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「やったのか?」遂行管理~チェンジマネジメント⑧~

前回は、「各個人個人のミッションを全体目標から如何に導くか」について簡単にご説明しました。この辺、非常に重要なテーマで、20回分ぐらいの記事にはなるので、実例交えて別に特集化したいと思っています。それなりにセンスがいるというものでもあるので、ぜひお問合せ、ご相談ください。(これ、営業です)

いったん、全体像を示すべく今回は、各人のミッションを設定、発表できたとして、それをどのように分割し、遂行管理していくか?という点についてご説明したいと思います。

仕事のサイクルと「日常業務が忙しい!」

いざ、社員にやらせるとなると、最初に出てくる問題が「営業が忙しくてできませんでした」と悪びれずに主張する奴!でも、そういう主張の強い奴こそ、わかってくれれば力になってくれる人です。

その人がミッションとする「当期の売上」以外の目標は、その人の2年後、3年後の営業の受注確率を高め、労働時間を減らして、給与をアップさせる可能性があるものになっていますか?その連関を本人に分かるように説明できますか?もしなっていなければ、その課題設定には問題があります。「会社の目標」と「自分に得になる」が一致しているように作るし、説明するのがこの目標設定で大事なことなのです。

それができるとしたら、労力と時間配分の問題です。「未来のこと」に割く時間を決めてしまい、その他の作業を減らす、ということを具体的に指示してしまうのが一番よいです。私は、週に2回午前中をこれに充て、その時間帯にぶつかる会議や会議のための資料作成をなくす、ということをまず第一案にして相談することが多いです。つまり、週40時間(といっても実際には、50時間ぐらいしている人が多い)のうち、6時間程度をこれに充てる、ということです。

実際には、儲からない、やらんでもいい仕事をやっている時間や、そもそも仕事をしていない勤務時間も相当あるはずで、やりくりが出来ないわけはないのですが、そこは習慣の恐ろしいところで、自分で自分の非生産性を正当化するようになってしまっていて、それを指摘すると反発するので、こういう策の方がうまくいくことが多いのです。そもそも人間が一日に集中して仕事をしている時間は9時間程度拘束されているうち、2,3時間がいいとこだと言われています。そして、午前の方が集中する傾向があると言われています。この時間の会議を減らして、考えたり調べたりする時間に充てることには合理性があります。

また、週2回というのも理由があります。それは、仕事のチェックやレビューのサイクルをできるだけ短くするためです。だいたいの改善に悩んでいる会社のチェックは、社長と部長、部長と課長とでも「1か月1回」が多く、しかも、そこで「できていないじゃないか!」としたことのチェックは一か月後というようなことが常態化しています。その結果、「やらないで済ませる」ことが当たり前になっています。悪いケースだと、「みんなでやらなければ差がつかない」というネグレクトの同調圧力が組織に存在しているようなケースもあります。

これを打ち破るためには、「部長の部へのチェックを週複数回にする」ことにより、「2日に1回進歩する」ということを植え付ける必要があるのです。ただし、その作業に一日かかっていては今度は売り上げがあがりません。そのため、考えて整理したら、それを簡単に(なれれば15分で終わる程度の)レポートしてもらうことにします。(後述)このように収益を追求することと、自分の労働生産性を追求することはM&A等の飛び道具を除けば、現場にとっては実は極めて近い概念です。そして、それこそが日本の「失われた30年」の原因、つまり「収益性(これは短期も長期もある)だけを追求し、他の『余計なこと』をやらない」ということとは逆のことを一生懸命お金と時間をかけてきた、その「常識」を払拭することこそが、チェンジマネジメントの成功のカギであり、実は昨今の「働き方改革」のカギでもあるのです。

目標設定のタームはどのくらいが適当か?

これも実務的には解を用意しておく必要があります。経営者は部長と2~3年後の目標感を握ったわけですが、それを部下にやらせるときには、どの程度の期間で分量を与えるべきか?ということを考えるのです。日本では多くの古い会社で人事評価(これが形式的にはボーナス査定と、昇給査定にリンクしている)は年2回というところが多くなっています。そのため、こうした目標設定も6か月が適当か?という議論になるのですが、私は、半分の3か月をお薦めしています。理由は、こんなものです。

  1. 上と同じく会社の改善サイクルをいままでよりも早めるという意識付けをする、
  2. 目標設定自体を変更・改善しなければならないことも初期には良く起きるし、ダメと見切りをつけて他の社員に担当変更することも比較的よく起きる。(これ自体、本人にとっては痛い評価として意味がある)そのためには短い方がリセットしやすい。
  3. うんと先の大きな目標よりも、手前の小さな目標を2回超える方が行動しやすい人が多い。(大きい方が燃える、という人も中にはいますが)
  4. でも、1か月では、「準備、調査、データ整備,仮説、実施、観測」というサイクルを回しきれないケースも実際多い。(本当はこれもやれるのですが、慣れないとなかなか無理がある)ので、もう少し長い必要がある。

3か月にした場合、課題にもよるのですが、1か月目をデータ整備や取引先との準備のための新規商談などの「準備」にあて、2か月目、3か月目で実施しながら修正を進める、というようなイメージです。本当は、この「準備に1か月」という決め打ちの仕方も、甘えの構造を生む要素で、必要最小限であれば23日でも、12.5日でもよいはずなのですが、それをいきなり既存の管理職、社員にインストールするのは危険です。前回も言いましたように、「組織は動いていない時にはとどまり続けようとし、動き始めると(考えもせずに)動き続ける」のです。「言えばやるはず」ではなく、動き始める時には大事な要素だけに集中して目を配って内部の構造のどこに無理が生じているかをわかりやすく始めることが必要です。

進捗管理の方法論

では、3か月間、部長は部員の進捗をどのように管理すればよいのでしょうか?

