ブログ

40代に安易な起業を勧めるのは反対!

昨今は、起業するのが正義で、大企業に安住するのが悪であるかのような風潮があります。「社畜」なんて言葉もあります。起業に対する様々な公的助成や有利な融資制度もあり、成功談もあちこちに踊っている。政府も「起業しやすい社会」を目指すと言っています。

私自身、それに踊らされたわけではないのですが、40代で起業して何とか新年を迎えることができました。しかし、これを同年代の同僚だった方に勧めるか?というとまったくお勧めしません。今いる会社が特に経営難というわけではなく会社にいられるならばいるべきです。成功談なんてほんの一握りの幸運な事例をさも普遍的なように言っているだけです。(だいたい広告ってそういうものだと、40代なら仕事の中で自分でそういう誤解を与えるようなものを作ってきて知っているでしょう?)

 

日本では、本来政府が担うべき社会保障のかなりの部分を企業が担っています。そして、その度合いは大企業の方が中小企業よりもはるかに充実しています。厚生年金は国民年金よりもはるかに金額が大きいですし大企業にはそれとは別に企業年金制度もあります。自営業者や経営者は店じまいしてもなんら失業保険は受けられませんが、会社員ならば自己都合ですら、一定条件下で失業保険を受けることができます。通勤費も支給されますし、健康診断や会社にとよっては予防接種も受けさせてくれる。立派な保養所を安く使えたり、レジャー施設も割引になるし医薬品も安く買える健康保険組合も多い。退職金制度がある会社も古い大企業には多く、産休も介護育児短縮勤務も企業に勤めていればこそであり、自営業者や経営者には関係ないのです。税金の計算作業や社会保険の納入手続きも会社ならば会社がすべて代行してくれますが、自営業ならばすべて自分でやるか、お金を払って専門家に依頼しなければなりません。自営業が土日や正月も業績の計算にEXCELでコンビニの支払半券集計していたり、宣伝目的のブログをかいていたり(今の私ですが)しなければ時間がたりないところ、会社勤めならば「明日からまた会社かあ」と嘆いていればよい。

何よりも、不正なことをしなければ、売れなくてもミスが多くても日本の会社は表立って「解雇」ということが、会社が非常に危機的な状況にない限りできません。多くの古い会社では、「不利益変更」という指摘を恐れて「降格」すらないので、給与が減るということが役職定年以外ではあまり起きない会社が多い。賞与は減ることはあっても、月給の12倍の収入の計算は今後数年にわたって立てることができる、そういう会社が特に大企業では多いわけです。そんな有利な座を捨てるのは、バカです。あなたが40代で家族もいるならば、残り20年、しがみつくべきです。

このしがみつく、という言い方も良くないのでしょう。40代、50代になっても他人と社会に学ぶ謙虚さを持ち、勉強し続け、給与分以上の稼ぎをする意識をもって働けば、起業によって得られるものは会社に勤めていても得られるはずであり、会社の方が、より大きなステージでの仕事ができるのです。そのことを誤解させるようなことをいうのは不誠実である、と私は思っています。

 

では、私はどうだったのか?といいますと、言い訳をさせていただければ、私の場合は、普通に降格もあるような変化の激しい会社にいて、直近で月額7万円ぐらい減少し、そこからさらに担当事業会社がうまくいかず、さらに降格になり大きく減る可能性が高かった。しかもその場合、7年後と思っていた役職定年が4年後に迫り、さらに収入が減る。その会社は東証一部上場企業ですが、退職金制度もないし、50代以上の社員がほとんどいないという現実があったのです。

事業理念を偉そうに言っていますが、正直にいうと、そのシナリオで得られる将来収入とリスクに対して、独立して自分の顧客をつかんで65歳、70歳まで仕事をする将来収入とリスクを比較して、後者が前者よりも便益が大きい可能性が高い、という実利見積もりを反映しての独立であったのが実情です。私だって本当は大学出た後、一生同じ会社に勤めて安定した暮らしを見通せるような生活がしたかったですよ・・・

 

しかし、組織の中では40代は生産性も低下し、管理職ポストも不足し、下も詰まっている中で居心地のよくない思いをしている方も多いことでしょう。企業にとって40代以上がうまいことごまかそうとしても、「お荷物」なのは事実です。業績が苦しくなってくるとあの手この手で追い出そうとする事例はたくさんあります。あるいは、自分の可能性を試してみたい、という方もいるでしょう。最近では副業を許す会社も増えてきています。これは厚生労働省が公開している「就業規則のモデル」が元々は「副業は禁止」と記載してあったものが、昨年「副業は届け出の上、本業に差支えがなければ可能」に変わったことも影響しています。

