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採用戦線異状アリ③~取ったそばからいい人から辞めて行く…

今週は2回にわたり、採用の質と量の問題の「捉え方」について特集してきました。しかし、経営者にとって、より深刻な問題は、「要らない人は辞めてくれない。なのに、要る人はどんどん辞める」という問題です。

実はこの記事を企画した際、最近の転職率が上がっているか?についてあらかじめ政府の統計データを確認してみました。すると全業種平均で「正社員」の分類ではそんなことは全くありませんでした。
 むしろ、統計的には2008年のリーマンショック期をピークに下がっています。ただ、非正規社員の比率が上がっており、そちらの方が正社員よりも転職率が高い傾向がある(しかしこれも昔とさほど変わっていない)ので、オフィスにいると、入れ替わりが高いという印象を受ける可能性はあります。

では、若年層についてはどうでしょうか?(厚生労働省「新規学校卒業就職者の在職期間別離職状況」より)「最近のわかものはこらえ性がないのか?」というと過去20年に限ってみると全くそんなことはありませんでした。昔も今も若者はすぐ辞めることは割合的にはさほど変わっていないのです。そして、この数字は外国と比較してもかなり低い傾向にある、ということも言えます。他の国ではもっと辞めてしまうのです。

ただ、一つなんとなくわかってはいたが、数字で見るとこんなにも差があるのか?という統計がありました。これです。

https://www.mhlw.go.jp/content/11650000/000369570.pdf

これは、上の統計で大卒新卒が3年目までにどれだけ辞めるかを就職先の規模別に示した過去20年のデータです。
全平均で3割、というのはよく引用される統計ですが、最近のデータでいうと、大企業の新卒は約4人に1人が3年以内に辞める。そして、中小企業(30人未満)の新卒は、3年目までに半分以上辞める。一部に定着率のよい会社(非常に特徴がある、給与が良いなど)が存在することを考えると、そうではない普通の中小企業は、かなりひどい。これでは経営計画に新卒を組み込むことなど到底できることではありません。実際、中小企業では、教育の仕組みを提供できないことなどから中途採用を採用するところも多いですし、私もそれをお薦めすることも多いです。しかし、これは問題の解決にはなっていません。新卒が沢山辞める会社は、規模別の転職率統計はみあたっておらず推測なのですがおそらく中途採用者も若年層はその傾向にあるのですから。

厚生労働省の雇用動向調査(調査不備が今年問題になったあの統計です)には、ここ数年整備されたかなり詳細な年齢階層別の離職理由というのがあります。これによると、若年層では「労働条件(労働時間。休日条件)が悪い」という理由が「給与待遇が不満」という理由をここ数年で逆転する状況となっています。また、「会社の将来が不安」という理由も上昇傾向にあります。この統計では「その他の理由」が減少している(統計の取り方を改善しているのでしょう)ため、割合の絶対値で比較することは危険そうなのです。先ほども述べたように、「若者が辞めやすくなった」という状況はありませんが、辞める理由は時代に合わせて変化しているということは言えそうです。

最近、大変面白い動画を見つけました。独立行政法人中小企業基盤整備機構という行政組織が作ったものです。この動画はおよそ2分ありますが最後までみてください。最初の1分は普通に物語が続きますが、それは後半の伏線です。

いかがでしたか?なぜ辞めたのか、そしてなぜ職場の不満が爆発したのか理解できましたか?「いい上司だったのに」と不思議に思った方はいらっしゃいませんか?

多分、40代以上の方にはこの動画を見てもなお理解できない、あるいは理解できても納得できない方がかなりの割合いるのではないか?と思います。その意味で、この動画は先ほどの統計や若者の意識を非常によくとらえて作成されていると感心しました。

「最近の若者はこらえ性がない」は古代エジプトから続く愚痴だと言いますが、時代によって常に若者の意識は変化していて、40代以上とは乖離しているのです。それは仕方のないことです。しかし、この動画は、「おれはこうやって耐えてきたんだからお前もそれを堪えろ」であるとか、「残業はするのが当然」といった「古い世代の価値観」の押し付けが顕著に表れています。会社には「規程類」の背景にある「人的資源管理に関する基本的価値観」のようなものがあるわけですが、それをわかりやすく言うとどの世代に合わせるか?の問題があるわけです。それを20代に焦点を合わせていくのか、40代、50代に合わせていくのか?と言った時に、実はこうした変化を取り入れるのは大企業の方が柔軟で積極的です。

そして、プロとしての技量を磨けるか?という点でも大企業は「社内ルールばかりにたけた人材が育つ」という批判がありますが、実は教育研修の仕組みをきちんと整え、専門知識を蓄えるという点では大企業の方が中小企業よりもはるかに有利であり、中小企業に就職してもこのような機会をえられないまま、「なんとなく事務員・作業員」のまま数年を経過してしまう、という会社が多いように見受けます。

これらは「中小企業ではしかたがないこと」なのでしょうか?人的余裕がないから、収益に余裕がないから仕方がないのでしょうか?実は、その言い方こそが、一番の辞める理由なのではないでしょうか?そんなことをいう会社はどうせじり貧だと思われているのです。そして、3年後、5年後に会社がどうなっているのか?に誰も答えられないで収益だけに追われている姿が、「将来への不安」を感じさせているのです。

もう一つ言えば、大企業でも3年以内に新卒の3割が辞めるのです。産休育休も当たり前の時代です。なぜ、交代可能な仕組みにしないのですか?それが経営者の役目でしょう?それはどうすればできるのか?具体的な策が思い浮かばないからですよね。

今の若者は昔に比べて非常に情報量が豊富です。経営に関してもキチンと体形だって知識がないにしても、ビジョンや戦略、それらの遂行体制の整備というものが重要性が高い、ということを今の40代以上よりもむしろよく知っています。その中で、退職者が多い問題は、就業規則の問題にとどまらず、「きちんとした経営体制・戦略」がないという中小企業特有の問題を反映したものなのではないか?というのが私の考えです。そして、今の「貧乏暇なし」状態を脱するために、「やらないこと、いらないことを決める」「仕組みを変える」というような「決断」をしていく経営マインドも必要になってきます。

若年層の退職率に大きな差がある原因~大企業にあって、中小企業にないもの~とはその「経営力」ではないか?と私たちは考えていて、そこに光を当てる事業活動をしています。(最後は宣伝です)

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