①最初にやるべきことは「目標設定」と「計画」

与えられたミッションを達成するためには、何をどのような順番で進めればよいか?まず、その計画を具体化します。わかりやすい例でいうと、「人件費以外の販管費を削減する」というミッションがあったとすると、こんな感じになるでしょう。
ⅰ 勘定科目別の費用規模と支払先別の費用規模を表で入手し、大きいものを確認する。
→ⅱ 削減の容易さを考察 
→ⅲ 取り組み優先順位を仮決定 
→ⅳ 上位3つの取り組み対象について費用の発生の仕組みや価格表を確認 
→ⅴ 選択肢を調査洗い出し 
→ⅵ 有力選択肢について見積取得 平行して変更時の移行コストを確認 
→ⅶ 実施策を決定 
→ⅷ 移行策を決定 
→ⅸ 変更実施

簡単に書いているようですが、これは私が慣れているからで、初めてこれをやる人はかなり苦労します。実は、この「進め方」には、上のような、一定の進め方の定石形が存在しています。この定石を実例を元に、一個一個担当者の血肉にしていく作業を当初はしなければなりません。ですから、最初は部長も従来業務に加えて、これをやるのはとても大変です。そこで隣について弊社がそれを手伝ってあげるわけです。

こうした手順は、最初から詳細である必要はないし、完璧である必要もありません。進める中で、「ゴール」は変わりませんが、手順は見直ししてよいのです。それを前提にすると、「見直しがあるかもしれないけどその場合でも対応でき、成果を達成できるぐらいの余裕を見て」、これらの手順を進行スケジュールにしていくのです。そうすると、だいたい、週に1~2ステップぐらいになると思います。逆に言うとそのくらいがちょうどよい。週2回作業時間を決め集中して考え調査をし、その他の移動時間や家でテレビを見ている時間も、その「課題」が頭の片隅にあると、目にしたものが、思わぬヒントになることがあります。また、こうした進め方からわかるように個人個人に与えるミッションは、こうしたステップ分けで達成できるもの1,2個でよいのです。(営業数字の話を加えて、3個ぐらい)目標をたくさん設定するのは、「リスク回避(一つしかない目標が0だとそれで評価が下がる)」目的であることも多くあります。そこは、「逃げられないよう」(必ず達成しなければならないよう)な状況に担当者を置くことが必要です。

また、そのミッションも、現場の担当者については、大それたものである必要は全くありません。部長のミッションを実現するための、「パーツ」を彼らがひとりひとつずつ実現してくれ、それをつなぎ合わせたら部長のミッションが達成できている、という状況を作ればよいのであり、皆に大活躍を期待するのは間違いです。

②進捗管理は具体的にしつこく

計画ができたら、それを毎週の計画として、EXCELで表にします。高価なSaasサービスも出現してきていますが、最初はそんなものは必要なく、EXCEL,Wordで十分です。そして、週に2回、その表を用いて報告させます。報告を作るのも、会議をするのも無駄な時間ですので、略式にします。たとえば、こんな感じです。

この中で原因が具体的に理解できているか?対策が具体的で実行可能なものになっているか?を吟味してチェックしていき、同時に不明点や相談事項に対応していくことを個人別に実施していけばよいのです。このことに関して、全員集合会議を行う必要はありません。(というかその必要が本当にある会議なんて実はとても少ない)ただし、「不明点」「相談事項」のヒントを社内にもっている人がほかにいる可能性は常にありますので、部長がヒントを見いだせない場合には、そこへ「情報照会」して回答を記載するということは必要だと思います。

また、このシート自体は部長と担当の往復書簡ではなく、部内の他の人も見えるようにする方が、良いと考えます。

というものの、このレポートを短文で作成し、これに素早く部長も対応を取る、というのも慣れていない組織には実はかなり大変なことです。逆に慣れている組織では、これが短時間でこなせるようになっています。そこまで添削的なことを3か月、半年お手伝いして、できる管理者とできるメンバーを見出していくというところまでお手伝いします。

やはり、これができるようになる管理者と出来ない管理者がいます。ただし、私は組織に対して悲観的なことを言いすぎる傾向があるようですが、これに関しては、多少は補ってあげる必要はあるにせよ、助言力ややらせる力を含めた総合的な実行力がある人が部長になっているケースが多いように思います。逆にただ単に分析力に優れたコンサル的な人が部長になっても組織全体としての成果があがるとは限りません。

ロジックツリーで構造を共有し、進捗管理シートで進捗と課題を見える化することは、確かにより多くの社員の認識の助けにはなるという点で有益です。評価制度を援用しつつ給与で社員をモチベートすることも一定範囲の効果があります。しかし、こうした「制度設計」だけではやっぱりうまくいかないのです。明るさ、責任感、思いやり…そこを十分には構造解明できていないのですが…それがないと結局人は動きません。


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