はっきり言って40代以上の起業は大変です。私も以前も人よりはるかに時間も速度も多めに働く方でしたが、今は週100時間以上働いています。それくらいしないと先が開けません。それでも可能性を検討したい、という冒険者たちに、それも特別な技能は別にない(そもそもそんなものがあれば企業で活躍し続けられる)40代以上の方たちに、できるだけ危ない目に合わないで、具体的な検討を進める方法はないものか?ということを、辞めてからようやく私が知った事項も含めておすすめの対応策を今日はご紹介します。(若い人はまた、別の感覚があるかもしれませんので、40代以上限定でご覧ください。)

 

1 FXとか仮想通貨とか、メルカリでのせどりとか、アフィリエイトとか、YouTuber…そんなことはやめなさい。(土地もないのにアパート経営とかも)

独立しようと思って調べ事をするとターゲティング広告でやたらとこれらの広告が表示されるようになります。そして、「儲かった」というブログ記事がたくさん目につきます。それはほとんどが嘘でありアフィリエイト広告か関連商材販売目当ての記事です。アフィリエイトは自分がよいと思うものではなく、広告代が高い割のいいものを良いものであるかのように書くものです。そして、これらの仕事は人と接することがなく、とても孤独で「社会的に何ら意味はない」もっというならば、「情報弱者を食い物にする」仕事です。まだ、これから20年も働かなければならないならば、そして敢えて会社を辞めようとするならば社会的に感謝されるようなことをするべきです。

同様にFC契約も、その事業内容が本当にやりたいこと、専門的知識のあることならばよいのですが、独立の手段としてやるのはお勧めしません。会社と社員の関係以下のリスクばかり押し付けられてなんら保障のない本部とFCの従属関係があるだけです。広告でさも儲かるかのように本部が募集しますが、「必ず儲かる」わけがない。必ずもうかるならば、本部が銀行からお金を借りて自社でやるのですから。

 

2 会社を離れても仕事のお付き合いがお互いできるような社外の人を10人作ることを目標に日常の会社生活の中で「自分の信頼」を築く

 あなたが40代以上ならば、いままでやってきた仕事の中の経験や人脈を生かして仕事をするべきです。ただし、それは「技術」や「商品知識」ではだめです。そんなものは2年と持たないで陳腐化する。

 そして、もし独立するならば最も大変なことは売上を上げるお客を見つけることです。やめたあと、その辞めた会社の人があなたを補助してくれる、ということは普通はないでしょう。ならば社外にあらかじめ見出しておくしかありません。それも薄く100人もいる必要はありません。濃く10人いればよい。Facebookで友達登録が何千人いようと意味はありません。実際に電話でき、会いに行き助言をしてもらえ、時には求める人を紹介してくれるような友人が仕事の中でいますか?

あなたがその10人にとって有益な存在であるならば、その10人が他の人を紹介してくれます。どうやってその10人を作るか?というと、それは会社の力ではなく、あなた自身の知恵、人脈、体力などで「相手のために役に立つ」、ということをいつも心掛けて行動することです。会社の数字のために合う人会う人を「買ってくれる人とくれない人」という観点でしか見ていないとこうはなりません。その点、外交営業は社外の人との接点が多く、何を売るにも自分で勉強し自分の人間力と信頼を磨く必要があるので有利です。私も財務担当役員の時には、これはなかなか作れず、そのあと営業子会社の代表の仕事をすることによって社外に貴重な知己を得ることができました。

では、営業以外の人はどうしたらよいのか?それはタダでもいいから(副業規程で届け出が面倒でしょうから)終業後や土日に実際に往訪するなどして他社の手伝いをしてみることです。私もそういう世界をしらなかったのですが、「プロボノ」、あるいは「ボランティア」という形で無償でベンチャー企業やNPOに力を貸している方というのは実は結構おられます。(プロボノという言葉すら私は知りませんでした。)私も有償ですが他社のお手伝いをするようになり、そこで知り合った魅力的で優秀な方、というのが何人かいらっしゃいます。そこでなんとか役に立つことができれば、そこの組織の方やそこに参画する他の方から人脈を広げるきっかけをつかむことができます。もっとはやく、こうした方法があることを知っていたら、システム部門の時や、財務担当の時にも少しでもチャレンジしてみればよかった、と思いました。ただ、その場合は夜間、土日に努力が必要です。

 

