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詐欺師来訪

長く勤めていると、明らかな詐欺師になんどか出会ったことがあります。それを未然に防ぐ、あるいは発生した事態に正確に対処するのも管理担当責任者の役割です。しかし、自分が明確に警告しても年配の経営者はそれにはまってしまう、ということがありました。

 

大阪の事務所に、「有名プロデューザー」がやってきました。サングラスに赤いストールを絵に描いたような「プロデューサー巻」。服装からして会社員っぽくない派手さで見た目からして怪しく、名刺に「NHK特集 〇〇プロデューサー」と書いていあるのです。NHK職員でも、映像制作会社でもない。挨拶だけして営業部門に任せて席を辞し、自分の席で検索するとたしかに20年以上前のNHK特集(NHKスペシャルになる前の名前)の映像商品化されたものに名前があることがわかりましたが、本人かどうかまでわかりません。その「有名」プロデューサーはソファーから、その後最近美人女優と結婚したアルファベットに言葉を短縮するタレントさんに電話し、それをスピーカーホンにして皆に聞かせています。電話の向こうではそのタレントさんが、自分は悪用されているのではないか?と明らかに警戒している様子でした。

こんなわかりやすい詐欺師がいるものか?と思ったのですが、関西のある有名な寺院の周年行事事業についてコロリと創業者が騙されてしまっていました。その寺院の責任者に会って確認しないで、そんな無関係の人物を信用するのも常識では考えられないと思うのです。ただ、彼は寺院の宝物を再現して比較的安価に消費者に届けることにとても情熱を持っていて、私と二人で仏像や仏教文化について勉強・整理していたのですが、その目玉になると考えたのでしょう。私は興味はありつつもそれに入れ込んでいたわけではありませんで、むしろリスクを下げ少量でも高単価で安定的に販売できる商品が欲しいと思っていただけでした。

そもそも私がなんでも疑ってかかるのも彼は嫌がっていました。そんなところが分かれ目になったのでしょう。でも、チンピラ映画のキャラみたいに、典型的に怪しかった。普通信じんでしょう?

 

幸い、私が金庫番で「ルールベースでの承認」(つまり、そのような大きな出資については親会社からの役員もいる取締役会で協議するべき)を要求できる管理本部長だったので、彼もその周囲も会社のお金とは別に個人で別に出資していました。そのため(それ自体も本当は問題なのですが、もうそのころには彼を制御することはあきらめていて)、会社に累は及ばなかったので後始末も手伝いませんでした。もちろん、周年行事の権利の話は全部ウソでした。

やれやれ…

 

それから1年半後ぐらいでしょうか?若くして亡くなった不世出のロックスターの回顧展をやる、という話が飛び込んできました。彼の実弟がこれの権利者だということで担がれていて、周りに5社ぐらいが集まってイベントをするということで協賛してほしい、という話でした。うちの担当責任者は若いが大変しっかりした人で、なんか不審だと相談を受けました。話を聞く限り、その5社みんな怪しい。反社っぽさを警戒せざるを得ず、中心的な役割だという1社にふらりと行ってみると、ガラスから透けて見えるのは机もなく人のいる気配はなく、段ボールが山積みになっている様子。事務所に戻って

1.発注、出資などの言質を取られることがないように気を付ける。

2.相手の事務所ではなくホテルロビーなど人がいるところで会うこと

3.一回の商談時間を1時間以内にして1時間で離席し、もし長引くようならば他の人が110番できる仕組みをあらかじめ用意してチームで行動する。

ということを彼と示し合わせました。相手の意図は明白で、我々に2千万円程度を協賛させてイベントを開き、自分たちで儲けようというものでした。したがって、相手には、「収益計画の具体的説明」「収益の配分ルールに関する原案」が明らかになり、取締役会で承認され、その契約が締結されたあとでなければ、発注はできない旨を説明するよう担当にいい、それを記載したWORD文書(10行ぐらい)を取締役管理本部長名義で彼宛てに通達した、という形で文書を作りました。彼がそれを材料に防戦できるようにしたのです。(もちろん、書類は正規のものです。)

きっと、「不世出のスターへのリスペクト」とか言って、「金銭的に見返りがあるなんて言っていない」、ということになるんだろう、ということが透けて見えました。

 

そのうち、恐れていたことが起きました。そのイベント(そのイベント自体は本当に行われ当時話題になっていたものです)の予告webサイトがオープンし、そのサイトには、私たちの会社が「協賛」として掲載されていました。担当者が抗議すると、正体を現したかのように脅してきたらしいのですが、そのうちの担当者、その時には頼れる課長さんだったのですが、昔は暴走族で鳴らしたという漢でして、そんなものにはビビりも、いきり立ちもせず会社に持ち帰って状況を教えてくれました。私はその数名の名刺をコピーし、会社の登記簿謄本をwebから調査しました。今では法務局に行かなくてもネットで登記簿を参照することができます。登記簿謄本には、代表者の氏名と住所と生年月日が掲載されています。しかし、5人とも代表者であるかのような肩書でありながら代表ではありませんでしたし、うち2社は登記簿自体見当たりませんでした。

そこで、その登記簿と名刺コピーをもって神田駅から歩いて10分ぐらいの東京都の暴対センターに相談に行きました。ここは警察OBの方が相談に乗ってくれ、情報をもとに反社として登録があるかどうかを教えてくれるのです。ただし、本名と生年月日が必要でして、そのために登記簿を調査したのでした。それでも、いろいろと相談には乗ってくれ、緊急時の電話番号も教わり貴社し、営業担当の取締役と担当者に状況を説明しました。実は、これが重要でして、私が妥協策など考えずに警察にいきなり持ち込んだことには同じ会社の彼らも驚いたようでした。毅然さを貫くためにこのことは彼らにも黙って行動したのでした。そして、「そういう行動を管理部門が独自にとっている」ということがうちの担当を通じて先方に伝わるとともに、「協賛の事実はない」という文書を顧問弁護士さんに無理をお願いして急ぎで作成して内容証明郵便にて5社の名刺の住所に送り、同時にwebに「無関係である」旨の掲載をその日のうちに実施しました。

事態はそれで収束しました。担当者がどうやって収束させたのか正直わかりませんでしたが、彼は「問題ない」とだけ言ってくれました。

 

そのほかにもいろいろな事件を見てきました。気づいて差し止めるか、止められなくてもその後強制的に着地させることで、営業の活力をそいだかもしれませんが、正常な内部統制上のリスクコントロールを実現してきたつもりですが、気づかずに通り過ぎてしまったものがあったのかもしれません。大きな会社はお金をかけて、反社チェックをもっときちんとやっており、その方法も知っています。しかし、なかなかの高額でして、全社をチェックすることは難しいものです。やはり、普段から怪しい状況を早期に察知して、迅速な行動をとるしかありません。

私がなぜこれらの異常に気づいたかというと、こういう言い方がただしくないのかもしれませんが、「人は自分の営業成績のために不正をするような存在である」という疑いを持って仕事をしていたからです。それは決していいことだとは思いません。しかし、だれかがそうしてチェックをしていなかった結果が、東芝であり、スルガ銀行だったのではないでしょうか?あまりよくは思ってもらえていませんでしたが、管理本部長である以上それは仕方のないことだと思える自分が適任だったのでしょう。

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