましたが、これは費用以前にルール違反です。処理業者もこうした会社は甘く見て高く言ってきます。
処理業者さんの原価は、人件費と車両にかかる経費のほかは、ごみの種類ごとに重量当たりの単価が行政により定められています。例えば、東京23区の場合、一キログラムあたり15円50銭が執筆時点でかかります。逆にいえば、20円を切るような単価で受注していては適正な廃棄は都内では不可能であるとも言えます。単価には限度があります。しかし、これを知っておけば明らかに高くなる、ということも防げます。
そもそも、月額固定で契約されているケースも多いかもしれません。しかし、その場合も一回の重量がどのくらい発生しているのか、からその価格が適正かどうかを判断することはできます。相当大量に発生する飲食店さんでも月額4万円を超えるような価格が妥当になるケースは私が見た限りではまれです。ただし、大規模な介護施設ではおむつ等が重いので、7万円台でも適正というケースも過去にはありましたので、金額だけでは判断しづらい部分があります。
また、重量あたり単価が契約で定められている場合でも、その重量が適正に計測されて請求されていない、というケースもありました。時には、自分でどのくらいのごみを排出しているのかを計ることで高止まりを防ぐことができます。
【ごみの減量と売れるものは売る】
実は先ほど例を挙げた廃油ですが、エリアによりますが、買取してくれるケースもあります。同様に、分別された紙ごみ、段ボール、廃鉄なども買い取りが可能です。ある自動車用品を販売する大手ホームセンターさんは以前、販売し交換した古タイヤの処理費用に多額のお金を使っていましたが、これも買い取りが可能です。ただし、ちゃんと分別し、そしてそれぞれの買い取り業者に適切な買い取り価格を交渉していたら、の話です。そうして細かく対処していくと、本当に有償で処理しなければならないごみはだいぶ減ります。それこそが本当の経費節減になるのです。ちなみに、ある古本チェーンは古紙の買い取り価格を見直すだけで年間1000万円程度の利益改善ができました。
また、昨日ご紹介したように、食品を扱う業者には「食品リサイクル法」での肥料、飼料化が義務付けられていますが、これも減量後のごみの量で業者と再交渉し、設備は補助金を利用し、肥料の提供先を近隣でうまく見つければ、決してコストアップになるだけの話ではありません。 食品以外でも、発泡スチロールや、針など以外の医療廃棄物などは高温で加熱して減容させる方法もあります。単価交渉だけではなく、量自体を減らす努力をまず自分たちでもしてみましょう。
ごみはコンプライアンス、環境保護、そして経費節減と多くの要素が絡みますが、整理整頓や美化というところは人と同じく会社でも、その会社の姿勢が表れる項目のようにも思います。同じ飲食チェーンでもかなり厳しく分別管理を徹底し、そして業者との交渉も厳しく行われている会社もありましたし、そうでもない会社もありました。