3 いわゆる起業セミナーは起業の可否・成否にはほとんど意味がない。必要なのは勉強ではなく、アウトプット力と行動力と素直な心

実は私は会社の責任者の時に起業セミナーを会社の事業としてしたことがあります。PL,BSの基礎知識や法律知識、助成金などの説明をして、事業プランを事業計画シートにまとめる練習をする、というものです。もちろんこれらは知っていた方がいいのですが、これらに出たからといって起業できるか、成功できるか、と言うとそこは全然関係ないと思います。外注しようと思えばできることが多い。ただ、「全体感のあるアイデアを素早くアウトプットする(できれば手書きでもいいので文字、図表に)」ということは非常に重要です。そこが出来れば、その先を人に任せることはできなくはないが、事業計画も、webサイトやパンフレットも営業資料もすべてはそこから始まるので、そこのアジリティがない人は起業に向かない人だと私は思います。

さらに、「十分な知識や人脈がないと起業は成功しない」というのもよくある勘違いだと思います。どんなに知識があっても、最初は相当の確率でうまくいきません。ただ、その失敗による金銭的損失を小さくとどめ、失敗に対して周囲の情報や発生した状況を素直に受け止めて、周囲から助言をしてもらえてそれらを反映して的確に修正していける人が生き残れるのです。良い言い方が見つからないので、普段から私がよく言っている乱暴な言い方をすると、大して頭が良くなくて、むしろ自分が大したことないとわかっていて、営業に伺った相手に不十分な点を指摘されたらむしろ、「教えてください」と言ってもにこにこ受け入れて教えてもらえるような人なつっこく素直な人の方が、明らかに成功しています。10倍の行動力、情報収集力で、知識や理解力の差は簡単に埋まってしまいますし、やがては知識も追い抜けるのです。そして、その必要な情報は、本やネットに書いてあるようなことではなく、信頼関係の中で提供してもらえるようなものであることが多いのです。

 

4 オフィスを構える、人員を揃える、それを常識と思わない

これも中年起業によくある思い込みです。これをやるといきなり採算分岐点が大きく上昇するのに、必要だと思い込んでいる。そこの収入の見通しがあり、当座の資本が十分あるならばよいのですが、そんなことは中年起業にはまず期待できないでしょう。まずは自分ひとりで完結することからスタートするべきだと思います。そして、「すべてを自分で行う」というマインドセットはたとえ創業時に他のメンバーがいたとしても、新規事業の責任者として欠かせないものだと思います。逆に言えば、今までの経験を生かして自分で完結できないならばやめた方が良いでしょう。(経理やweb作成やデザインは外注すればよい)。私の見る限り、ですが中年起業が失敗する原因で一番多いのは、営業先がないまま時間がたつこと、2番目は創業メンバーの仲間割れです。安易に今の会社や取引先から引き連れるのではなく、何をどのようにやる会社なのかを見定めてからそれに必要な人材なのかどうかを考えた方が良いと思います。

オフィスも同様で、シェアオフィスでもいいし、どこかの会社に居候でも最初はいいと思います。私も「法人格は株式会社の方が合同会社よりもよい」「会社の住所は市部よりも千代田区中央区の方がよい」とさんざん皆から言われました。まったく私のことを知らない年配の方にいきなり電話でアポを取り営業するならば、あるいはコンシューマー向けのビジネスをやるならばそれはその通りかもしれません。しかし、それはなかなかハードルが高い事業目標です。いままでやっていたことをベースにいままで自分を信頼してくれていた人脈を頼りに事業を興せば、最初はこれらはそんな必要はないはずです。軌道に乗り事業を拡大する段になれば、そのような体制を作ればよいのであって、最初は自分の生活費を継続的に稼げるよう採算分岐点を低くしてスタートするべきです。ビジネスホンも複合機も最初は要りません。そんな「会社の形」にこだわるならば、今の会社にいた方がよいです。

 

他にもいくつかあるのですが、長くなりますので今回はこのくらいで。再度強調したいのは、世間の「起業ブームに踊らされるな」ということです。そして、そういう夢があるならば、仕事の中で終業後や土日に準備を進めておくべきです。その準備というのはお金や事業計画書のことというより、むしろ40代以上ならば「人脈」「自分という人間への信頼」です。

 

それでも起業したい、という方は一度ご相談ください。できるだけお力にはなりたいと思っています。

 

 

 

関連記事

  1. 「圧倒的なコンテンツ力」があれば売れるのか?
  2. プロジェクトマネジメントの技術ってなに?
  3. TECC(東京圏雇用労働センター)に行ってみました~実情報告~
  4. 入管法改正 外国人労働者が活躍する会社は、あなたにとっていい会社…
  5. 昭文社の20年
  6. 人口…嘘をつかないデータ
  7. 2018年のビジネス界を振り返る④10月~12月
  8. 企業内新規事業 VS 子会社 
PAGE TOP
%d人のブロガーが「いいね」をつけました。