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資金繰り手法は準備が肝心 サラサラ血液を増やしておく

もうすぐ12月…この時期になると毎年苦々しく思い出す思い出があります。

もう何年も前、私はとある会社の財務担当取締役でした。何度かお話ししたことのあるこの事例の会社です。

何しろ、3000万円で2000万円を購入するようなことを毎月やっているわけです。えっ?と思われるかもしれませんが、それが実情でした。資金的には非常に厳しく、11月25日(今日)に作成して報告した12月の日次資金繰表の12月末の残高は200万円以下…当月の売上、経費は3億円規模でしたので、もう誤差の範疇です。

もちろん、大手印刷会社の手形の割引やファクタリング、海外からの輸入の信用状のサイト延長などあらゆる外部手段はすでに用いていました。対策は親会社の案件を12月31日に納品するものを12月25日に前請させてもらうことだと社長に報告したのですが、社長はそれはしたくない、と沈思…のち思考停止でした。結局この件、具体的対策がないままに、当月の取締役会にて私から報告し、支援を親会社からの取締役にその場でお願いし、この策を実施してもらえて一息つくことができたのですが、これも子会社だからできたこと…独立会社だったらもう手遅れになるところでした。

そんな状況で数年を過ごしたので、どの大手企業のファクタリングサービスはどの会社と契約している(NTT系のファクタリングサービスでは、NTTの回線でないとファクタリングサービスを受けることができないため、他社と固定電話を契約している場合は別回線を引く工事が必要になりました)とか、手形割引に積極的に対応してくれる銀行と信用状枠の銀行と貸越枠を使い分けたり…といった知らんでもいいはずのテクニックにはずいぶん詳しくなりました。もともと私は業務マネジメントやプロジェクトマネジメントを専門にしていましたが、こうした資金周りの経験は現場に鍛えられましたし、営業、仕入、開発、人事、生産と経験してきましたが、この経験と決算作成をして、初めて会社というものの「血液循環」を理解できた実感を持ちました。

しかし、少し先の日付には赤字(資金不足)が残る日次資金繰表を毎日実績を更新しながら、次はこの債権を流動化して…と対策に追われる、というのは確実にメンタルを削られます。何しろ、自分が判断ミスを犯すと、その会社の社員全員が路頭に迷うことになるのです。しかも、手法を知っていれば良い、というものではなく、これらの手法が利用できるのはその相手先との個人の人間関係がある程度できていることが必要です。もともとそういう会社はひやひやしながら見られているわけで、その中で、担当個人が、嘘はつかないだろう、とか機敏に情報提供したり動いたりしてくれるだろう、とかそういう「約束」「期待」の元に協力してくれている部分は多分にあるのです。こういう財務担当の営業力というのは、あまり目立ちませんが、会社にとってとても重要な要素です。

もちろん、こんな症状に強心剤をうち続けるようなことが自慢できるようなことであるわけがなく、こうならないようにキャッシュフローバランスの取れた、売上のぶれない事業構成を作ることを手前にやっておかなければならないわけで、それが弊社のメインのサポート内容です。

なお、その会社は結局社員を全員会社都合で解雇して閉鎖する形をとったのですが、解雇はもちろん、こういう資金繰りの仕事は二度とやりたくないなあ、と思いました。ホント、脳がしびれるんです。

時は流れて2019年…言ったそばから、やっぱり私はこういう仕事を御手伝いしています。やっぱり毎日、首の後ろと前頭葉にしびれを感じながらやっています。

好きにはなれないのですが、必要とされる情報を素早く提供し、かつコミュニケーションをとることができる財務責任者というのはベンチャーにはなかなかいません。社長は、と言えば銀行や金融機関に向かって夢や構想を語るばかり…それはそれで一部はしかたがないし、それも必要なのですが、銀行が聞きたいのはそういう話ではなくて、返済可能性への合理的説明です。そこら辺を対応でき、日常の関係を積み重ねることが必要ですし、そのためには月次の試算表や資金繰り、入金見通し、主要口座の出入り、あるいは契約書の整理などの作業を事前に積み重ねておく必要があります。

また、最近では、会計システムの請求書管理の仕組みから「最速3日で請求書を資金化」ですとか、ネット銀行が突然「事業融資」を案内してきたり、という「資金の流動化」策、特に動産担保系の手法が多様化しています。これ自体、不動産担保が中心だった日本の銀行経営の歪をついた新しい手法ではあるのですが、こうした手法も「すぐできる」のは2回目以降です。1回目はやたらと時間がかかります。そして、やっぱりちゃんとした審査があります。そこは楽ではない。やっぱり返ってこないリスクがあるところには誰も貸さないのです。

したがって、こうした手法はあらかじめ準備しておいて、できれば一度予行演習で使っておかないと、いざという時、刀が抜けない、ということが起きます。そこに数万円のコストがかかってしまうこともありますが、資金の流動化策、というのは中小企業にとっては生命線であり、致し方ない部分はあります。

世間では、融資を支援すると、その額から一定額を成功報酬でもらう、というビジネスモデルで支援をされているコンサルタントもいらっしゃいますが、弊社はそれはやりません。それは、こうした内部資料整理や金融機関との信頼関係の回復や維持という仕事は一定の準備時間と作業の積み重ねが必要であり、それがないと、その場で少額を借りることはできてもそれを持続的に可能な形にはできないと考えているからです。

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